2020年01月27日号

(2020年01月20日~2020年01月24日)

先週の為替相場

新型コロナウイルスへの警戒感が広がる

 1月20日からの週は、中国湖北省武漢市(用語説明1)で発生した新型コロナウイルス(用語説明2)の感染拡大懸念が相場に大きな影響を与える週となった。

 ドル円は110円台前半でのもみ合いでスタートし、週の後半にかけてリスク警戒感からの円買いが優勢に。24日からの春節(旧正月)で人の移動が活発になり、感染拡大の懸念が円買いを誘った。

 21日に米西海岸北部シアトルで米国内初となる感染者が見つかり、警戒感が増加。中国政府は、発生元とみられる武漢市に発着する航空機、長距離バス、電車、市内の公共交通機関の運行を停止し、感染拡大防止への強い姿勢を示した。これで警戒感がやや後退する場面が見られたが、その後も感染拡大が止まらず、週末にかけて円高が強まる展開に。

 24日に米国で二人目の感染者が見つかったことをきっかけにドル売り円買いが強まり、一時109円17銭まで下落。109円20銭台の安値圏で引ける展開となった。感染拡大が止まらず、警戒感が広がった。

 クロス円も軒並みの円高に。ユーロ円は122円台から120円台前半まで値を落とす展開に。ECB理事会後のラガルドECB総裁発言を受けたユーロ売りも重石となった。

 23日のECB理事会は事前予想通り政策金利を据え置き。注目されたラガルドECB総裁の会見では、序盤で「経済成長に対する下振れリスクは以前ほど高くない」との発言があり、いったんユーロ買い。しかし、注目された戦略検証では、プレスリリースに目新しい内容はなく、会見でも具体的な回答はなかった。消化不良の中で上昇を維持出来ず、逆にユーロ売りが強まる展開に。ユーロドルは1.11台から1.10台前半へ値を落とす展開となった。

 ポンドは一時上昇。22日に発表された英産業連盟(CBI)の楽観指数が予想をはるかに超える好結果となり、買いを誘った。現地時間1月31日午後11時をもって英国がEUを離脱することが決まり、今後の不透明感が強まる中で、英製造業が楽観的な姿勢を示したことが、サプライズに繋がり、ポンド高に。24日に発表された英製造業・非製造業PMIも予想を上回る好結果となっており、英企業の楽観的な見通しにポンド買いの安心感が広がっていた。

今週の見通し

 新型コロナウイルスの感染拡大懸念がどこまで続くか。

 今週は、米連邦公開市場委員会(FOMC)、米第4四半期GDP、英中銀金融政策会合(MPC)、英国のEU離脱など、重要イベントが目白押しとなっているが、市場の目先の注目は新型コロナウイルス関連に集まっている。

 中国政府が中国国内・国外への団体旅行を禁止したことで、人の移動が制限され、ある程度の感染防止が期待されることなどが下支えとなりそう。しかし、感染者拡大の流れが継続しており、当面はリスク警戒感の強い展開に。感染者が25万人超まで膨れ上がるとの英米大学による論文なども発表されており、警戒感が継続。

 ドル円、クロス円ともに頭の重い展開が続きそう。前回アウトブレイク懸念が世界的に広がったSARS(重症急性呼吸器症候群・SARSコロナウイルスによる感染症)では、発生が確認された2002年11月から終息した2003年7月まで長期間にわたって緊張状況が続いただけに、新型コロナウイルスの感染拡大懸念をどこまで意識するのかの判断が難しい。ただ、春節明け(中国での春節休暇は本来の1月30日までから2月2日まで延長済み)の2月3日以降の状況を確認するまでは、ドル買い円売りに慎重な動きが続く可能性も。

 ドル円は109円台半ばが重くなり、108円台での推移となる展開も十分にありそう。状況次第では107円トライも。

 新型コロナウイルス以外でも、今週は材料が目白押し。米FOMCは金利据え置き期待が強く、波乱要素は少ないが、英MPCは据え置きと利下げで市場の見方が分かれており、結果次第でポンド相場が大きく動くとみられる。利下げ実施の場合ポンドドルは1.30割れをしっかり割り込み、今年何度か下値を支えている1.2950/70のサポート水準を割り込む動きがありそう。

 リスク警戒感による円高進行と英MPC絡みでのポンド安が重なると、ポンド円は昨年11月以来となる140円割れも視野に。

用語の解説

武漢市 中国湖北省東部の都市。長江と最大の支流である漢江の合流点に位置する。3800年前からと古くから栄えている。人口は2018年時点で1108万人。長江・漢江に加え東湖など多くの湖を抱え、全市面積の約四分の一が水域面積となることもあり、魚介類が豊富。今回の新型コロナウイルスは武漢市の華南海鮮市場から広がったと推測されている。
新型コロナウイルス 新型コロナウイルス(Novel coronavirus)は、2019年に中国の武漢市で最初に報告されたRNAウイルス。人から人への感染が確認。患者は市場関係者から全国、海外に広がった。2020年1月27日時点で81名の死者が確認されている。WHO(世界保健機構)の発表によると、致死率は3%程度と推定されており、2002年から2003年にかけて流行したSARSの致死率9.6%に比べると低いとみられている。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日04;00
☆☆☆
 28日・29日と米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。前回12月10日・11日のFOMCで米FRBは4会合ぶりに政策金利を据え置いた。通商摩擦問題などを受けた米景気の先行き不透明感が、それまでの3会合連続の利下げの背景に見られた。しかし、今月15日に米中通商協議第一弾合意の調印が行われるなど、状況は改善。前回会合の議事要旨で示されたように、当面の金利据え置きが見込まれている。注目は声明で、直近話題となっている新型コロナウイルスの問題などを受けて、慎重な姿勢が示されるかどうか。12月の声明を踏襲するようだと年内金利据え置きとの見通しが広がり、ドル買い材料に。ドル円は109円台後半を試す動きも。
英中銀金融政策会合(MPC)
1月30日21:00
☆☆☆
 31日に英国のEU離脱を控え、英中銀が金利を引き下げてくるのかどうか、市場の見方が大きく分かれている。直近2回のMPCでは利下げを主張するメンバーが2名出て、7対2での据え置きとなっていた。その後、もう一名の委員が今回のMPCで利下げに投票することを示唆しており、少なくとも3名の利下げ主張が見込まれている。今回のMPCが任期中最後となるカーニー総裁も利下げの可能性を排除しておらず、もし総裁が利下げ主張に回るようだと、同調者が出て利下げとなる可能性が高い。専門家による事前見通しでは据え置き派が大勢となっているが、短期金利市場動向から計算した利下げ見通しでは、利下げの確率が50%を超えており、利下げ、据え置きどちらになってもおかしくない状況。相場は結果に合わせて動くと見られ、据え置きとなった場合、ポンドドルは1.32台回復も視野に。
米第4四半期GDP速報値
1月30日22:30
☆☆☆
 米国の第4四半期GDP速報値が30日に発表される。予想は前期比年率+2.1%と第3四半期と同水準が見込まれている。個人消費の伸びは第3四半期の+3.2%から+2.0%へ鈍化の見込み。だが、第4四半期に入っての貿易赤字の縮小などの影響で、全体の数字は前期並みに。もっとも、アトランタ連銀によるGDP予想「GDP Now」では+1.8%、NY連銀によるGDP予想「Nowcasting」では+1.2%とかなり弱めの数字が見込まれている。NY連銀並みの数字にとどまると、トランプ大統領からの利下げ圧力が一気に強まる。さらに市場からも利下げを意識する動きが広がりそうで、ドル売りの材料となりそう。ドル円は108円台前半をトライする動きも。

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