2020年02月03日号

(2020年01月27日~2020年01月31日)

先週の為替相場

新型コロナウイルス感染拡大懸念が重石

 1月27日からの週は、新型コロナウイルスの感染拡大懸念が継続。リスク回避でのドル安円高の動きが優勢となった。

 発生元である中国湖北省武漢市での移動制限や、春節の延期(従来の1月30日までから2月2日まで)など、当局は対策をとっている。しかし、感染者数と死者数は拡大し、市場の警戒感が継続している。

 その前の週からリスク警戒のドル売り円買いが優勢となっていた。27日週明けの市場で警戒感がさらに拡大。24日NY市場終値の109円20銭台から、週明けは108円90銭台と、下に大きく窓を開けてスタート。その後、108円73銭までドル安円高が進む場面が見られた。春節入りで27日にはアジア市場の参加者が極端に少なくなる中、新型コロナウイルスの感染者拡大報道などが重石となった。

 その後はいったん値を戻し、109円台を回復するなどの動きを見せたが、24日NY市場終値近辺が上値抵抗水準となり、頭の重い展開に。

 28日、29日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、パウエル議長は、新型コロナウイルスへの警戒感とインフレ目標に届かない状況への不満を示した。さらにドル売りが優勢となり、ドル円は週の後半にかけて108円50銭台に。

 30日に緊急事態宣言を出したWHO(世界保健機構)のテドロス事務局長(用語説明1)が、「貿易や移動の制限は推奨しない」、「脅威ではなく事態を確認するとき」などと発言し、109円台を再び回復。しかし、週末にかけて再びドル安円高の動きが広がると、直近安値を割り込んで108円30銭前後まで値を落として週の取引を終えた。

 その他目立ったのはポンドの動き。

 30日の英中銀金融政策会合(MPC)まではポンド売りが優勢に。直近の二会合では2名の利下げ主張メンバーが出て、7対2での金利据え置きとなっていた英中銀。30日の会合ではブリハ委員などが利下げ主張に加わるとの観測が強まり、ポンドの重石となった。

 ポンドドルは週初の1.31台を付ける動きから1.2970台まで値を落とす動きとなり、1.30ちょうど前後でMPCを迎える展開に。ポンド円はリスク警戒の円高もあり、142円台後半から141円20銭台まで一時値を落とす場面が見られた。

 MPCの結果はこれまで通り7対2での据え置きに。今年の成長見通しの引き下げ(11月時点の1.25%から0.75%へ)や、成長が予想通り進む場合に、これまでの限定的かつ漸進的な利上げが必要になるとの表現を、幾分の緩やかな引き締めに変更するなど、今後に向けて慎重姿勢が見られた。しかし、少なくとも6対3、5対4もあり得るのではとの事前見通しに対して、従来通りの7対2という投票結果のインパクトが大きく発表後はポンド買いに。

 ポンドドルは1.31台を付ける動き。さらに週末にかけたドル売りもあって1.32台まで回復するなどポンド買いが広がる展開に。ポンド円は円高進行の分、動きが抑えられたが、143円台前半を付ける動きに。

今週の見通し

 新型コロナウイルスの感染拡大懸念が継続。ドル買いに慎重な流れが続きそう。

 感染拡大が続く中で、どこまでリスク警戒を続けるべきかという判断が難しい状況。新たに浙江省温州市(人口900万・用語説明2)で移動制限が出されるなど、当局の対策は進んでいる。しかし、中国経済に対する悪影響への懸念が広がっており、ドル円、クロス円の重石に。

 ドル円は108円台での推移を中心に、107円台への下落も意識する展開となりそう。

 また、今週は米国でイベントが目白押しとなっており、こちらも要注目。米ISM製造業景気指数、米雇用統計などの重要経済指標の発表がある。それらに加え、3日のアイオワ州米民主党党大会から、今秋の大統領選に向けた予備選挙がスタートとなり、市場の注目を集めそう。

 同州を対象とした事前世論調査ではサンダース上院議員とバイデン前副大統領の支持率が高く、ブティジェッジ前サウスペンド市長、ウォーレン上院議員などが追う展開に。

 左派色が強く、富裕税の導入などを主張するサンダース上院議員が勝利し、今後に向けた勢いがつくようだと、市場の警戒感が強まり、ドル売りにつながる可能性も。この場合ドル円は108円台割れも十分にありそう。

用語の解説

テドロス事務局長 テドロス・アダノム・ゲブレイェスス世界保健機構(WHO) 事務局長。2005年から2012年までエチオピアの保険相、2012年から2017年まで同外務相などを歴任。その間、エイズ撲滅基金やロールバック・マラリア・パートナーシップの理事などにも就任。2017年7月にアフリカ系としては初となるWHOの事務局長に就任した。
温州市 中国浙江省東南沿海に位置する都市。2018年末時点で人口は925万人。1980年代に中国の改革開放政策のモデルとなり、軽工業などを中心に経済が発展。靴・衣類・眼鏡・家具などの輸出が盛ん。大型のマーケットなどもあり、商業も発展している。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(1月)
2月4日00:00
☆☆☆
 前回は予想を下回り2009年6月以来10年超ぶりの低水準となる47.2となった同指標。内訳をみると、注目度の高い新規受注、生産がともに2009年4月以来の低水準。雇用が2016年1月以来の低水準と厳しい結果に。米中の通商摩擦問題などを受けて米製造業の先行き見通しが悪化している状況が印象付けられた。今回の予想は48.4と前回から改善の見込みで、予想前後の数字が出てくると少しドル買いも、好悪判断の境となる50.0には届かない水準だけに、影響は限定的か。予想外に50を超えてくるような改善を見せるとドルが一気に買われる可能性も。
豪中銀政策金利発表
2月04日12:30
☆☆☆
 昨年は6月7月10月と3回の利下げを実施した豪中銀。前回12月の理事会では金利を据え置いたものの、声明では「持続的な経済成長のために、必要なら金融政策をさらに緩和する準備がある」と追加利下げの可能性に言及した。この声明内容に加え、冴えない雇用市場動向などもあって、前回の会合後は今回会合での利下げを見込む動きが一時広がった。しかし、先月23日発表の12月豪雇用統計の好結果、29日発表の第4四半期消費者物価指数の好結果など受けて利下げ見通しが後退。据え置き見通しが広がる展開となっている。しかし、ここにきて新型コロナウイルスの感染拡大による中国経済の減速懸念が広がっており、対中輸出の大きい豪経済にもかなり大きなダメージという思惑から、利下げを見込む動きも再燃しつつある。見通しが分かれる分、どちらに決まった場合でも豪ドルの動きがありそう。利下げに踏み切った場合は、豪ドルは対ドルで昨年の安値を割り込み、リーマンショック直後の豪ドル安局面以来となる0.66割れも視野に。
米雇用統計(1月)
2月7日22:30
☆☆☆
 前回12月分の米雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比+14.5万人と事前予想の16.0万人及び10月分の+25.6万人(改定値・速報時点では26.6万人)を下回る結果となった。もっとも景気動向に敏感な小売業の雇用が回復するなど、内訳はまずまず。失業率が50年ぶりの低水準となった11月分の3.5%を維持するなど、総じて堅調という印象を与える結果に。今回は+16.0万人と前回からやや伸びが強まる見込み。失業率は3.5%を維持の予想に。予想程度の数字が出てくると米雇用市場の堅調さが意識されドル買いに、ドル円は109円台回復に向けたきっかけになる可能性も。

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