2020年06月15日号

(2020年06月08日~2020年06月12日)

先週の為替相場

円買いの流れも週末に値を戻す

 8日からの週、ドル円は大きく値を落とす展開となった。5日の米雇用統計が予想をはるかに超える好結果となったことを受けて109円85銭を付けたドル円は、週明けもその流れの中で、109円台後半で取引が始まった。

 しかし、110円手前の売りが厚く、上値進行を抑えられると、利益確定売りなどで下落。109円を割り込むと調整売りが一気に加速する形で108円台前半まで。

 9日、10日の米FOMCで、YCC(イールドカーブコントロール:用語説明1)が協議されるとの思惑が、米債利回りの低下を誘いドル売りにつながった。当初は円安の調整により軟化していたドル円は、ドル全面安の展開となる中、ドル安円高の流れになり、さらに値を落とす展開に。

 注目されたFOMCでは、YCCについてはFRB議長が「なお議論の余地」と発言するなど積極的な姿勢は見られなかったが、参加メンバーによる政策金利見通し(ドットプロット:用語説明2)の中で、2022年末までゼロ金利を維持する想定が示されたことなどを背景にドル売りが加速。

 ドル円は106円50銭台まで値を落とす展開に、週前半の円高局面でユーロ円の売りもあって1.1250割れを付けていたユーロドルは、ドル全面安の流れの中で1.1420台まで上昇する展開に。

 もっとも、週末にかけてはドル売りに調整が入る格好となった。木曜日のNY株式市場でダウ平均株価は1800ドル以上急落したが、週末は買い戻しで一時800ドル以上の反発。終値ベースでも477ドルの上昇を見せると、ドルも買い戻しが入る展開。

 ドル円は107円台半ばまで値を戻す場面が見られた。クロス円全般が重くなり、ユーロ円が値を落とす中で、ユーロは対ドルでも軟調。1.12台前半を付ける動きとなった。

 ユーロ円は先週初めの124円ちょうど前後から121円台まで値を落とした後、ドル円の上昇に122円台半ばを付け、その後のドル円の下げを受けて120円20銭台まで。ドル円の上昇もあって、121円台後半まで回復も、その後のユーロの下げに120円台に下落して週の取引を終えた。振幅が見られるも、総じて軟調な地合いが目立った。

今週の見通し

 ドル円は不安定な動きが見込まれる。

 5月25日にミネアポリスで警官が黒人男性の首を抑えつけて窒息死させた事件を契機に全米規模で広がる抗議行動。週末にはアトランタで警官が黒人男性を射殺する事件が発生。抗議行動がさらに強まるとの懸念が広がっている。

 また、中国北京で同市最大の野菜・青果供給センターを中心に新型コロナウイルスの感染者が見つかり、第2波への警戒感が強まっていることも、相場を不安定に。

 ただ、世界的にパンデミックによる制限緩和の動きが広がっており、経済の回復期待が膨らむ中で、ドル円、クロス円は下がったところで買いが出る流れも。

 世界的に金融緩和に踏み切る国が相次ぐ中で、余剰資金が株式市場などリスク資産に流れ込む動きも見られ、過度なリスク警戒のムードを抑える場面も。

 今週は交錯する材料を見極めながらの展開に。ドル円は110円手前の売り、106円台前半の買いが意識される状況となっており、その間で神経質な振幅がありそう。

 ユーロ円は120円の大台を維持できるかどうかが一つのポイントに。先月の114円40銭近辺から今月5日の124円40銭台まで約10円の上昇を見せた後、120円台まで値を落としているユーロ円。

 上昇に際して120円は上値抵抗水準として意識され、上抜け後は上昇の勢いが強まった。現状ではサポート水準として機能しており、大台を維持してもみ合うようだと、再びの上昇も。下に抜けると118円近くまでの下げとなる可能性も。

用語の解説

YCC イールドカーブコントロール。日本銀行が2016年9月の金融政策会合で導入した長短金利操作のこと。従来、中央銀行による金融政策で対象とされる金利は、翌日物金利など短期金利であるが、日銀はこの時の会合で、従来から実施していた日銀当座預金への0.1%のマイナス金利適用などによる短期金利の低め誘導だけでなく、国債買い入れオペなどを通じて、長期金利を誘導水準に抑える(2020年6月現在10年債利回りを概ねゼロ%程度)という政策を導入した。米FRBの場合、本来の政策金利はFF金利翌日物の誘導目標水準であるが、2年もしくは5年債の利回りをコントロールすることを検討するとの見通しが広がっている。
ドットプロット 年8回開催される定例の米連邦公開市場委員会(FOMC)のうち、半分の4会合で参加メンバーによる経済見通し(PROJECTION)が公表される。年末時点での経済成長率、失業率、物価、政策金利見通しの中央値及びレンジに加え、政策金利だけは、各メンバーの予想水準をドットでチャート上に示したものが提示される。これをドットプロット(もしくはドットチャート)と呼ぶ。各ドットが誰の予想であるかは明示されない。また、投票権のあるメンバーだけでなく、その年の投票権を持たない地区連銀総裁の予想も含まれている。

今週の注目指標

日銀金融政策決定会合
6月16日
☆☆
 15日、16日と日銀金融政策決定会合が実施され、16日15時半から黒田日銀総裁の会見が行われる。日銀は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、今年3月から国債買い入れの事実上の無制限化などの追加緩和を実施。先月は約8年半ぶりに臨時会合を実施して、企業の資金繰り支援策の強化を打ち出した。今回はこれまでの緩和策の影響を見極める局面との見方が強く、金融政策は現状維持の見込み。5月25日の緊急事態宣言の全面解除に続き、今月に入って東京アラートも解除されるなど、経済活動の再開が続く中で、黒田総裁が今後に向けてどのようなメッセージを示すかが注目される。超長期金利の上昇傾向が見られる中で、イールドカーブのスティープ化などへの言及があると円買いの材料に。ドル円は106円台に向けた動きを見せる可能性も。
パウエル議長議会証言
6月16日23:00
☆☆☆
 パウエルFRB議長が16日に上院銀行委員会、17日に下院金融サービス委員会で半期議会証言を行う。ハンフリー・ホーキンズ法(すでに失効済)に基づいて半期に一度行われる同証言。議長が議会に出席する機会はこれ以外にはほとんどないため、今後の金融政策を展望するうえで重要視されるイベントとなっている。基本的には今月のFOMC後の会見同様に今後について慎重な見通しを示すと予想されている。質疑応答の中でYCCについてのやり取りが行われる可能性が高く、それにより今後の実現可能性が高まればドル売りの動きに。ドル円は106円台前半にトライする可能性も。
英中銀金融政策会合(MPC)
6月18日20:00
☆☆☆
 18日20時に英中銀金融政策会合(MPC)の結果が発表される。政策金利は現状維持の見込み。量的緩和については現行の債券買い入れ枠が7月初めにはいっぱいになることから、前回の会合で拡大の見通しが示されており、今回の会合で1000億ポンド規模の拡大が見込まれている。拡大枠が予想を超える規模となった場合や、先月ホールデン英中銀チーフエコノミストが言及したマイナス金利の可能性について、より前向きな姿勢が示されるようだとポンド売りに。ポンド円は132円が最初のターゲットか。

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