2020年06月01日号

(2020年05月25日~2020年05月29日)

先週の為替相場

「ドル安・円安」の動きに

 25日からの週、ドル安円安の動きが優勢となった。ドル円はドル売りと円売りが相殺される形で、107円台での取引が続いた。

 新型コロナウイルスによる感染拡大が一部を除いて世界的に一服傾向を見せ、感染防止のための制限を緩和する動きが広がる中で、リスク選好の円売りと、ドルひっ迫感後退によるドル売りが広がった。

 7500億ユーロ規模の復興基金への期待感が買いを誘ったユーロの対ドル、対円での上昇が特に目立ち、ユーロドルは1.0870前後から1.1140台までの大きな上昇に。ユーロ円は117円10銭前後から119円90銭近辺への上昇を見せた。

 中国が28日の全人代最終日に香港に「国家安全法」を導入する方針を採択したのを受けて、米中関係の悪化懸念が広がったことや、ミネアポリスで始まった暴動(用語説明1)が全米規模に拡大していることなどがリスク警戒材料となったが、米株がしっかりした展開を見せていることもあり、円安の動きは継続した。

 ドル円はドル売りと円売りに挟まれて、107円台後半を中心とした狭いレンジでの取引を続けていたが、トランプ大統領が29日に中国に関する会見を行うと発表したこともあり、29日の東京市場からNY朝にかけてドル売り円買いの動きに。中国に対する制裁の強化を示し、米中関係の悪化がより深刻化するのではとの懸念が重石となった。

 もっとも107円台を維持しての動きとなったことで、その後ドル円は買い戻しが優勢に。トランプ大統領の会見ではWHOからの離脱が示され、中国に対しても強い批判を行ったが、具体的な制裁には踏み込まず、ドル円の買い材料に。107円90銭近辺まで上昇したドル円は、ほぼ高値圏で週の取引を終えている。

 マイナス金利への期待感などが一時広がっていたポンドは、その可能性に言及したことで市場の期待を誘ったホールデン英中銀チーフエコノミスト(用語説明2)が、議論と実行は別と、導入に消極的な姿勢を示したこともあり、週の前半に対ユーロでもポンド買いが入る場面が見られた。その後ユーロが復興基金期待で買われる中で、一転して対ユーロでのポンド売りが出て、週の後半には節目の0.90を超えて0.9050台まで上値を伸ばす場面があった。

今週の見通し

 ドル円はレンジ取引が中心もやや上方向に期待感。

 米国で最も新型コロナウイルスの感染被害が深刻なNY市(郡単位での新型コロナウイルスの感染による死亡者数は、NY市内の3つの郡が全米TOP3を占めている)で、今月8日からのロックダウン緩和が示されるなど、世界的に新型コロナウイルスの影響が少しずつ和らいできている。

 第2波への警戒感があるものの、ドル円にとっては基本的に買い材料。下がったところでは買いが入る流れが続きそう。

 各国中銀による積極的な金融緩和を受けて、株高の動きが続いていることも、ドル円、クロス円を支える材料に。

 復興基金期待で対ドル、対ポンドでも堅調な地合いを見せるユーロの対円での買いなどもドル円の支えとなっている。

 香港に対する国家安全法を巡る米中の対立、全米規模で広がるミネアポリス暴動などの懸念材料があり、上値を抑えられているものの、基調はドル買い円売りに。

 ドル円は5月19日につけた108.09が目先のターゲット。ここを超えると、4月につけた109円30銭台まで目立ったターゲットがなく、ドル買い円売りの流れが強く後押しされる可能性も。

用語の解説

ミネアポリスで始まった暴動 ミネソタ州ミネアポリスで、先月25日に黒人男性が偽札使用の疑いで警察に逮捕される際に、白人警官が男性の首を膝で押さえつけたことで、男性がその後死亡した事件に対する抗議デモ。当初は穏やかなデモであったが、その後過激化。少なくとも全米75都市で暴動が起きる事態となっており、多くの都市で夜間外出禁止令などが出されている。
ホールデン・チーフエコノミスト アンディ・ホールデン(Andy Haldane)英中銀チーフエコノミスト兼金融調査部門担当エグゼクティブディレクター。1989年ワーウィック大学で経済学修士取得後、英中銀に入行したプロパー。2014年6月1日より英中銀MPC(金融政策会合)委員。MPCは9名のメンバーのうち、5名が内部委員、4名が外部委員という構成になっており、現在は総裁、3名の副総裁、1名のチーフエコノミストで内部委員を構成している。金融調査部門でのキャリアから、英中銀の金融政策立案において、強い影響力を持っているといわれている。今月11日までが任期。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(5月)
6月1日23:00
☆☆☆
 前回4月分の同指数は41.5と、3月の49.1から大幅に低下。好悪判断の境となる50を大きく下回る水準となった。水準的には2009年4月以来、下落幅としては2008年10月以来となる。内訳をみると、構成項目の中でも重要視される生産と新規受注の落ち込みが大きく、特に生産は20ポイント以上低下して、1948年の統計開始以来最大の下落幅となった。在庫指数はやや改善も、好況によるものではなく、供給制限などによるものとみられ、総じて厳しい結果という印象。今回は前回から若干改善して43.5が見込まれている。依然として厳しい状況が続くが、各地で行動制限の緩和が進む中、期待以上の改善が見られるようだとドル買いも。ドル円が108円台に乗せるきっかけになる可能性がある。
米ISM非製造業景気指数(5月)
6月3日23:00
☆☆☆
 前回4月分の同指数は10.7ポイント低下し、11年ぶりの低水準である41.8となった。多くの施設・店舗が閉鎖されている影響で、雇用は前月から一気に17ポイント低下して30に。景況、新規受注と並び統計開始以来最低水準となっている。多くの地域でロックダウン緩和の動きが広がっていることもあり、今回は44.5と改善の見込み。ただ、地域によって緩和のスピードが違うだけに、ある程度はブレがありそう。予想を超える改善ならドル買いも、予想を下回り厳しい状況が続くとドル売りに。107円台からレンジが外れるきっかけになる可能性も。
米雇用統計(5月)
6月5日21:30
☆☆☆
 前回の非農業部門雇用者数は2000万人を超える空前の減少となった。今回も800万人の雇用減が見込まれている。部門別の雇用者数をみると、最も深刻な影響を受けたレジャー部門は、3月時点での雇用者の約半数が失業するという厳しい状態だった。ただ、さすがに同部門はここからのさらなる人員減の余地は少ないとみられる。小売りや医療・介護など他の減少が大きかった部門も、減らしやすいところは既に減らした状況とみられるだけに、前回からさらに800万人の雇用減は、米国の労働市場が相当に厳しい状況にあるという印象に。前回14.7%まで上昇した失業率は19.6%への上昇が予想されている。前回は労働者人口自体が643.2万人の減少となっており、今回もさらに同人口の減少が見込まれる状況(一般的に労働者人口の減少は失業率を低下させる)での失業率の20%近い水準への悪化は、深刻な雇用状況を印象付けそう。予想通りあるいはそれ以上に厳しい数字が出てくると、ドル円は106円台への下落が十分にありそう。

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