2020年01月14日号

(2020年01月06日~2020年01月10日)

先週の為替相場

リスク選好の動き

 1月6日からの週は中東情勢緊迫化を受けて一時円高が強まる場面が見られた。その後一転してリスク選好の動きが優勢となり、ドル高円安の動きが広がった。

 2日にトランプ大統領の命令によりイラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官が殺害された。この事件により、イランと米国の対立が強まった。8日朝にイラン革命防衛隊が米軍などの駐留するイラク基地をミサイル攻撃したことが報じられた。一気に緊張感が高まり、リスク回避の円高が進行した。ドル円は直近の安値を割り込み107円65銭近辺を付ける動きが見られた。

 しかし円高の動きは一時的なものに。同日東京の昼頃には下げた分を解消する動きとなり、さらに海外市場では逆にドル高円安の動きが広がる展開に。

 米政府が米軍に人的被害がないことを示し、イラン外相がミサイル攻撃は均衡の取れた対抗措置と発言。これ以上の対抗措置実施について両国とも消極的な様子だったことから、ドルの買い戻しを誘った。

 トランプ大統領が声明を発表し、さらなる経済制裁の方針を示しつつも、軍事的な対応に積極的な姿勢を示さなかった。ドル円・クロス円の買いが強まる展開につながった。

 その後はドル高円安の流れが優勢に。中国政府が劉鶴副首相を代表とした使節団が訪米して15日に米ワシントンで米中通商協議第一弾合意の調印式を行うことを発表。米国側から同様の内容が先月末に示されていた。ただ、中国側が沈黙を守っていたことで、調印の実現を危ぶむ声があった。中国側からの正式発表を受けて、一転して期待感が広がった。

 ドル円は109円台後半までしっかりと上昇する展開に。週末の米雇用統計は若干弱めに出たことで、ドル円の頭を抑える格好となったが、押し目は限定的で、地合いの強さを感じさせる展開となっている。

 その他やや目立った動きを見せたのがポンド。

 カーニー英中銀総裁が講演の中でQE、フォワードガイダンス、利下げなどのすべての政策手段を駆使すれば250BP(用語説明1)相当の利下げにあたる金融緩和余地が残っていると発言。今後の緩和姿勢を示したことがポンド売りにつながった。

 先週前半に1.32台を付けていたポンドドルは1.3010台を付けるところまで値を落とす場面が見られた。

今週の見通し

 リスク選好の動きが優勢に。

 15日の米中通商協議第一弾合意の調印式を前にした期待感によるドル高円安が優勢となっている。合意内容の詳細は調印式の場で示される予定。中国による米国産製品・農産品、サービスなどの輸入拡大や、米国が12月に実施予定であった対中関税の撤回などの方針は伝わってきている。しかし、どこまで実効的な内容になっているのかは未知数。ただ、両国からかなり前向きな姿勢が示されていること、調印式には米中両国の企業関係者も出席して、両国関係改善が強調される予定であることなどが好感されている。流れは上方向。

 中東情勢緊迫化の中でのドル安円高の動きが限定的なものにとどまったことで、下値しっかり感が意識されていることも、ドル高円安基調に寄与。

 ドル円は昨年4月に付けた2019年の高値112円40銭近辺が一つのポイントとなりそう。昨年末に年をまたいだポジション維持を嫌ってのポジション整理が融資に。今年に入っても中東情勢緊迫化警戒でポジション整理が見られ、これだけ下値しっかり感の強い展開が続いているにも関わらず、ドル買いポジションが積みあがっている印象がない。過熱感に欠ける流れとなっており、中期的にもう一段のドル高円安が進む余地は十分にありそう。

 109円台半ばが目先のサポートとして機能するようだと、短期的にも上値トライの期待感が強まる。

 目先のターゲットは110円台後半、中期的なターゲットは112円台半ばという流れか。

 ユーロ円、豪ドル円なども堅調な地合いが期待されるが、ポンド円はやや頭が重そう。ポンドはここにきて今月末の金融政策決定会合(MPC)での利下げ期待が強まっている。

 なお、当初カーニー英中銀総裁は今月末で退任の予定となっていたが、今月末を期限に英国がEUを離脱することが決まったこともあり、よりスムーズな新総裁(ベイリーFCA長官・用語説明2)への引継ぎのため3月15日まで任期が延長されている。

用語の解説

BP Basis Point(ベーシスポイント) の頭文字で、金利市場では0.01%を意味する。もともとの意味は基準となる小数点。金利市場では0.01%の単位を基準として表すため、金利変更幅として一般的な0.25%であれば25BPとして表記される。カーニー英中銀総裁の講演で示された250BPとは2.5%の意味となる。
ベイリーFCA長官 アンドリュー・ベイリー(Andrew Baily)FCA(金融行動監視機構)長官。ケンブリッジ大学を出た後、LSEを経て、1985年から英中銀に勤めるセントラルバンカー。紙幣発行の責任者であるチーフキャッシャーなどを経て、2013年4月から2016年7月まで英中銀副総裁(銀行担当)を務めた。副総裁退任後FCA長官に就任。

今週の注目指標

米消費者物価指数(12月)
1月14日22:30
☆☆☆
 先週末の米雇用統計が弱めに出たこともあり、年内の米利下げ期待が一部で見られる中、雇用と並ぶ米FRBの二大責務である物価についても市場の注目が集まるところ。前回はエネルギー価格と住居費用の上昇が見られたこともあり、前年比+2.1%と予想を超える伸びを示した。食品・エネルギーを除いたコアの前年比は+2.3%と予想通りの結果に。今回は比較対象となる2018年12月の総合の数字が弱かったため、総合の前年比が+2.4%と伸びる見込みも、コア前年比は+2.3%と前回と変わらない伸びに。コアが予想を上回ってくると、今年の利下げのハードルが高いという印象につながり、ドル買いにつながる可能性も。ドル円は110円台半ば超えを意識する展開に。
米中通商協議第一弾合意の調印式
1月15日
☆☆☆
 中国の劉副首相が訪米しており、15日に米ワシントンDCで米中通商協議第一弾合意に署名する調印式を行う予定。両国の企業関係者や易中国人民銀行総裁なども出席見込みで、米中のより親密な関係を示す場となりそう。中国の米国からの輸入拡大の実行に向けたプロセス管理も含めた合意が見られると、両国景気の活性化期待にもつながり、ドル買い円売りの動きに。ドル円は110円台にしっかり乗せて、さらなる上を期待する流れが期待されるところ。
中国第4四半期GDP
1月17日11:00
☆☆☆
 中国の第4四半期GDPが発表される。2019年の中国GDPは第1四半期が+6.4%、第2四半期が+6.2%、第3四半期が+6.0%と鈍化傾向が見られる。今回は中国政府による減税などの景気刺激策の結果、前回と同様の+6.0%にとどまっていると期待されている。予想を下回り6%の大台を割り込むと、中国の景気鈍化傾向を強く意識させるものに。ドル円もさることながら、対中輸出が大きいこともあり中国の景気動向が自国経済に影響を及ぼしやすい豪ドルに対する売り材料となりそう。豪ドル円は75.00を意識する展開も。

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