2020年02月17日号
先週の為替相場
ドル円しっかり
2月10日からの週は、史上最高値を更新する米株式市場への期待感などもあり、ドル買いがやや優勢な動き。ただ、新型コロナウイルスへの警戒感からドル円の110円台では売りが出る流れで、109円台後半でのレンジを中心とした推移になった。
7日の米雇用統計の好結果もあり、週明けから比較的しっかりの展開となったドル円。もっとも週半ばまでは110円ちょうど手前の売りに頭を抑えられ下値はしっかりも上値トライは限定的という流れに。12日のロンドン市場で米債利回りの上昇によるドル買いなどをきっかけに110円台に乗せると、その後は110円前後での推移が続いた。
しかし、13日朝に中国湖北省が感染者数の急拡大を発表。判断基準の変更によるものであったが、他の地域と基準を合わせただけとの報道に、これまでが過少報告であったとの認識が広がり、リスク警戒の動きに。ドル円は109円台後半に値を落とし、その後は110円が重い展開となった。
中国政府が湖北省と武漢市のトップを解任するなどの対応をとったこともあり、市場の警戒感が継続。一時109円62銭近辺まで下落も、下がったところでは買いが出る流れは変わらず、もう少し値を戻して109円70銭台で週の取引を終えている。
今月に入って売りが強まる展開となっているユーロドルは、一時1.0820台と2017年4月以来の安値圏まで値を落とす展開に。欧州の景況感悪化などに加え、10日にメルケル独首相の最有力公認候補とされていたドイツ与党CDUのクランプカレンバウアー党首(用語説明1)が辞任。ドイツの政治的な混乱が広がったこともユーロ売りにつながっている。
ポンドドルも週の前半は頭の重い展開となり、一時1.28台後半まで値を落とす場面が見られた。ユーロ売りが波及したことに加え、英国とEUとの貿易交渉への警戒感などが重石に。
もっとも13日にジャビド英財務相の退任が伝えられ、後任にジョンソン首相に近いスナック財務省主席政務次官(用語説明2)の就任が報じられると、英景気をサポートとするための財政出動期待などが強まり、ポンド買いに。ポンドドルは1.30台半ば前後での推移に。ポンド円は142円10銭台から143円台半ば近くまで上値を伸ばした。
今週の見通し
米景気は基本的に堅調で、下がったところではドル買いが出る流れに。日本や欧州に比べて米経済に安定感が見られ、米株高の動きが続く中で、ドルはほぼ全面高に。
新型コロナウイルスへの警戒感からドル円は上値追いにも慎重姿勢が見られるが、下がったところでは買いが出る流れ。
ドル円は109円台後半でのレンジ取引を中心に110円台回復をにらむ展開に。米株の上昇基調が継続する中、ドル円も基調は上方向。
今週発表される独ZEW景況感指数、独製造業・非製造業PMIなどでドイツの景況感悪化が確認されると、もう一段のユーロ売りドル買いが強まり、ドル全面高基調が加速する可能性も。
新型コロナウイルスによる中国経済の鈍化懸念から資源国通貨は買いにくい。輸出に頼るドイツを中心としたユーロ圏経済への警戒もある中で、資金がドルに集まる流れに。
ドル円は1月17日に付けた直近の最高値110円29銭がターゲット。超えると昨年4月につけた112円40銭近辺まで目立ったポイントがなく、大きな上昇も。
ユーロドルは目先のポイントを割り込んできており、2017年以来の安値圏での推移。次のターゲットが見えにくいが、まずは1.0750あたりが目途となりそう。
用語の解説
クランプカレンバウアー党首 | アンネグレート・クランプカレンバウアー(Annegret Kramp-Karrenbauer)。ドイツ与党CDU(キリスト教民主同盟)に所属する政治家。ザールラント州首相などを経て2018年2月からメルケル首相兼CDU党首の下で党幹事長に就任。同年の地方選での敗北を受けてメルケル首相が党首から辞任し、任期満了での首相の退任を表明したことを受けて、2018年12月に党首に就任。メルケル首相の後任指名もあり、次期首相の最有力候補とされていた。2019年にはフォン・デア・ライエン国防相(当時)が欧州委員会委員長に選出された後を受けて、国防相に就任している。 旧東独テューリンゲン州において、CDUの州支部が党本部の意向に逆らって極右AfDと連携し、自由民主党のケメリッヒ氏を首相に選出したことがドイツ国内での大きな批判を浴び、ケメリッヒ氏が就任翌日に辞任。クランプカレンバウアー氏も党内を掌握しきれていないとの批判を受けて党首の辞任を発表した。 |
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スナック財務省主席政務次官 | リシ・スナック(Rishi Sunak)。オックスフォード大学を出た後、米ゴールドマンサックスやヘッジファンドなどでの勤務を経て、2015年から英下院議員に。メイ政権下での地方政府担当次官などを経て、ジョンソン政権下で2019年7月から財務省主席政務次官に就任。ジョンソン首相による内閣改造によりジャビド財務相が辞任した後を受けて2020年2月13日付で英財務相に就任した。 |
今週の注目指標
独ZEW景況感指数 2月18日19:00 ☆☆ | 先週末に発表された独第4四半期GDPが前期比変わらずと冴えない結果になるなど、ここにきてドイツ経済がやや厳しい状況。米中通商摩擦問題に端を発した世界的な貿易の低迷に貿易立国であるドイツ経済が悪影響を受けたところに、新型コロナウイルス問題で中国の景気鈍化懸念が強まったことなどが背景にある。こうした中、前回(1月分)2015年7月以来の好結果を記録した独ZEW景況感が18日に発表される。今回は若干の鈍化も22.0と水準的にはかなり強めの数字が期待されている。もっとも、新型コロナウイルスへの警戒感がどこまで出てくるのかは未知数。予想以上の落ち込みが見られるとユーロ売りも。ユーロ円は118円台半ばを意識する展開も。 |
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トルコ中銀政策金利 2月19日20:00 ☆☆☆ | 昨年7月に現在のウイサル総裁が就任して以来、5会合連続で利下げを行っているトルコ中銀。今週6会合連続の利下げに踏み切るかどうかが注目されている。 インフレ率の上昇などを受けてチェティンカヤ前総裁の下で24.00%まで政策金利が引き上げられたトルコ。低金利を望むエルドアン大統領が前総裁を更迭し、代わって総裁につけたウイサル氏の下で、この半年で計12.75%も金利を引き下げ、現在では11.25%に。実質金利としてはすでにマイナスになった可能性もある現水準から、さらに利下げを実施するかどうか。市場の体制の見通しは0.50%の利下げと、一連の利下げ局面の中で最も小さい利下げ幅ながら利下げに踏み切る見込み。もっとも据え置き見通しもそれなりにあり、据え置きとなった場合はリラ買いも。リラ円は18円40銭がターゲット。 |
豪雇用統計(1月) 2月20日 09:30 ☆☆☆ | 前回12月分の豪雇用統計は、雇用者数が二カ月連続で予想を上回る好結果。失業率も予想外に改善し9カ月ぶりの水準となった。この結果を受けて2月4日の豪中銀(RBA)金融政策会合での利下げ見通しが後退。実際にRBAは金利を据え置いた。米中通商摩擦の影響や新型コロナウイルスへの影響などから中国経済の鈍化懸念が広がり、今後については慎重な姿勢が見られる中、政策金利動向に大きな影響を与える雇用市場の動向への注目度は高い。予想は雇用者数が+1.00万人とプラス圏も伸びが鈍化、失業率は5.2%に悪化とやや厳しいものに。予想よりもさらに弱い数字が出ると、早期の利下げ期待につながる形で豪ドル売りに。豪ドル円は73円台半ば割れをトライも。 |
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