2020年03月30日号

(2020年03月23日~2020年03月27日)

先週の為替相場

不安定な動き

 3月23日からの週は、週の半ばから流れが大きく変わる展開となった。

 週の前半は16日の週にみられたドル全面高の流れが継続。111円台後半での買いには慎重も、押し目を切り上げながらしっかりの展開に。

 23日に米FRBが景気支援策第2弾を発表。15日に再開を発表した量的緩和(QE)について、上限枠を撤廃し必要なだけ購入すると、事実上の無制限購入を明らかにした。

 24日には米上院共和党が提出した2兆ドルに上る経済対策法案について、民主党は22日から反対を続けてきた。しかし、民主党の意見を組み入れた形で修正したため、同党は法案の賛成に回る意向を示した。実現への期待が広がったことでドル買いとなった。

 ドル円は24日、25日と111円70銭前後を試した後、一転して下げ基調が強まる展開に。景気対策法案への期待感と世界的な不透明感からのドル需要拡大によるドルのひっ迫感が相場を押し上げていた。しかし、景気対策法案の成立がほぼ確定的となったところで、いったんのピークに。米FRBの積極的な資金供給姿勢がドルのひっ迫感を後退させたことも、ドル売りが入りやすい地合いに繋がった。

 26日発表の米新規失業保険申請件数(用語説明1)が急増するという予想が事前に広がったこともドル売りを誘った。同指標は今年に入って20万件から22万件の範囲で推移していた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大による失業者の増加を受けて、19日に発表された3月8日から14日の週の数字が28.1万件(速報値ベース、その後28.2万件に改定)まで上昇していた。その後企業のレイオフが一気に拡大したこともあり、150万件を超えるような数字になるのではとの思惑が広がりドル売りに。一部金融機関は300万件という数字を予想していた。これまでの過去最大が第2次石油ショックの影響を受けた1982年10月の69.5万件。リーマンショック時の最大の数字が2009年3月の66.5万件であり、それらの記録をはるかに超える数字が見込まれたことで、ドル売りにつながったと見られた。なお、結果は328.3万件と予想をさらに超える数字となり、米雇用市場の深刻さが意識された。

 週末にかけてドルは一段安となった。米国内での感染拡大が進み、感染者数で中国やイタリアを抜いて世界最悪となったことが懸念材料となった。ドル円は107円台に値を落とす展開に。

 ドル安が進む中、ユーロドルは上昇する展開に。先週初めに1.0630近辺と直近の安値を付けた後、一転して買い戻しが優勢に。週の半ばまでは1.09ちょうど近辺で頭を抑えられたが、その後はドル全面安基調の中でユーロ高ドル安が進み、1.11台まで上値を伸ばした。

 ECB関係者から無制限でのQE拡大につながるOMT発動に向けた姿勢が伝わったことも、ユーロの流動性への安心感から、ユーロ買いにつながったとみられる。

 ポンドドルもユーロドル同様に週の後半にかけて買いが強まり、先週初めの1.14台から1.24台後半まで大きく上昇。ジョンソン首相が新型コロナウイルスの陽性反応との報道に売りが出る場面も、限定的な動きにとどまった。

今週の見通し

 神経質で不安定な展開が続く。

 新型コロナウイルスの感染拡大の動きが止まらず、世界経済への悪影響も懸念される中で、リスク警戒の動きが広がっている。

 米FRBの量的緩和と積極的な買いオペによる短期資金供給の動きを受けて、ドルのひっ迫感は薄れてきており、先週はリスク警戒の動きがドル買いではなく円買いにつながる展開が見られた。

 もっとも、週末に格付け大手ムーディーズが南アをジャンク級に格下げし、見通しをネガティブとするなど、新興国にとって厳しい状況が広がっている。南アの格付に関してはS&Pとフィッチがともに2017年にジャンク級に引き下げており、三大格付会社すべてでジャンク級となった。これにより南ア国債は世界国債インデックス(用語説明2)からの除外が決まり、南アランド売りドル買いの動きが見込まれる。

 他の新興国も同様に厳しい状況が見込まれる中で、新興国の中で信用力が低い自国通貨を売りドルを買う動きが再び強まる可能性があり、売り買いが不安定に交錯する展開もありそう。

 また、先週話題となった米新規失業保険申請件数を受けて、米国の雇用状況に対する注目度も高まっている。3日に発表される米非農業部門雇用者数は事前予想が前月比10.0万人減と、2010年以来となるマイナスが見込まれている。米雇用市場の急速な悪化が印象付けられるような数字が出ると、ドル売り円買いの動きも。

 ドル円は105円から110円の広いレンジの中でどちらにも向かう可能性のある不安定な相場展開に。

用語の解説

新規失業保険申請件数 米国の失業者が失業保険給付を初めて申請した件数を、米労働省雇用統計局が毎週集計し、集計期間の翌木曜日に発表するもの。速報性の非常に高い指標で、米雇用統計の前哨戦として注目されている。
世界国債インデックス FTSE World Government Bond Index(WGBI)。20か国以上のソブリン債の動向を示す債券市場の代表的な指数。債券市場における主要なベンチマークとして利用されている。かつては米調査会社シティグループ・インデックスが算出しており、シティ世界国債インデックスと呼ばれていた。2017年にロンドン証券取引所グループが買収し、同グループのFTSE インターナショナル(ブランド名FTSE Russell)が算出していることから、FTSE世界国債インデックスと呼ばれる。

今週の注目指標

米ADP雇用者数(3月)
4月1日21:15
☆☆
 金曜日の米雇用統計(3月)が2010年以来のマイナスになるのではと注目される中、前哨戦となるADP雇用者数(3月)にも注目が集まる。予想は-15.0万人と前回2月分の+18.3万人から一気の悪化が見込まれている。予想をさらに超える弱い数字が出てくると、3日発表の米雇用統計自体の見通しにも影響しドル売りに。ドル円は107円割れの可能性も。
米新規失業保険申請件数(3月22日-28日)
4月2日21:30
☆☆
 前回予想を超えて328.3万件と大きな悪化を見せた新規失業保険申請件数。米国内での新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、レイオフの動きが継続しており、今回も300万件超えの数字が見込まれている。前回をさらに超えるような数字が出てくると、米雇用市場の深刻さが意識される形でドル売り円買いも。ドル円は106円台に向けた動きも。
米雇用統計(3月)
4月3日21:30
☆☆☆
 新型コロナウイルスの感染拡大が広がる中、3月に入って米国の雇用市場が急速に悪化しており、雇用統計が注目されるところに。今回の非農業部門雇用者数のデータは3月8日から14日のもので、レイオフなどの動きが強まった15日以降の状況を反映していない。そのため、新規失業保険申請件数ほどのインパクトのある数字は考えにくい。とはいえ状況はその時点でもかなり厳しいものに。事前予想は-10万人と2010年9月以来の前月比マイナスが見込まれている。予想前後もしくはそれ以上に弱い数字が出てくるとドル売りも、ドル円は106円割れの動きも。

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