2020年05月18日号

(2020年05月11日~2020年05月15日)

先週の為替相場

ポンド売り目立つ展開

 11日からの週、ドル円は週の序盤にドル高円安が強まる場面が見られたが、その後は値を落とすなど動きが続かず。新型コロナウイルスの発生について米国が中国に対する批判を強め、米中関係の悪化が懸念される状況に。リスク回避の動きがドル需要につながる形で対欧州通貨を中心にドル買いも、ドル円に関してはリスク回避の円買いと相殺され、一方向の動きが続かなかった。

 週の序盤はドル買いが優勢。8日の米雇用統計で雇用者数の減少が予想を下回ったことを受けたドル買いの流れが続き、ドル円は107円70銭台まで。しかしその後は調整の動きが優勢となり106円台に値を落とす展開となった。

 米中関係の悪化懸念に加え、中国が豪州の4つの食肉加工場からの輸入を禁止したことで、豪中関係の悪化が懸念されたことや、NZがWHO総会への台湾のオブザーバー参加に賛成する意向を示したことに中国が反発したことによるNZ中関係の悪化懸念などが、リスク警戒の動きを誘った。

 その後、週の後半にかけてはドルの買い戻しが優勢となった。トランプ大統領が「強いドル(用語説明1)を持つのによい時期だ」と強いドルを支持する発言を行い、ドル買いの動きに。注目されたパウエルFRB議長の講演で、マイナス金利について「現時点では検討していない」と否定的な姿勢を示したこともドル買いに寄与した。ドル円は107円台を回復して週の取引を終えている。

 ユーロは対ドルで売りが出る場面が見られたが、こちらも続かず。ドイツ憲法裁判所がECBの量的緩和政策について一部違憲とした判断をめぐる混乱がユーロの重石に。EU司法裁判所(用語説明2)はECBに対する判断はEU司法裁判所のみが管轄すると、ドイツ憲法裁判所を批判している。

 ポンドはユーロ以上に売りが目立った。ユーロ圏各国と比べて英国の新型コロナウイルスからの回復に遅れが見られること、英国とEUとの通商交渉が難航していることなどがポンドの重石となっている。ポンドドルは週初めの1.24台から1.21ちょうど近くまで値を落として週の取引を終えている。ポンド円も133円台から130円を割り込む動きに。

 NZ中銀は13日の金融政策理事会で量的緩和政策(LSAP)を従来の330億NZドルから600億NZドルにほぼ倍増した。政策金利については現行の0.25%に据え置いたが、声明で利下げを含むあらゆる手段をとる可能性を示した上に、バスガンド副総裁がNZの金融機関に対して年内のマイナス金利への準備を求め、今後のマイナス金利導入が強く示唆されたことで、NZドル売りに。NZドル円は週前半の65円台後半から63円台半ばに。

今週の見通し

 ドル円は方向性を探る展開が見込まれる。日本の39県で非常事態宣言が解除されるなど、新型コロナウイルスによる行動制限が世界的に緩められる中、次の方向性を模索する動きが続いている。

 第2波への警戒感、米国が新型コロナウイルスの発生元としての対中批判を強めていることなどがリスク警戒を誘っていること、経済的な影響のピークはまだ先であることなどから、ドル買い円売りには慎重。一方で対欧州通貨、オセアニア通貨などでドル買いの流れが続いており、積極的なドル売り円買いも見られずという動きに。

 ドイツ憲法裁判所のECB量的緩和違憲判断を受けての混乱や、第2波への警戒感の強さから、ユーロは対円でも買いにくい状況。ポンドは英国がユーロ圏と比べても経済活動再開の動きが遅いこと、ここにきてこれまで拒否してきたマイナス金利導入の可能性が英中銀内部から出てきたことなどを受けて、ユーロ以上に売りが出る展開と、欧州通貨が買いにくく、ドルと円に買いが入る展開が続きそう。

 ドル円以外に対しては円高が優勢。ポンド円を中心に下値をトライする流れが続きそう。ポンド円のターゲットは126円台半ば。ここを割り込むと3月の円高進行時に付けた124円ちょうど近い水準が意識される展開もありそう。ユーロ円もユーロ安円高を意識。7日に付けた114円40銭近くの水準がポイントになりそう。

 ドル円はドル買いと円買いに挟まれて106円台半ばから107円台半ばを中心としたレンジ取引が続きそう。リスクはやや下方向で106円割れも意識。対新興国通貨などを中心にドルのひっ迫感が再び強まるような展開が見られると、ドル全面高の可能性もあるだけに柔軟に状況を見ていきたいところ。

用語の解説

強いドル レーガン大統領がレーガノミクスと呼ばれた自身の経済政策の中で、強いアメリカを示すものとして当初通貨高政策をとったことが始まり。その後、クリントン政権下でのドル安基調に対して、当時のルービン財務長官が「強いドルは米国の国益」と主張したことが、強いドルを政策目標として明確に打ち出した最初といわれる。通貨高は海外に対する購買力の上昇につながるが、一方で輸出には不利となるため、その後の通貨当局者はドル安が警戒される局面で口先介入の一つとして利用している面もある。
EU司法裁判所European Court of Justice(ECJ)。ルクセンブルクにあるEU基本条約やEUに関する法令などを管轄するEUの最高裁判所に当たる機関。1952年に設立された。当初は限定的な権限しか有していなかったが、1999年のアムステルダム条約、2009年のリスボン条約などにより権限が強化された。

今週の注目指標

パウエルFRB議長議会証言
5月19日23:00
☆☆☆
 米国のパウエルFRB議長が、ムニューシン財務長官とともに上院銀行委員会で証言を行う。これまでの緩和政策の説明に加え、今後の姿勢も示される見込み。13日に行われた講演の中で議長はマイナス金利について「現時点では検討していない」と否定的な姿勢を示した。ただ、景気回復を主眼とする議員から、厳しい圧力が示される可能性がある。議長から将来的な可能性なども含め前向きな発言が出てくるとドル売りの動きが強まりそう。ドル円は106円割れを試す可能性も。
トルコ中銀政策金利
5月21日20:00
☆☆☆
 先月の理事会で市場の大方の事前予想を超える1.00%の利下げに踏み切ったトルコ中銀。同国の消費者物価指数が前年比+10.94%となっており、実質金利はかなり大きくマイナスとなっている。こうした状況を受けてトルコリラは一時大幅に値を落とし、対ドル、対円での史上最安値を更新する動きとなった。その後取引規制への思惑などで値を戻しているが、警戒感が継続している。こうした状況ではあるが、エルドアン大統領の低金利志向もあり、今回も利下げ見通しが広がっている。予想は0.50%の引き下げ。ただ、それ以上の利下げや据え置きを見込む動きもあり、見方は割れている。予想を超える利下げが実施されれば、リラ売りにつながりそう。7日に付けた14円60銭台を意識する展開に。
南ア中銀政策金利発表
5月21日
☆☆☆ 
 4月14日に臨時会合を開き、政策金利を1.00%引き下げた南ア中銀。今年3回目の利下げにより、政策金利は同国として過去最低水準となる4.25%となった。新型コロナウイルスを受けたロックダウンを当初予定した4月16日ではなく4月30日まで延長したことを受けての追加緩和。その後5月1日より警戒レベルを一つ引き下げることが発表されたが、依然として外出制限、多くの産業での在宅勤務、国境の封鎖などを伴う厳しい規制が続けられており、今回の会合でも追加緩和が見込まれている。0.50%の利下げで3.75%にするとの見方が大勢だが、予想は1.00%の引き下げから据え置きまで分かれており、予断を許さないところ。予想を超える利下げ幅が示されると、実質金利のマイナス化が意識され南アランド売りの動きも。ランド円は5円50銭の節目を試しに行く可能性も。
 なお、発表時刻は会合終了後で不確定であるが、22時10分前後がほとんど。

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