2020年04月06日号

(2020年03月30日~2020年04月03日)

先週の為替相場

ドル高期待も警戒感継続

 3月30日からの週は、週の半ばまではドル売りが優勢も、その後ドルの買い戻しが入る展開となった。

 世界で新型コロナウイルスの感染が拡大し続けている。米国での感染者数が中国を抜いて世界最大となり、各地でロックアウトが行われる中で、ドル売りの動きが広がった。

 先月第2週ごろから見られた、世界的なリスク警戒感からのドルキャッシュ需要拡大によるひっ迫感に関しては、米FRBが海外中銀に対してドル供給の拡充方針を示したことで落ち着いた。リスク警戒が素直にドル売りにつながりやすくなった面も。

 28日にトランプ大統領がニューヨーク州、ニュージャージー州、コネチカット州の一部に対して事実上の封鎖につながる検疫強化をCDC(用語説明1)に依頼。各州知事からの強い反発で翌日には断念というから流れも、ドルに対する警戒感につながった。

 ドル円は1日の海外市場で一時107円を割り込む動きに。米国での死者数が20万人を超えるとの見通しが報じられ、警戒感からのドル売り円買いに。

 もっともその後はドル買いの動きに。原油安の要因となったサウジアラビアとロシアとの対立について、トランプ大統領が前向きな動きが期待されるとツイートしたことなどが安心感に。

 週末の米雇用統計が予想を大きく超え、非農業部門雇用者数が70.1万人の大幅減少に。失業率も4.4%に大きく悪化したが、市場への影響は限定的。ドル買いの流れが続き、ドル円は108円台での推移に。

 ユーロドルは週の初めの1.11台から1.07台に。ユーロ共同債をめぐって、反対派のドイツ・オランダ・オーストリアと、積極導入を目指すフランス・イタリア・スペインなどとの対立が強まっており、市場の警戒感を誘っている。

 ポンドは週後半まで対ドルでもみ合いが続いたが、週末にかけて売りが優勢に。ユーロドルの下げに押されたことに加え、ドル全面高の動きに押された面も。新型コロナウイルスの陽性反応を示しているジョンソン首相の健康問題なども重石。

今週の見通し

 当面は不安定な動きが続く。

 新型コロナウイルスの感染状況をにらみながらの展開。米国での感染者数が30万人を超え、世界全体の約四分の一を占めるなど被害が拡大する中で、神経質な動きを続けている。

 週末にトランプ大統領は、新型コロナウイルスでの死亡者数が世界大戦時を上回る可能性があると警告(第2次大戦時の米国の死亡者数は40万人超)。もっとも、死亡者数の増加ペースが鈍化したとの報道もあり、今後の状況が注目されている。

 米FRBによる積極的な資金供給オペの実施や、外国中銀に対するドル資金供給対応の強化を受けて、ドルのひっ迫感が後退しており、リスク警戒が強まる流れではドル売り円買い、警戒感が後退するとドル買い円売りの流れに。

 欧州での感染者数の増加が鈍化傾向にあるなど、ピークアウトが近づいてきていると期待される中で、ドル円は上方向の期待が強まっている。

 もっとも、先行きはまだ不透明。感謝数の増加ペースは二番目の山が来る可能性も十分あり、積極的なドル買いにも慎重姿勢か。

 ドル円は大きな振幅を交えながら110円を意識する展開か。

 ユーロはユーロ共同債の発行やESM(用語説明2)の活用について慎重派のドイツ・オランダと、積極利用したいイタリア・スペイン・フランスなどとの対立が激しく、市場の警戒感を誘っている。

 世界の感染者数状況をみると、米国に次いでスペインが世界2位、イタリアが3位、ドイツが4位、フランスが5位と欧州の感染者拡大が深刻となっている。そうした中で、ユーロ共同債について、将来的な負担につながるドイツはかなり慎重な姿勢。ただ、イタリアやスペインはこうした緊急避難的な制度を活用しないと、経済的な損失があまりにも大きいという事情があり、落としどころが難しい。

 当面は不安定な状況が続きそう。7日に予定されているユーログループで何らかの合意が見えないようだと、ユーロドルは1.05台をトライする動きも。

用語の解説

CDC アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)のこと。米保険福祉省が所管する感染症対策研究所。本部はジョージア州アトランタ。米国市民に対する健康と安全保護を主導する立場から、疫病の予防、管理などに対する活動を行う連邦機関。立場上は一研究所であるが、8000億円を超える連邦予算と14000人以上の人員を擁する大きな組織となっている。
ESM 欧州安定化メカニズム(European Stability Mechanism)のこと。2009年12月に発覚したギリシャの債務問題を発端としたギリシャショックと欧州金融市場の混乱を受けて、2010年6月に時限的な危機対応メカニズムとしてEFSF(欧州金融安定ファシリティ)が設立された。その後、ESFSを移管する形で恒久的なユーロ加盟国の財政危機に対するファイアウォールとして2012年9月にESMが設立された。

今週の注目指標

ユーロ圏財務相会合
4月7日
☆☆☆
 EU加盟国のうち、ユーロに参加している国による非公式会合で、ユーログループと呼ばれている。3月16日と26日に行われた会合では、ユーロ圏共同債について、発行を求めるイタリア、スペイン、フランスと、発行に反対するドイツ、オランダ、オーストリアで意見が分かれ、結論が出せなかった。また、イタリアなどが強く要望しているESMの活用についても、オランダが強く拒否しており、こちらも結論が出せなかった。こうした状況を受けて7日にも会合が予定されている(感染拡大もあり、会合はいずれもテレビ会議)。ドイツが一度だけの発行であればとユーロ共同債を消極的に認める可能性が指摘されており、その場合ユーロドルは1.10を目指す可能性も。
OPECプラス
4月9日
☆☆☆
 OPECとロシアなど非OPEC主要産油国との会合であるOPECプラス。OPECの代表格であるサウジアラビアと非OPEC産油国の代表格であるロシアが、減産方針をめぐって対立したことが、このところの原油安の大きな要因とされている。もっとも感染拡大で経済活動が低迷したことによる原油需要の減少もあり、対立解消に向けた動きも進んでいるとみられる。何らの合意がまとまりNY原油が上昇を見せるようだとドル買い円売りに。ドル円は110円超えも。
米新規失業保険申請件数
(3月29日-4月4日)
4月9日21:30
☆☆
 直近2回の新規失業保険申請件数は330.7万件(速報時328.3万件)、664.8万件と、2週で約1千万件の新たな失業者が出る形となり、米国の雇用市場の深刻さが意識された。今回の予想は500万人と前回よりは低いものの、相当な高水準。米景気の鈍化懸念を誘い、ドルにとっては売り材料となる。ドル円は108円割れを意識する展開も。

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