2020年06月22日号

(2020年06月15日~2020年06月19日)

先週の為替相場

新型コロナ第2波警戒が円買い、ドル買い

 15日からの週、ドル円は後半にかけてややドル売り円買いの動きが強まった。

 6月5日に109円80銭台まで上昇したドル円は、その後一気にドル売り円買いの動きが強まり、11日に106円50銭台まで下落。その後少し戻し107円台半ばを回復して先週初めを迎えた。週初めのドル売り局面で107円台が維持されたこともあり、その後は107円台でのレンジ取引に。週の後半に入り、新型コロナウイルス感染拡大第2波の警戒感が広がり、106円台を付ける動きとなった。

 米国では3月中頃からの感染者拡大局面で、最も被害が深刻となっていたNY州での感染者数増加がかなり収まり、一時は一日当たり1万1千人を超えていた同州の新規感染者数は直近で数百人レベルまで減少している。郡ベースでの感染者数が全米で最も多いクック郡(用語説明1)を含むイリノイ州でも増加は収まっており、感染拡大一服期待と、ロックダウン緩和に向けた動きにつながった。

 しかし、ここにきてカリフォルニア州、フロリダ州、テキサス州などで感染者数の拡大がこれまでで最高ペースに上昇しており、感染第2波への警戒感が強まる展開に。全米ベースでの新規感染者数も一日当たり3万人を超えるペースと、4月初めから5月初めにかけての最悪期に並ぶ勢いとなっており、市場のリスク警戒を誘った。

 中南米での感染拡大もリスク警戒を誘っている。ジョンズ・ホプキンズ大学(用語説明2)のデータによると、22日時点でブラジルの感染者数は108万人超と、米国に続いて100万人の大台を超え、死亡者数も5万人を超えてきた。ペルーが6位、チリが8位と南米各国の状況が深刻に。

 自国通貨の信用力が低い新興国での感染拡大は、流動性の高いドルキャッシュへの資金の移動を誘う。リスク回避の円高、ドル円を除くドル高、その他多くの通貨安という流れが鮮明に。

 こうした動きの典型となったブラジルレアルは、新興国通貨売りの流れに年初の4.00台から6.00近くまで急激なドル高レアル安が進んだ。その後はブラジル通貨当局の積極的な介入姿勢と、新興国通貨の買い戻しに6月初めには4.81台まで調整の動きが見られたが、ここにきて5.40近くまでレアル安が再び進んでいる。

 主要通貨はさすがにそこまでの動きにはなっていないが、ユーロドルが先週前半の1.13台半ばから1.11台後半を付けるなど、ドル高に。ユーロ円はさらに円高の動きも加わり、122円台から119円台へ値を落としている。

 EUとの通商交渉の難航や、公的債務の対GDP比100%超えなどが懸念材料となったポンドは下落傾向がユーロよりも強く、ポンドドルは1.2680台から1.23台半ばに。ポンド円は136円30銭台から132円割れまで。

今週の見通し

 下値リスクを意識。

 米国での感染第2波への警戒感がドル円、クロス円の重石となっている。

 ロックダウンをいったん緩和しているだけに、再び規制を強めるのはかなり難しいとみられている。こうした中で、ミネアポリスでの事件以降全米で広がるデモや、今後の大統領選など米国内では人が集まる機会が増えており、感染被害が広がる地合いが強まっていることが警戒感を誘っている。

 新興国での感染被害拡大も止まらない。医療体制の遅れに加え、経済基盤の弱さから行動制限に伴う経済のダメージへの警戒感も、先進国以上のものとなっており、今後の警戒感に。

 ドル円を除くとドル買いになっている分、ドル円の下げは限定的も、クロス円は大きく下げる展開となりそう。

 それほど目立った材料が予定されていないことも、市場の注目を新型コロナ第2波に集めることにつながりそうだ。影響が出やすい米株価動向なども合わせて注意したいところ。

 ドル円は106円台維持が一つのポイント。大台をしっかり割り込むと105円では止められずもう一段の下げとなる可能性も。

 ユーロ円は5月6日の114円40銭台から6月5日の124円40銭台まで約一カ月で10円の上昇を見せた後、ここにきて119円台前半と、きれいな半値戻しとなっている。いったん動きが収まる可能性があるが、流れはまだ下方向で、118円ちょうどがターゲットとなりそう。

 ポンド円は目立ったポイントを割り込んできており、次のポイントは先月の安値129円32銭近辺か。ここを割り込むと3月に付けた124円00銭台が意識されてくる。

用語の解説

クック郡 同名の郡は米国に複数存在するが、ここではイリノイ州のクック郡のこと。カリフォルニア州ロサンゼルス郡に次いで全米で人口が二番目に多い郡で、郡庁のあるシカゴ市が最も大きな都市。新型コロナウイルスの感染被害では、22日付の累計感染者数が8万6885名で全米一位、死者数が4390名でNY州のキングス郡、クイーンズ郡に次ぐ全米3位となっている。
ジョンズ・ホプキンズ大学 メリーランド州ボルチモアにある米国の大学。医学・公衆衛生学の分野で世界最高水準の評価を受けている米国の最難関大学の一つ。米国の大学ランキングとして著名なUSニューズ&ワールドレポートのCollege and University Rankingsでは、医学大学院が1983年のランキング開始以来1位か2位、公衆衛生学大学院は常に1位となっている。
 新型コロナウイルス研究にも積極的で、米国および世界の感染状況を調査するCoronavirus Resource CenterのWEBサイトは世界的に参考にされている。

今週の注目指標

ユーロ圏製造業PMI(6月速報値)
6月23日17:00
☆☆☆
 23日に独、仏、ユーロ圏全体の6月の製造業・非製造業PMI(購買担当者景気指数)速報値が発表される。仏が16時15分、独が16時半、ユーロ圏が17時の発表。新型コロナウイルスの感染拡大と、ロックダウンなどの制限を受けて4月に軒並み大きく下げたPMIは、ロックダウンの緩和などを受けて前回はやや回復したが、ドイツ、ユーロ圏の製造業PMIがともに40以下にとどまるなど、厳しい水準にとどまった。今回はさらなる改善が見込まれており、製造業に比べてロックダウンの影響が出やすく、テレワークができない職種が多いこともあって、水準が低めに出ているサービス業も軒並み40台への回復が期待されている。もっとも好悪判断の境となる50には届かない見込み。予想を下回り、回復の鈍さが示されるとユーロ売りに。ユーロドルは1.1100がターゲット。
英製造業PMI(6月速報値)
6月23日17:30
☆☆☆
 6月の英製造業・サービス業PMIが17時半に発表される。新型コロナウイルスの感染者数で世界第5位、死亡者数で世界第3位と、欧州大陸と比べても被害が深刻な英国。4月のサービス業PMIが過去最低となる13.4(改定値・速報時点では12.3)など、ユーロ圏以上に厳しい状況となっている。前回は製造業が40.7まで、サービス業も29.0まで回復。今回はさらに改善し、製造業が45.5、サービス業が40.0の見込み。期待通りの結果が出ると、英経済の回復期待からのポンド買いも。ポンドドルは1.2500を意識する展開に。
NZ中銀政策金利
6月24日11:00
☆☆☆
 NZ中銀理事会の結果が24日に発表される。政策金利はすでに0.25%まで引き下げられている。新型コロナウイルス感染封じ込めにほぼ成功し、今後の景気回復が期待される状況下、マイナス金利などに早期に踏み切る必要性が低いこともあり、現状維持が見込まれている。量的緩和についても、オア総裁から現状で満足していることを感じさせる発言があり、早期拡大はなさそう。注目は「年内にも導入を検討」とされるマイナス金利についての声明や会見での言及か。期待が強まるようだとNZドル売り。NZドルは6月12日の下値トライ局面でサポートとなった68円20銭前後がターゲットに。

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