2020年03月02日号

(2020年02月24日~2020年02月28日)

先週の為替相場

リスク警戒加速

 2月24日からの週は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大への懸念が加速する展開となった。

 米ダウ平均株価が7営業日連続の下落。下落幅も大きく先週1週間の下げ幅は計3587ドルと、過去最も大きな下落幅を記録した。外国為替市場でもリスク回避の動きが広がり、安全資産とされる円やスイスフランへの買いや、新興国・資源国通貨の売りなどが目立つ展開に。

 安全資産とされる米国債への資金流入が続き、米長期債利回りが大きく低下(債券価格上昇=利回り低下)。ベンチマークとされる米10年債利回りは史上最低水準を大きく更新する展開となった。

 こうした状況を受けてドル円はドル安円高が加速。先週初めに111円台後半を付けていたドル円は、週の半ばに節目の110円割れを付ける動きが見られ、週の後半に売りが加速すると週末には107円台半ばまで値を崩す展開が見られた。

 横浜港に停泊中のクルーズ船内で新型コロナウイルスの感染が拡大。日本が当事国の一つとされ、円売りになる動きが先月半ば頃には見られた。しかし、世界で広がる中でこうした動きは鳴りを潜め、リスク回避での円買いの動きが優勢となる展開に。

 米債利回りの低下を嫌気してユーロは対ドルでは堅調。先週初めの1.08台での動きから先週末には1.10台半ばへと上昇した。イタリアで感染者が拡大していることから、上値で売りが出る流れも、ドル安の勢いが勝った。

 ユーロ円は、対ドルでのユーロ買いに支えられて買いが入る場面が見られ、先週半ばの119円台半ば割れから、27日の海外市場で121円台を付ける場面が見られた。しかし、週末にかけてのリスク警戒からの円買いに押され、118円台前半まで大きく値を落とす展開となっている。

今週の見通し

 新型コロナウイルスの感染拡大懸念を警戒する展開が続く。

 世界的な株安の動きが広がっていることや、実体経済への悪影響が強く懸念されていることなどから、ドル安円高の動きが進みやすい展開に。

 もっとも先週は111円台後半から107円台まで値を落としており、流石に過熱感も。1日の中国での新型コロナウイルスの新規感染者数が200名ほどとかなり抑制されており、このまま動きが収まるようだと、大きな反動が入る可能性がある。

 各国の財政・金融政策面での動きに対する期待も強い。今週の豪中銀金融政策理事会では、2週間ほど前まで据え置きで見通しが一致する流れとなっていた。しかし、ここにきて短期金利市場では逆に0.25%の利下げを織り込む動きに。今年中は据え置きが濃厚とされていた米FOMCについても、先週時点で早期の利下げ期待が広がり、先週末時点では今月17日・18日のFOMCでの利下げがほぼ確実。状況次第ではFOMCを前に臨時会合を開き緊急利下げもというところまで見通しが変化している。

 一般的に金融緩和は当該通貨の売り材料であるが、世界的な株安進行が収まるとの期待が広がるようだと、逆に当該通貨の買いになる展望も。特にドル円に関してはリスク警戒感からのドル売り円買いの一服につながるとして、利下げ直後はともかく、落ち着くとドル買いに作用する可能性が十分にある。ドル円は110円に向けた動きを強める方向性もありそう。

 その他の材料としては3日に米大統領選予備選挙(用語説明1)のスーパーチューズデー(用語説明2)を3日に迎える。序盤で健闘したブティジェッジ前サウスペンド市長が選挙戦からの離脱を表明したことで、中道派のバイデン前副大統領に票が集まる可能性がある。29日のサウスカロライナ州での予備選で勝利したバイデン氏の勢いが回復し、スーパーチューズデーを1位で乗り切れば、民主党の大統領候補に大きく前進する。穏健派で政治手腕にも定評がある同氏の勝利を市場は好感すると見られ、ドル買いが広がる場合もある。ドル高の動きが広がり、ユーロドルが1.09台へ値を落とす(ユーロ安ドル高)流れもありそう。

用語の解説

予備選挙 米国の大統領選に出馬する二大政党(共和党・民主党)それぞれを代表する候補者を選ぶ選挙のこと。今年の予備選挙は両党とも2月3日のアイオワ州党員集会でスタートした。共和党は現職のトランプ大統領で事実上決定しており、民主党の候補者選びが注目されている。人口に比して割り振られた各州の代議員の数を、各州の予備選・党員集会での投票で決定し、今回の民主党の場合は、最終的に全米3979名の代議員の過半数を獲得した候補者が民主党の代表として大統領選に出馬する。
スーパーチューズデー 2月3日のアイオワ州党員集会を皮切りに6月まで行われる予備選挙。これまでに4州で予備選挙が行われたが、決定した代議員数は149人にとどまっている。3月3日は全米で最も多い415人という代議員数が割り振られているカリフォルニア州を初め、多くの州の予備選挙が集中する日となっており、スーパーチューズデーと呼ばれて注目を集めている。この日1日で1344人と全体の約3分の1の代議員が一気に決まり、大統領候補が決まるもしくは2,3名に事実上絞られる可能性があるため、注目を集めている。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(2月)
3月3日00:00
☆☆
 前々回12月分が予想を大きく下回り、2009年以来の低水準となる47.8を記録した同指標。前回は逆に予想を大きく上回り景気判断の境となる50.0も超える50.9を記録した。ただ、先月時点では新型コロナウイルスの感染拡大に対する懸念が米国内で広がっていなかった。その影響が出てくる今回、どこまで景況感が悪化しているのかが注目される。もっとも、米株式市場が大きく値を落とすなど、新型コロナウイルスに対する米国市場の反応が強まったのは先月の後半に入ってから。今回の数字にどこまで反映されているのかは不透明。そうしたこともあり、今回の予想は50.5と前回からわずかな鈍化で、好悪判断の境となる50も上回ると見込まれている。予想外に50を割り込むなど、景況感悪化が鮮明になるとドル売りの加速も。ドル円は107円割れを意識。
米スーパーチューズデー
3月3日
☆☆☆
 今年11月の米大統領選挙での民主党・共和党の指名候補を決める予備選挙が先月3日から始まった。共和党はトランプ大統領で事実上決まっている。民主党は複数候補が激しい指名候補者争いを繰り広げている。序盤戦はサンダーズ上院議員がやや優勢に選挙戦を進めているが、現状で決まった代議員数は149と、全米全体の3979のごく一部。そうした中、3日は予備選挙が集中するスーパーチューズデーとなっている。この日の結果で全体の約三分の一の代議員数が決定することもあり、候補者決定に向けた重要な日となっている。初戦のアイオワ州で勝利するなど台風の目となっていたブティジェッジ前サウスペンド市長が撤退を決めたこともあり、サンダーズ氏とバイデン前副大統領、ブルームバーグ前NY市長などが有力候補に。富裕税などを主張するサンダーズ氏が勝利した場合、市場の混乱懸念からドル売り材料となる。ドル円は106円台に向けた動きも。
米雇用統計(2月)
3月6日22:30
☆☆☆
 今月のFOMCでの利下げ期待が急速に強まる中、米金融政策動向に大きな影響を与える米雇用統計に対する注目度が高まっている。前回は非農業部門雇用者数は+22.5万人と事前予想+16.5万人を大きく超える好結果に。米雇用市場の堅調さを印象付ける結果となった。今回の予想は+17.5万人とやや鈍化も水準的には強め。新型コロナウイルスの感染拡大の不安が広がっている。しかし、雇用統計の調査は12日を含む週であり、感染懸念が強まった20日以降のデータは含まれていないため、予想前後の数字が期待されるところに。前回の数字の内訳をみると、ブレの大きい小売業の数字が弱めに出ており、今回その反動が出るようだと、予想を超える増加が見られる可能性も。その場合ドル円は買い戻しの動きが強まり、119円台に向けた動きも。

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