2020年02月10日号

(2020年02月03日~2020年02月07日)

先週の為替相場

ドル円しっかり

 2月3日からの週は、リスク警戒感が一服し、株高とドル高円安が目立つ展開。新型コロナウイルスの感染拡大懸念は継続しているが、中国の積極的対応や、ウイルスに対応するワクチン開発報道などを好感して、一時の警戒感が後退した。米ISM製造業景気指数(用語説明1)、米ADP雇用者数、米雇用統計など注目指標が軒並み良かったこともあり、ドル円は一時110円台を付ける動きが見られた。

 もっとも110円台での買いには慎重。週末を前に警戒感からの株の売りなどもあり、109円台後半で週の取引を終えている。

 感染拡大が継続する中、ドル円は先週前半からしっかりとした展開となった。週明けの東京朝方、ドル円は中国での感染者拡大報道などを受けて108円30銭近辺でスタート。春節明けの中国市場での中国売りの動きなどへの警戒感も見られた。

 実際に売りの動きが入るものの、想定の範囲を外れず、その後は少し買い戻し。さらに3日の米ISM製造業景気指数が予想を大きく上回り、米中通商摩擦問題などで低迷していた米製造業の景況感回復が印象付けられた。ドル円が108円80銭を付けるなど、ドルは買い戻しが優勢に。

 中国人民銀行が予告していた3日のリバースレポ(用語説明2)による大規模資金供給に加え、4日も続けたことで、リスク回避の動きが後退した面もあった。4日のアジア株式市場で上海総合や日経平均が序盤の下げから回復し、プラスに転じる動きを見せたことなどを好感。ドル円は109円台を付ける動きとなった。

 その後も株高の動きが続き、ドル円は109円台半ばまで戻す展開。その後少しもみ合うも、下値しっかりの展開が続く中で、ウイルスに対処する中国と英国でのワクチン開発関連の報道をきっかけにドル円が109円80銭台を付けるなど、一段とドル高に。

 さらに中国が約750億ドル相当の米国産品に対する輸入関税率の引き下げを発表したことなどを好感して、ドル円は110円を付ける動きに。

 週末を前にドル買いポジションの整理が入ったこともあり、その後は少し値を落とす動き。予想を超える好結果となった非農業部門雇用者数などを受けたドル買いが110円に届かなかったこともあり、やや上値が重くなり109円台後半で週の取引を終えている。

 ポンドは対ドルを中心に売りが優勢になった。

 先月末に1.32台に乗せたポンドドルは少し値を落として1.31台後半で先週の取引がスタート。その後、ジョンソン英首相が対EUとの通商交渉で望む結果にならない場合は交渉を打ち切るとの姿勢を示し、EU側も漁業権問題などで英国と対立している状況を明らかにした。このことでポンド売りが加速。先週前半のうちに1.2950割れまで。その後ドル安の動きに少し戻したものの、先週後半には1.2880近辺まで値を落とす展開となった。

 4日の豪中銀金融政策会合では事前予想通り金利の据え置きを決定。利下げ見通しが一部で見られたことや、声明での新型コロナウイルス懸念への言及などがそれほどハト派的でなかったことなどで豪ドルは結果発表後に豪ドル買いに。

 対ドルで0.6680近辺から一時0.6770台まで。ただ、対中輸出が大きい豪州にとって、新型コロナウイルス関連の懸念は大きな売り材料。先週後半にかけて上昇分を打ち消して、さらに下を試す展開に。

今週の見通し

 米経済の堅調さなどを背景にした米株高・ドル高の流れと、感染拡大懸念による円高の流れが交錯。ドル円は神経質な動きとなっている。今週はこうした展開が継続。先週の米ISM製造業景気指数や米雇用統計の好結果を受けて、下がったところではドル買いが出る流れが継続しているが、所々で調整の動きが入る展開が見込まれる。

 ユーロ、ポンド、豪ドルなどに対してのドル高の動きが続いており、ユーロドルが昨年10月以来のユーロ安ドル高、豪ドルに至ってはリーマンショック以来の豪ドル安ドル高が進む展開となっており、ドル円以外でのドル高が進む中で、ドル円だけ値を落とすのは厳しい。

 新型コロナウイルス関連でよほど大きな懸念材料(中国買いでの感染者や死者の大規模な拡大など)がなければ、ドル円は基本的にはしっかりか。

 110円台半ばにかけては売りが並んでいるとみられるが、展開次第ではしっかりと超えて、昨年4月につけた112円40銭近辺を意識するような動きも。

 109円台後半から110円台前半でのレンジ取引を中心に上値トライのタイミングをうかがう展開に。

 クロス円は対ドルでユーロや豪ドルが重くなっている分、ドル円ほどの上昇は期待しにくい。特に対中輸出が大きい豪ドルに関しては昨年から続く大規模な山火事に加えて、中国の景気鈍化懸念が豪経済にかなりの重石になるとみられている。対ドル中心に豪ドル売りがさらに強まる可能性もあるだけに、豪ドル円の頭は重くなりそう。74円が重くなるようだと、先週末何とか維持した73円の大台を割り込む動きも。

用語の解説

ISM製造業景気指数 ISM(Institute for Supply Management:供給管理協会)が全米の製造業350社の購買担当役員に対するアンケート調査を実施し、その結果を基に作成する景況感を表す指数。「新規受注(30%)、生産(25%)、雇用(20%)、入荷遅延(配送時間)(15%)、在庫(10%)」の5項目につき、「良くなっている(1)、同じ(0.5)、悪くなっている(0)」の三者択一の回答結果を点数化し、カッコ内数値でウエイト付けした加重平均で算出される。50が好況と不況の分岐点を意味する。
 景気に対する先行性があるとして米指標の中でもかなり注目度の高い指標となっている。
 全体の数字だけでなく、項目ごとの数字も公表され、新規受注、生産の項目は、景気とのかかわりから注目度が高い。また、米雇用統計よりも発表が早いことが多い(発表が同一日となる場合は、雇用統計の方が発表される時間が早い)ことから、雇用部門の数字は、雇用統計の先行指標として注目される。
リバースレポ レポ取引とは債券を担保に資金の貸借を行う取引。中央銀行が行うリバースレポによる公開市場操作(オペ)の場合、市中銀行に対して債券を担保に資金を貸し付ける(供給する)取引になる。

今週の注目指標

パウエル議長議会証言
2月11日・12日
☆☆☆
 パウエルFRB議長は11日に米下院金融サービス委員会、12日に上院銀行委員会で半期に一度の議会証言を行う。日本銀行の黒田総裁などは国会で度々答弁を行っているが、米FRB議長が議会で答弁する機会は、通常この半期に一度の議会証言のみとなっており、重要なイベントとなっている。今後の金融政策運営方針、新型コロナウイルス関連の影響についての考察などを議会に対して説明し、質疑応答も受ける。新型コロナウイルスの感染拡大懸念などから、今後についてより慎重な姿勢が見られるようだとドル売りのきっかけになる可能性も。ドル円は109円台前半に値を落とす可能性も。
ニューハンプシャー州民主党予備選挙
2月11日
☆☆☆
 2月3日のアイオワ州での党員集会で始まった共和党・民主党の大統領候補者を決める予備選挙。第2弾として11日にニューハンプシャー州で予備選が行われる。アイオワ州での党員集会では、全米規模で支持率一位となっているバイデン前副大統領が4位と敗れ、全米規模ではバイデン氏やサンダース上院議員などにかなりの差を付けられての5位となっているブティジェッジ前サウスベンド市長がトップに立った。この勢いを受けてニューハンプシャー州の世論調査でもブティジェッジ氏が躍進しており、ほぼ地元ということもあり勝利が確実視されていたサンダース上院議員に迫る勢いを見せている。ニューハンプシャー州でもブティジェッジ氏が勝利するようなことがあると、勢いがさらに強まり、民主党大統領候補の最右翼に浮上する可能性も。政治的キャリアに乏しい同氏の躍進は市場にとってやや警戒材料で、ドル売りの材料に。この場合ドル円は109円ちょうどをトライする動きもありそう。
米消費者物価指数(1月)
2月13日
22:30
☆☆☆
 先月のFOMC後の記者会見でパウエル議長はインフレターゲット(PCEデフレータ前年比2%)に長い間届いていない状況に対する不満を示しており、今後の金融政策動向を見越すにあたって物価関連指標の注目度が高まっている。特に今週発表されるCPIはPCEデフレータと同系統の指標で、発表がPCEデフレータより早く、水準こそ違えども変化の傾向はほぼ同じことから、PCEデフレータ以上に注目を集める指標となっている。今回は変動の激しい食品とエネルギーを除くコアの前年比が+2.2%と前回の+2.3%から鈍化する見込みとなっており、やや警戒感のある発表に。予想をさらに下回って鈍化してくると、今後の利下げ期待につながる形でドル売りが入る可能性も。ドル円は109円を割り込むような動きも意識されるところに。

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