2020年05月25日号

(2020年05月18日~2020年05月22日)

先週の為替相場

米中関係の悪化懸念広がる

 18日からの週、ドル円は107円台でのレンジ取引となった。107円台前半で始まった後、19日に108円台まで上昇する場面も見られたが、大台を超えての買いには慎重で、すぐに107円台に戻すと、その後は107円台での取引が続いた。

 106円台を付けた15日金曜日の流れもあり、ドル安円高気味に始まった週明け18日の市場だが、NY原油先物が大きく上昇したことなどを好感して、その後はリスク選好での円売りが強まる展開となった。

 リスク選好での円売りのあと、ドル売りも出たためドル円での上昇は107円台半ばまでとなったが、豪ドル円などの買いが広がる展開に。

 19日になって、日銀が22日に2012年以来となる臨時会合を開催すると発表したことで、追加緩和への期待感もあり、円売りの動きが加速。ドル円は108円台を付ける動きに。英雇用統計が予想以上に強くポンド円での買いが出たことも、ドル円を支える格好に。もっとも108円台での買いには慎重ですぐに107円台に値を戻してのもみ合い。

 その後は107円台でのレンジ取引が続いた。ユーロ圏経済指標の堅調な数字などを好感してユーロドルが上昇し、一時1.10台までユーロ高ドル安が進んだことで、ドル全面安基調が広がったことなどもドル円の重石。

 週末の日銀臨時会合は、事前報道通り中小企業に対する新たな資金繰り支援制度の導入を決定。すでに織り込み済みとして、ドル円は売りが出る展開に。22日から開催された中国の全人代(用語説明1)で、毎年示される経済成長見通しの目標数値が示されなかったことや、米国などが反対している香港に対する国家安全法(用語説明2)の導入を協議すると示したことで警戒感が広がり、週末にかけてはリスク警戒の動きに。

 リスク警戒の円買いが広がる中で、ドル円は一時107円台前半まで下落も、値幅は限定的。週の半ばにかけて買われていた欧州通貨が対ドルで売られ、クロス円も売りが優勢に。118円台半ばを付けていたユーロ円は117円00前後まで値を落とした。

 ユーロドルは先週初めに1.08を割り込む動きが見られたが、5000億ユーロ規模の復興基金計画への期待感などから持ち直し、1.09台を回復。独ZEW景況感指数の予想以上の上昇、ユーロ圏PMIの改善などが好感され、その後1.10を付ける動きが見られた。

 週末にかけてはドル高の動きもあって値を落とし、1.09ちょうど前後まで。

今週の見通し

 ドル円は上下ともに動きにくい展開が続いている。

 米中関係の悪化懸念が重石。中国の香港に対する国家安全法の導入審議が全人代で行われる中、週末には香港で同法反対の大規模デモが行われ180人以上の逮捕者が出た。米国は同法案が成立した場合、中国に対して制裁措置を取る意向を示している。一方で中国は米国などに対して内政干渉であると批判しており、両国間の溝はかなり深まっている。

 リスク警戒感が広がる中で、ドル円には動きにくさも。先週前半まで買いが優勢となった欧州通貨やオセアニア通貨の対ドルでの売りが強まるようだと、クロス円の下げがきつくなる可能性も。

 ドル円は107円台でのレンジ取引を中心に次の流れをにらむ展開か。108円台が重いことから、リスクはやや下方向で106円台へ値を落とす可能性も。クロス円は下値リスクを意識する展開が見込まれる。ユーロ円は117円をしっかり割り込むと115円台への動きも。ユーロドル、ポンドドルなどは下値を意識。ドル高の流れに加え、ユーロドルは先週いったん1.10台へ戻したことで上値一服感が出ており、売りが出やすい面も。1.0800が目先のターゲット。

 豪ドルなど資源国通貨も対ドルを中心に売りが出そう。米中関係の悪化懸念がNY原油の買い戻し基調に水を差しそうで、上値が重い展開に。

用語の解説

全人代 中国の国会にあたる全国人民代表大会のこと。1954年に制定された中国人民共和国憲法(54年憲法)に基づいて設立され、現行憲法(82年憲法)でも毎年の開催が明記されている。中国の最高権力機関で、行政権、司法権、検察権に優越する。国家元首なども全人代によって選出される。例年3月初旬からの開催となっていたが、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で約2か月半遅れとなる5月22日からの開催となっている。例年10日間ほどの開催であるが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、7日間に短縮され28日午後に閉幕の予定。
国家安全法 香港の憲法にあたる基本法(1997年制定)では、中国政府に対する反逆・分離・扇動・転覆を禁止する国家安全法を制定することが定められている。しかし、同法の施行を試みた2003年に大規模デモが発生し、施行を見送ったことをはじめ、これまでも何度か導入を試みるも施行が見送られてきた。こうした状況に対し、昨年香港で起きた大規模民主化デモなどを懸念した中国政府は、今回の全人代で基本法18条にある「付属文書3に記された全国的法律」は例外として香港でも実施されるという条項(国籍法や外交特権など)に国家安全法を組み込むことで、同法の香港に対する導入を図っている。全人代最終日の28日に採決予定。

今週の注目指標

米消費者信頼感指数(5月)
5月26日23:00
☆☆
 米国の民間調査機関コンファレンスボード(全米産業審議会)による消費者信頼感指数の5月分が26日に発表される。同指標は前回4月分が86.9と3月の118.8から一気に31.9ポイント低下し、水準的には2014年以来の低水準、落ち込み幅では第1次オイルショックが起きた1973年以来の水準を記録した。内訳をみると現在の状況を示す現況指数が166.7から76.4まで90.3ポイント落ち込み、過去最大の下落幅に。一方、今後の期待指数はプラス圏となった。米国でのロックダウン緩和が大きく進まない中、今回は前回並みの87.0が見込まれている。予想以上に改善が目立つと、今後への期待感からドル買いの動きも。ドル円が108円台にしっかり乗せるきっかけになる可能性。
米耐久財受注(4月)
5月28日21:30
☆☆
 28日21時半に米第1四半期GDP改定値と4月の耐久財受注が発表される。GDP改定値は速報値から大きくずれない限り相場への影響は限定的。耐久財受注は前回前月比-14.7%と2014年以来の落ち込みとなった。今回は-18.0%とさらに落ち込むとみられている。前回は航空大手ボーイングが発注キャンセルなどで大きく受注を減らしたことが背景にあり、輸送を除いたコアは-0.4%にとどまった。今回はその他の製造業でも受注が大きく減少しているとみられており、同コアも-15.0%まで落ち込む見込み。米経済の厳しい状況はある程度織り込まれており、予想前後であれば影響は限定的も、予想以上に落ち込みが目立つと、今後の米景気回復への懸念につながりドル売りも、ドル円は107円割れを意識。
米シカゴ購買部協会景気指数(5月)
5月29日22:45
☆☆ 
 前回4月のシカゴ購買部協会による景気指数(PMI)は35.4と、2009年3月以来11年1か月ぶりの厳しい数字となった。特に過去最大の落ち込み幅となった新規受注や、40年ぶりの低水準となった生産の厳しい数字が印象的に。今回は40.0と、好悪判断の境である50と比べてかなり低いものの、前回からは改善が見込まれている。全米の郡の中でもっとも多い7万人を超える新型コロナウイルスの感染者数を出しているクック郡(シカゴ市の一部)を含み、米国の中でも新型コロナウイルスの被害が著しいシカゴ地区でも景況感の改善が目立つと、ドル買いの安心感につながると期待される。ドル円は108円台後半を試す動きも。

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