2020年06月08日号

(2020年06月01日~2020年06月05日)

先週の為替相場

衝撃的な雇用統計でドル買い

 1日からの週、ドル安・円安の流れが継続。さらに週末の米雇用統計が予想をはるかに超えた好結果となったことで、円安の動きが加速し、ドル円は109円台後半まで上昇する展開となった。

 先週前半、ドル円は107円台前半を付ける動きが見られた。ミネアポリスで白人警官が武器を持たない黒人男性の取り押さえに際して、首を膝で押さえつけて死亡させた事件を受けて始まった抗議デモが、全米各地で暴動に発展する中で、警戒感が広がった。

 もっとも先々週末の安値に届かず、株高などを受けて値を戻すと、その後はリスク選好での円安の動きが優勢となった。

 新型コロナウイルスの感染拡大懸念が一服し、この後の経済再生への期待感が広がる中でリスク選好での株高円安の動きが優勢に。ドル円を除くとドル安の動きが広がったが、ドル円では円安の動きがやや勝る格好となった。

 ユーロは7500億ユーロ規模の復興基金への期待感もあり、対ドル、対円で堅調な動きを見せた。

 2日の海外市場でこうした円安・ドル安・ユーロ高が加速。ロンドンフィックス(用語説明1)に絡んだ実需売りに加え、ドイツ政府が最大1000億ユーロ規模の第二次景気刺激策を模索しているとの報道などがユーロ買いの動きを誘った。

 ドル円はそれまで頭を抑えていた108円ちょうど近辺をしっかり超えてきたことで、ストップロス注文を巻き込んで108円台後半まで。

 その後も世界的な株高を背景にリスク選好での円安・ドル安・ユーロ高が続き、ドル円は109円台に。ユーロドルは1.12台半ばへ。

 ユーロは5日のECB理事会でPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)を市場の予想を超える6000億ユーロ規模で拡大するとの発表を受け、買いが強まる展開に。ユーロドルは、ミネアポリスでの抗議デモが全米規模で拡大していることを受けたドル売りもあり、1.13台半ばへ上昇、その後1.1380台まで。ユーロ円は先週初めの119円台半ば前後からECB理事会後に124円手前まで上値を伸ばし、その後124円40銭台まで。

 週末の米雇用統計は非農業部門雇用者数が750万人の減少予想に対して250万人の増加と、予想との乖離は前代未聞の1000万人規模の衝撃的な好結果となった。失業率も19%台への悪化予想に反して前回から改善した。

 この結果を受けて一気にドル高の動きが加速。ドル円は109円80銭台まで上値を伸ばした。ユーロドルは1.12台後半に。ユーロ円はユーロドルの売りとドル円の買いに挟まれてもみ合い。

今週の見通し

 ドル円は上値期待継続へ。

 5日の米雇用統計の好結果を受けて、リスク選好の動きが強まっている。ドル円は109円台後半を付けた後、110円手前の売りに上値を抑えられているが、流れはまだ上方向。

 米雇用統計の予想と結果の乖離はまさに衝撃だった。4月の統計では、レジャー・ホスピタリティ部門の雇用が3月時点で働いていた人の半分弱が失業するという極めて厳しい結果となったが、今度は一転して123.9万人増に改善。建設業の46.4万人増など、テレワーク(用語説明2)などが難しい業種での雇用回復が目立ち、経済の再開が本格化している状況が印象付けられた。

 こうした状況はドル円・クロス円の買いを誘いそう。株高が続く中、円安に加え、米経済の回復期待でドル買いが広がると、ドル円は上方向の動きを加速させる可能性も。

 新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に積極的な金融緩和が進み、米国も制限のない量的緩和が実施される中、資金余剰を背景とする株高の動きが当面続きそうなことも、ドル円、クロス円には買い材料か。

 一気の上昇となっただけに、ある程度の調整が入る可能性は十分にあるものの、基調はまだ上方向。目先のターゲットは3月後半の高値111円70銭近辺か。

 ユーロ円はさすがに調整も。円安・ドル安から円安・ドル高に動きがシフトすると、これまでのような勢いのある上昇は難しい。125円手前が重くなる可能性も。

用語の解説

ロンドンフィックス 東京市場での仲値にあたるもので、ロンドンフィキシングともいう。リフィニティブ社のWM/Reutersによって英国時間16時(日本時間では夏時間期:午前0時、冬時間期:午前1時)にベンチマークレートとして設定される。投資信託の値決めなど金融商品の取引に利用されるケースが多く、ロンドンフィックス前後で取引量が増えることがある。
テレワークTelework。離れた場所という意味の接頭語であるTele(離れた場所との通話をつなぐ電話:テレフォン、離れた場所に画像を届けるTV:テレビジョンなどと同じ)と仕事Workをつなげた造語。インターネットなど情報通信技術を活用して、自宅などオフィスから離れた場所で仕事を行うこと。リモートワークとも呼ぶ。用語自体は1973年に生まれており、概念自体はかなり以前からあったが、通信技術の発展で近年急速に広まった。

今週の注目指標

米消費者物価指数(CPI)(5月)
6月10日21:30
☆☆
 雇用の最大化と物価の安定が米FRBの二大責務。米FRBは新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、物価よりも雇用の回復に主眼を置く姿勢を示しているだけに、注目度はやや低くなっているが、先週の米雇用統計でサプライズがあった後だけに、物価動向も気になるところ。前回は総合・コアともに前月比がマイナス圏となったが、今回は前月比変わらずの水準まで回復すると期待されている。雇用同様に予想以上に回復が見られるようだと、ドル買いに勢いが出る可能性。ドル円を109円台でしっかり支える材料にも。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
6月11日3:00
☆☆☆
 3月の連続利下げで政策金利は事実上のゼロ金利に。3月に再開を決めた量的緩和についても、無制限・無期限の活用となっており、これ以上の追加緩和余地が少ないこともあり、今回のFOMCでは現状維持が見込まれている。ただ、今後に向けて短期だけでなく長期の金利も管理するYCC(イールドカーブコントロール)の協議があるのではとの期待が一部で広がっている。今回の実施は難しいとみられるが、将来的な可能性の示唆があるとドル売りの材料となる。可能性が強く示されれば109円割れの大きな調整につながる場面もありそう。
米新規失業保険申請件数(5月31日-6月6日分)
6月11日21:30
☆☆☆
 先週の米雇用統計の事前予想が結果と大きく乖離した要因の一つが、新規失業保険申請件数及び同時に出る継続受給者数の数字の改善が遅れていたこと。前回の新規失業保険申請件数は、パンデミックで3月中旬以降一気に件数が増えてから初めて200万件を下回ったとはいえ188万件と依然かなりの高水準。5月23日分までの継続受給者数は2148.7万人とその前の週の2083.8万人から増加するなど、改善が進んでいなかった。今回は新規失業保険申請件数が160万件、継続受給者数が2080万人と前回から改善見込みも、水準的には厳しいものに。雇用統計同様にサプライズ的な強さを見せるとドル買いも。ただ、申請を却下された人の再申請の増加などが報じられており、予想前後の数字が出てくる可能性が高そう。その場合失望感からややドル売りも。109円台後半でドル円の頭を抑える材料となりそう。

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