2020年06月29日号

(2020年06月22日~2020年06月26日)

先週の為替相場

新型コロナウイルスの感染第二波の影響を見極めに

 22日からの週、ドル円は23日の急激なドル売り円買いの後、持ち直してもみ合いとなった。

 新型コロナウイルスの感染拡大第二波の動きをにらみながらの展開。米国での感染拡大に警戒感があるものの、中南米、インドなどでの感染拡大もあって、リスク警戒がドル買いに作用する格好に。先週前半の株高・原油高基調がドル買いの意欲を後退させ、一時ドル安円高が進んだが、その後は、リスク警戒のドル高基調に復し、値を戻す展開となった。

 週の前半は米中関係を警戒する動きも見られた。ナバロ大統領補佐官(用語説明1)が、米メディアとのインタビューにおいて、中国との通商交渉は終わったと発言したことが日本時間23日朝に報じられ、一気に警戒感を誘った。107円ちょうどがやや重くなっていたドル円は106円90銭近辺から106円70銭近辺に急落。ユーロ円が一時120円台を割り込むなど、円高の動きに。

 しかし同発言について、クドローNEC(国家経済会議・用語説明2)委員長が否定。ナバロ氏も第一弾の貿易合意とは無関係な発言が文脈から大きく外れてとらえられたものと釈明。さらに、トランプ大統領が中国との交渉が問題なく継続していると発言したこともあり、一転してドル買いの動きとなって107円台前半に。

 しかし同日の海外市場でドル円は一気に値を落とした。東京市場で上値をいったん試したことで、逆に下がりやすくなった面も。欧州株や米株先物の上昇、NY原油先物の3月以来の41ドル台乗せなど、他市場でのリスク選好の動きが、ドル買いの調整を誘い、ドル全面安基調に。ナバロ発言後もしっかりとなっていた106円70銭近辺のサポートを割り込むとストップロス注文を巻き込んで106円00銭台まで値を落とす流れとなった。

 ユーロドルが1.1350前後、ポンドドルが1.25台乗せとドルは全面安の流れに。

 ドル円はその後106円台後半に値を戻していったんもみ合いに。下げ基調の中で106円台を何とか維持したことで、下値しっかり感も。

 週の後半にかけては新型コロナウイルスの感染拡大第二波への警戒感がドル買いを誘った。フロリダ、テキサス、アリゾナなどの州で一日当たりの新規感染者が過去最大を記録。米国全体でも一日当たりの新規感染者が4月のピークを超えて過去最大を記録するなど、状況が深刻化する中で、流動性の高いドルを手元に置きたいという思惑が広がった格好。

 ドル円はドル全面高の勢いもあり、107円台を回復。107円台半ばあたりが重くなっており、調整の動きに106円台に落とす場面も、その後再び107円台に戻すなど、堅調な地合いで週の取引を終えた。

 ユーロドルなどでもドル買いの勢いが目立ち、一時1.11台へ。1.12割れでの買いには慎重で1.12台前半に戻して週の取引を終えている。

今週の見通し

 新型コロナウイルスの感染拡大第二波警戒の動きと米経済の再開状況に関する思惑が相場をやや不安定なものとしている。

 新型コロナウイルスの第二波警戒における市場の反応が円高、ドル高となっており、ドル円に関してはどちらに動くのかが読みにくい点もやりにくさに。

 今週は重要な米経済指標が目白押しとなっており、その点も相場の先行きを読みにくくしている。特に2日木曜日(米独立記念日の振替休日の関係で通常の金曜日発表でない点に要注意)の雇用統計は、前回非農業部門雇用者数750万人の減少予想が、250万人超の増加と、予想値からの乖離が1000万人という空前の規模となり、大きなサプライズとなった後だけに注意が必要。

 先行指標となるADP雇用者数、ISM製造業景気指数と合わせて、市場はかなり神経質な反応を見せる可能性がある。

 基調はドル買い。中南米、南アジア、西アジア、南アフリカなどの新興国を中心に新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化しており、世界の資金のドルへの集中が継続。この流れは当面収まるとは考えにくく、中期的なドル高傾向が意識されるところ。

 ただ、米雇用統計などの結果次第では短期的に大きなブレも予想される。また、発表までは動きにくい面もあり、106円から107円台後半にかけたレンジを中心に、神経質な動きに。

 ターゲットは上方向で、109円に向けた動きを期待も、一時的に105円台への下落も十分考えられ、不安定な相場展開が見込まれる。

用語の解説

ナバロ大統領補佐官 ピーター・ナバロ通商問題担当大統領補佐官。UCI(カリフォルニア大学アーバイン校)教授。2016年の大統領選でトランプ氏の政策アドバイザーを務める。トランプ大統領就任後、新設された国家通商会議(NTC)の初代委員長に。同会議は2017年4月の通商製造政策局(OTMP)の新設に伴い廃止され、ナバロ氏は同局局長となっている。
NEC(国家経済会議) 1993年に当時のクリントン大統領によって設立された米国の行政機関。経済的安全保障という観点から、安全保障・社会保障なども含めた経済政策の立案や大統領への助言を行う。会議には大統領、副大統領、国務長官、財務長官など主要閣僚も含まれる。初代委員長はその後クリントン政権下で財務長官となったロバート・ルービン氏。トランプ政権下ではゴールドマンサックス社長などを務めたゲイリー・コーン氏が委員長に就任した後、CNBCのコメンテーターだった経済評論家ラリー・クドロー氏が2018年4月から委員長を務めている。

今週の注目指標

ADP雇用者数(6月)
7月1日21:15
☆☆☆
 米国の給与計算代行大手ADPのデータを基にした雇用者数調査。米労働省が発表する非農業部門雇用者数(NFP)のほとんどを占める民間部門の数字の先行指標として注目されている。前回5月分は900万人減の予想に対して結果は276万人減と大きな乖離を見せたが、実際の雇用統計の750万人減の予想に対する250万人増という乖離にはまるで届かなかった。今回は295万人増と、2日に発表される非農業部門雇用者数の予想値とそれほど変わらない数字が見込まれているが、前回の乖離分との調整もあり、不安定な動きを見せる可能性も。予想を超える増加を示すようだと、ドル買いの動きも。ドル円は107円台半ば超えが意識される。なお、雇用統計前々日に発表されることが多いが、雇用統計本番が振替休日の関係で木曜日発表となるため、前日発表となっている点にも注意。
米ISM製造業景気指数(6月)
7月1日23:00
☆☆☆
 4月に11年ぶりの低水準となる41.5を記録したISM製造業景気指数。前回は43.1と4カ月ぶりの上昇を示したが、好悪判断の境となる50とはかなり離れており、低位安定の兆しというとらえ方もあった。内訳のうち重要視される新規受注、生産、雇用はいずれも回復を示したものの、30台前半の水準にとどまっており、内訳的にも厳しい印象を与えた。今回は49.5と2カ月連続の改善で50に迫る数字が期待されている。予想を上回り50を超えてくると市場の期待感につながるが、ロックダウン再開の懸念が広がる中で、市場の反応が大きくなるのは予想を大きく下回った場合か。前回並みの数字にとどまるようだと、ドル円は106円ちょうどを試す可能性も。
米雇用統計
7月2日21:30
☆☆☆
 前回は非農業部門雇用者数が750万人減の予想に対し結果は250.9万人増と、前代未聞の乖離を示した同指標。失業率も4月の14.7%から19.0%に大幅悪化の見込みが、13.3%への改善が示された。失業保険の継続受給者数が4月から悪化するなど、雇用情勢の厳しい状況が継続しているとの見通しの中で、予想外の雇用改善を示した形。今回は300万人増、12.1%への改善が見込まれている。前回、約120万人の大幅な雇用増を記録したレストラン・バーなど飲食関連部門及びホテルなどのアコモデーション部門の雇用者について、ロックダウンの緩和が進んでいることでさらなる増加が見込まれており、予想程度の雇用増の可能性は十分にある。ただ、デパート、レストランチェーンなどの倒産が目立つ中で、かなり不安定な状況にあるとみられており、予想との大きな乖離の可能性は上下ともにある。市場の反応が大きくなりそうなのは弱い方への乖離。予想ほどの改善を示さないようだと、ドル売りが一気に広がり、中期的に105円を目指すきっかけとなる可能性も。

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