2020年04月27日号

(2020年04月20日~2020年04月24日)

先週の為替相場

大荒れとなったNY原油先物市場をにらむ展開

 4月20日からの週は、NY原油先物市場が大荒れとなり、市場を驚かせる週となった。

 週明けのNY原油先物市場は5月限が史上初めてマイナスを付けるなど未曾有の波乱相場となった。新型コロナウイルスの影響による需要減で値を落としているNY原油先物は、17日のNY市場で18ドル台まで下落して取引を終えると、週明けに下げが加速。21日の取引最終日を前に在庫施設の飽和が懸念されての投げ売りが入り、時間外市場で11ドル台まで下げると、NY市場で売りがさらに加速しマイナス圏に。その後はパニック的な売りが広がり、一時マイナス40.32ドルまで暴落する展開に。

 5月限は結局プラス圏を回復し10ドル近辺で終了も、NY原油の受け渡し地区であるオクラホマ州クッシング地区(用語説明1)の貯蔵施設の余裕がないことなどが懸念されており、中心限月となった6月限が大きく値を落とし、一時6.5ドルを付けた。これを受け、20日の5月限の下落時には取引最終日を前にした原油市場だけの特殊な動きとみていた他市場も警戒感を強め、株安とともに為替市場は不安定な動きに。リスク警戒の円買いと、ドル需要ひっ迫感からのドル買いが交錯する展開となった。

 27日の日銀金融政策決定会合で日銀が国債の無制限購入などの積極的な追加緩和に向かうとの報道がドル買い円売りを誘い、23日の市場で108円台を付ける場面も見られた。もっとも、108円台での買いには慎重で、すぐに107円台に値を落とすなど、107円台でのレンジ取引が週を通じて取引の中心となった。

 ユーロドルは振幅を交えながら若干頭の重い展開。週の前半は欧州各地でロックダウン緩和の動きが広がるなど、新型コロナウイルスに対する懸念後退の流れもありしっかり。21日の独ZEW景況感指数が予想外にプラスとなったことなどもユーロ買いを誘った。もっとも1.09手前の売りに頭を抑えられ、上値は限定的。

 22日のECB理事会緊急会合で、資金供給オペにおける担保となる債券について4月7日時点でジャンク級でなければ、その後の格付けが必要最低要件を2段階下回っても引き続き受け入れの対象になると発表。

 イタリア債の受け入れなどを意識したとみられるECBの対応にユーロ売りドル買いの動きが強まり、その後はユーロ売りの流れに。

 さらに欧州PMIが軒並み予想を超える悪化となりユーロ売りが強まって、週末には1.0720台まで値を落とす動きが見られた。

 ユーロ円もユーロ安の流れに押されて週前半の117円台から115円50銭台まで一時値を落としている。

今週の見通し

 新型コロナウイルスの動向をにらむ展開が継続。欧米での感染者数拡大のピークは過ぎたとみられており、ロックダウン緩和に向けた動きと、その影響を確認する展開に。

 感染拡大の先行きが見えない状況が一歩改善されたことで、パニック的な動きは為替・株式などの市場では抑えられており、ドル円はレンジ取引が中心に。

 リスクはNY原油先物市場。21日に取引が終了した5月限が一時マイナスとなったことは市場に衝撃を与えた。需要減による在庫施設の飽和が背景にあり、米国の多くの地域がロックダウンとなっている中で、当面は状況の改善が難しい。生産調整が進んでいるものの、需要の減退の方が大きく、当面は市場が不安定に。

 米国やカナダでは、シェールオイルやオイルサンドの油田がほとんどで採掘コストが高く、採算割れが見込まれている。こうした状況が長期化することで、株式市場などへも悪影響が見込まれ、リスク警戒の動きが広がると、ドル円などに対する影響も大きくなる。

 当面はリスク警戒から頭の重い展開か。107円台でのレンジ取引を中心に次の方向性を探りながらも、やや下方向を意識。

 なお、今週は日本、米国、ユーロ圏で政策会合が予定されている。日銀は27日の会合で3月に続いて追加緩和を決定。先月から積極的な資金供給策をたびたび実施している米FOMCは、フォワードガイダンスを通じて、緩和姿勢を強調するなどの動きに。ECBは先月導入したPEPP(用語説明2)の増額を中心とした追加緩和へ。各中央銀行とも緩和姿勢を強めてくるとみられる。

 上記3カ国だけでなく、世界中の中央銀行が緩和姿勢を強めており、それだけでは大きな材料となりにくい。ただ、金融緩和が不十分とみなされる通貨や、逆に積極的な緩和策をとっているとみられる通貨に影響が出てくる可能性も。

 各国の結果と市場の反応を注視したい。ドル円に関しては新型コロナウイルス問題の前から積極的な緩和を行っていた分、新規の緩和余地が小さい日銀の追加策が不十分とみられて円買いが強まる可能性がやや高そう。106円台に向けた下げを意識。

用語の解説

オクラホマ州クッシング地区 一般的にNY原油先物市場と呼ばれているニューヨークマーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されるWTI軽質スイート原油(Light Sweet Crude)先物取引の受け渡し地区。多くの生産地からのパイプラインがつながる大規模な集油所のあるオクラホマ州にある人口7千人ほどの小さな市(ちなみに米国にはクッシングという名前の市が多数あるため、オクラホマ州を付けるのが一般的)。同地区の貯蔵施設容量は約7600万バレルとされており、22日付のEIA週報では、そのうち5970万バレルが貯蔵済となっている。
PEPP パンデミック緊急供給プログラム、Pandemic emergency purchase programme (PEPP) 。3月18日のECB理事会で導入を決定した新型コロナウイルスの感染拡大に対応した7500億ユーロ(約89兆円)規模の資産購入プログラム。既存の資産購入プログラム(QE)に比べて、適格資産カテゴリーが広くなっており、金融機関以外のCPなども対象となるほか、現行ルールでは認められていないギリシャ国債も購入対象に含められている。少なくとも2020年末までは実施予定で、その後は危機のフェーズを確認しながらの施行となる。

今週の注目指標

日銀金融政策決定会合
4月27日
☆☆☆
 先月16日にETF買い入れの倍増、社債・CPの購入増額などの追加緩和を実施した日本銀行。FRBなどが積極的な緩和政策を行う中で、もともと緩和政策を継続していた日銀は、現状からの政策金利の下げ余地が少ない上、相当規模の量的緩和を実施していることもあり、新型コロナウイルスの新規対応としてはインパクトにやや欠ける感があった。今回の会合では、新型コロナウイルスを受けて緊急事態宣言が出され、自粛要請などが長期化する状況下、日本政府が一人当たり10万円の一律給付などの緊急経済対策を実施する中で、日銀も追加緩和に踏み切った。現状年80兆円となっている国債買い入れ枠の上限撤廃を決定。社債・CPの購入額も約3倍に増額した。こうした積極的な緩和策は安心感につながり中期的な円売り材料に。
米FRB政策金利
4月30日03:00
☆☆☆
 米FRBは3月に入って3日に0.5%、15日に1.0%の緊急利下げを実施。15日の会合では少なくとも国債を5000億ドル、MBSを2000億ドル買い入れる量的緩和を実施。さらに23日に国債・MBSの買い入れを無制限に、社債などの購入も決定と、量的緩和を拡充。4月9日には信用格付けが3月22日まで投資適格級であれば、その後の格下げで投資不適格(ジャンク債)に落ちていても買い入れを行うことや一般企業への間接融資も決めるなど、これまででは考えにくい緩和策を次々に打ち出してきた。今回のFOMCでもフォワードガイダンスによる緩和姿勢の強調などによりその効果を強めてくるのではとの思惑が広がっている。FRBの強い姿勢は経済的に厳しい状況にある新興国からのドル需要拡大などを受けたドルのひっ迫感を後退させ、ドル売りの材料に。ユーロドルが1.09を試すきっかけになる可能性も。
ECB理事会
4月30日20:45
☆☆☆ 
 ECBも3月12日に量的緩和を拡大。さらに3月18日に新型コロナウイルスの感染拡大に対応したPEPPとして7500億ユーロの資産購入プログラムを導入した。さらに今月に入って7日に信用枠を超える引き出しの際の担保条件などを緩和。さらに22日に資金供給オペの担保基準を一段と緩和して、ジャンク級に引き下げられた債券でもジャンク級の上から2番目までであれば担保として認めるなど施策を強化している。さらに30日の会合でPEPPの5000億ユーロ積み増しという形での追加緩和が見込まれている。日本同様に金利の引き下げ余地が小さいECBとしては、かなり踏み込んだ対策という印象で、実施されるとユーロに対する安心感に。短期的には緩和を受けた売りが出る可能性も、中期的にはユーロ買い要因で、ユーロドルは1.09から1.10に向けた動きも。

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