2020年03月09日号
先週の為替相場
ドル売り強まる
3月2日からの週は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大への懸念がさらに加速する展開となった。
感染拡大による市場の混乱や実体経済への悪影響を懸念して、各国中銀が緩和姿勢を示した。
3日にG7財務相・中央銀行総裁による緊急電話会議を実施と報じられた2日に少しドル買いの流れが見られ、先週初めの107円台前半から108円台半ばを超える場面が見られた。
もっとも上昇一服後は売りが出る流れで、頭の重い展開の中で米FRBが金融利下げを実施。臨時会合による0.50%の大幅利下げを受けて米株が3日朝の300ドル安から300ドル超の上昇に持ち上げられたものの、株高は続かなかった。その後1000ドル近くまで下げるという大きな動きに。緊急利下げでも止まらない株安にリスク警戒感からドル円は107円台を割り込む動きとなった。
その後はかなり不安定な振幅に。米10年債利回りが節目の1.00%を割り込む動きなどが見られドル売りを誘う格好となった。
その後いったんは動きが落ち着き、107円台を中心にした動きも、週後半にかけて再びドル安円高が進行。カリフォルニア州での緊急事態宣言(用語説明1)などが市場心理に影響した。米債利回りの低下も止まらずドル売り円買いが優勢に。
週末に向けて動きはさらに加速し、ドル円は104円台に。米債利回りの低下が止まらず、ドル売りを誘う格好となった。
米雇用統計は非農業部門雇用者数が予想を上回った。さらに前回値の上方修正が見られ、かなりの好結果であったが、反応はほとんど見られず。ドル売り円買いの流れが継続したままで週の取引を終えた。
豪中銀、カナダ中銀も利下げを実施。豪中銀は3日に0.25%の利下げ。カナダ中銀は4日に予想を超える0.50%の利下げを実施した。両中銀とも追加緩和の可能性を示しており、発表後に売りが出る流れに。
今週の見通し
新型コロナウイルスへの警戒感が拡大。
新型コロナウイルスの拡大懸念加速しており、どこまで進むか未知数という状況に。資金の安全資産への逃避が止まらず、米長期債に資金が集中。ドル円に関してはリスク回避の円高と、米債利回りの低下(債券価格上昇=利回り低下)によるドル売りの両面から下値を探る展開に。
資源国通貨売りの動きも加速。リスク感応度が高いこともあり、売りが出やすいことに加え、週末のOPECプラス(用語説明2)での減産交渉が決裂し、原油価格が急落していることで、資源国通貨売りの圧力がさらに強まる格好に。
世界的な不透明感の拡大により流動性の低い通貨・投資商品を売りに回る流れも見られ、新興国通貨全般の売りにつながっている面も。
ドル円に関しては100円割れが現実味を帯びてきている。先週は米金融機関が95円というターゲットを示すなど、ドル安円高の動きを見込む動きに。米債利回りの低下が続き、本邦機関投資家からの新規外債投資の動きが後退することなども、ドル買い需要の減退からのドル売り円買いに。
新型コロナウイルスの拡大に関しては、米国・欧州で感染者数が加速する流れとなっており、警戒感の強い流れが当面続きそう。
戻りがかなり重くなると予想される。不安定な展開の中、調整が入る局面も出てくるだけに、振幅を交えながらのドル安円高トライに。
目先のターゲットは100円。本来であれば大台手前には買いが入るが、どこまで入るかは微妙なところ。あっさりと97円程度までの大きな下げも。
用語の解説
緊急事態宣言 | 米国で緊急事態宣言を出す自治体が増えてきている。宣言への署名により各地区の衛生当局と自治体との協働による連携が可能となり、州や連邦の予算を利用した新型コロナウイルス対策などの施策がやりやすくなる。 市民の行動制限などは緊急事態宣言そのものには含まれておらず、自治体などが判断するものとなる。 |
---|---|
OPECプラス | サウジアラビアなど中東を中心とした14か国によるOPEC(輸出国機構)と、ロシアを中心とするOPECに加盟していない主要産油国10か国からなる会合。OPECに加盟していない産油国の生産量が拡大しOPECの価格支配力が低下。シェールオイルなどの生産拡大で最大の石油消費国である米国の中東離れが進む中で、市場への影響力拡大を狙って、OPECとロシアなどが協力するための会合として始まった。 |
今週の注目指標
英予算案公表 3月11日20:30 ☆☆☆ | 英国の新年度予算(2020年4月-2021年3月)が3月11日に公表される。先月、ジャビド財務相がジョンソン首相との対立で急遽辞任し、スナック財務省主席政務次官が昇格する形で新財務相に就任。新予算案発表までの期間が短いことから、延期も懸念されていたが、新財務相が当初の予定通り3月11日の公表を明言した。ジャビド前財務相の退任には、ジョンソン首相が昨年12月の総選挙で公約に掲げた大規模な公共事業の実施と、財政規律を守ろうという財務省の動きとの軋轢が要因にあったとみられており、新財務相の下で積極的な財政出動を盛り込んだ予算案の公表が期待されている。予想通り積極的な財政出動が見られるとポンド買いも。ポンドドルは1.33台超えをターゲットに。 |
---|---|
米消費者物価指数(2月) 3月11日21:30 ☆☆ | 先週の臨時会合で0.50%の緊急利下げに踏み切った米国。来週のFOMCでの追加利下げが期待される中で、利下げへのハードルと成りうるのが物価の状況。そうした中、物価関連指標で最も注目度の高い消費者物価指数(CPI)が11日に発表される。予想は前年比+2.2%と前回から鈍化。食品・エネルギーを除いたコアの予想が+2.3%と前回と同水準となっている。予想を超えて物価の上昇が見られると、利下げにやや躊躇する動きも。現状で0.50%の追加利下げが見込まれているが、見通しが少しでも後退するようだとドルの買い戻しに。ドル円は103円台への回復が期待されるところ。 |
ECB理事会 3月12日21:45 ☆☆☆ | 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、世界的に緩和圧力が強まっており、ECBも何らかの対応が必要とみられている。3つある政策金利のうち下限金利にあたる預金ファシリティ金利を0.10%引き下げるという見通しが一般的。さらにTLTROの条件緩和なども見込まれている。緩和姿勢を強めることで、株安などの動きが一服するかどうかが注目されるところ。株安の動きが落ち着くようだとユーロ買い円売りに。ユーロ円は118円台回復も。 |
免責事項
本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。
Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.
auじぶん銀行からのご注意
- 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。
以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。