2020年07月06日号

(2020年06月29日~2020年07月03日)

先週の為替相場

米指標強めも、値幅は限定的

 29日からの週、ドル円は週初の107円ちょうど近くから、108円台に一時乗せるなど、堅調な動きが一時優勢に。先月23日の106円00銭台を付けた動きからの反転上昇の流れが先週半ばにかけて継続した。

 クロス円はドル円以上に上昇が目立ち、ユーロ円は120円台前半から121円台半ばをトライする動きに。1.12を割り込んだユーロドルが木曜日の海外市場で1.13台を一時付けるなど円売りドル売りの動きとなった。

 新型コロナウイルス感染第二波への警戒感などから、先々週後半にかけてダウ平均が2万5000ドルの大台割れ寸前まで売られた米国株に買い戻しが入り、2万6000ドル台を一時しっかりと回復するといった展開を受けてリスク警戒感が後退。NY原油の買い戻しなども見られ、ドル円、クロス円の支えとなった。

 もっとも、ユーロに関してはEU復興基金についてのEU内での合意に向けた交渉が難航、ポンドに関してはEUとの通商交渉が難航するなどの状況が見られ、対ドル、対円での上値での買いには慎重姿勢も。

 ドル円はこうした流れの中で週の半ばに108円台を回復も、大台を維持出来ず、その後107円台前半まで下落。107円台前半での売りには慎重で、下値しっかり感も、戻りも鈍いという展開に。3日金曜日が米独立記念日の振替休日で休場となっており、週後半にかけては積極的な取引を手控える動きも見られた。

 1日の米ISM製造業景気指数は、予想及び好悪判断の境となる50をしっかりと超え、14カ月ぶりの高水準となる52.6を記録。前月比で9.5ポイントの改善は1980年8月以来の大幅な上昇となった。内訳をみると、先行きを見越すにあたって重要視される新規受注が前月から24.6ポイント上昇の56.4と、1948年の統計開始以来最大の上昇幅を記録。同じく注目度が高い生産は1952年以来の大幅上昇を記録しての57.3と、重要項目の改善が目立っており、米企業の景況感回復が顕著となった。

 2日の米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が480万人増と予想の323万人増を大きく超える好結果に。前回の数値も250.9万人から269.9万人に上方修正されており、米雇用市場の回復も顕著となった。

 一方で、新型コロナウイルスの米国での1日当たり新規感染者数が初めて5万人を超えるなど感染第二波の動きが強まっており、ロックダウン再開に向けた警戒感が広がるなど、リスク材料も。

今週の見通し

 米国の重要指標が軒並みの好結果となっており、ドル円、クロス円はしっかりの展開。もっとも新型コロナウイルスの感染拡大第二波警戒の動きが継続。1日当たり新規感染者が米国全体で5万人を超える日が見られるなど、ここにきて感染拡大の動きが強まっており、警戒感につながっている。ロックダウン再開懸念が広がるようだと、一転してリスク警戒の動きが強まりそう。米国での感染者数は今週中に300万人台に乗せるペースとなっているが、大台超えが節目となって警戒感からの円高が強まる可能性も。

 世界の感染動向をみると、ブラジルでハイペースの感染拡大が続いているほか、インド、ロシア、ペルーと新興国が感染者数ランキングトップ5に入ってきた。スペインやイタリアを超えて7位に浮上したメキシコを含め、新興国通貨売りドル買いの流れがもう一段強まる可能性も。

 ドル円は世界的な株高を好感した円売りと新型コロナウイルスの感染第二波警戒での円買いに挟まれる形で、107円台を中心としたレンジ取引が続く可能性が高そう。

 勢い的にはドル高円安方向。米国はともかく、新興国での新型コロナウイルスの感染拡大は世界的な投資資金のドルへの集中を誘う可能性がある。リスク警戒の動きがイコールドル円の下げにつながるとは限らないだけに、下値しっかり感が出ることも考えられる。107円ちょうど近辺の買い意欲が確認されると108円台半ば超えをトライする可能性も。

 欧州通貨は来週17日、18日に行われるEU首脳会議を前にした9日のユーロ圏財務相会合(ユーログループ)、10日のEU財務相理事会をにらむ展開も。

 欧州委員会が提示した7500億ユーロ規模の復興基金「Next Generation EU(次世代のEU)」について、Frugal Four(用語説明1)の反対で合意が難航しており、この調整がどこまで進むのかが注目されるところ。ユーログループに関してはセンテーノ議長(用語説明2)が来週13日の任期満了をもって退任することを発表しており、次期議長選挙も行われる。この結果も復興基金合意に向けた動きに大きな影響を与えるテーマとして注目される。

 今月の首脳会議での合意が難しいとの認識が広がるようだと、ユーロ売りの動きが優勢に。当初の独仏首脳会談での復興基金の提案、その後の欧州委員会での正式な提示などに際して、ユーロは期待感から買いが入ってきた経緯があるだけに、大きな調整売りにつながる可能性もありそう。ユーロ円は先月22日に付けた119円30銭台をトライする可能性も。

用語の解説

Frugal Four 倹約4カ国。EU加盟国のうち、EU予算への貢献度が高いオランダ、オーストリア、デンマーク、スウェーデンの4カ国。英国のEU離脱に伴うEU予算減少への対応について、共同で予算の縮小を主張するなど、連携を強めている。EU予算に関しては、東欧諸国を中心に供出金よりも補助金などでの受け取りが多い国がかなりの部分を占めている。そうした中、この4カ国はEUへの供出金がかなり多く、オランダなどはGDP規模で同国をはるかに上回るイタリアよりも予算に貢献する国となっている。そのため復興基金などでのこれ以上の負担を避けたいという思惑が見られる。
センテーノ・ユーログループ議長 ポルトガル財務相。ダイセルブルーム前議長(オランダ財務相・当時)の後任として2018年1月に第3代ユーログループ議長に就任。初代議長であったユンケル・ルクセンブルグ首相兼財務相(当時)が8年間、ダイセルブルーム前議長は5年間同職を務めたが、センテーノ議長は今回1期2年半の任期満了をもって退任する意向を示した。後任の候補として立候補しているのはカルビニョ・スペイン副首相兼経済相、ドナフー・アイルランド財務相、グラメーニャ・ルクセンブルグ財務相。

今週の注目指標

ISM非製造業景気指数(6月)
7月6日23:00
☆☆☆
 1日に発表されたISM製造業景気指数は、予想の49.7に対して52.6と、好悪判断の境となる50を超え、14カ月ぶりの高水準を記録した。前回からの9.5ポイントの伸びは1980年以来。非製造業景気指数の予想は50.0となっているが、製造業同様に予想を超える好結果を示すと、米景気回復への期待感からドル買いが強まる可能性も。ドル円が108円台に乗せるきっかけとなりそう。
豪中銀政策金利発表
7月7日13:30
☆☆☆
 豪中銀金融政理事会の結果が7日13時半に発表される。政策金利は現行の0.25%で維持される見込み。新型コロナの感染拡大の動きを一時抑え込んだとみられた豪州だが、ここにきて人口が豪州で2番目に多いビクトリア州で感染拡大の動きが広がり、最大の人口を擁するNSW州との州境を閉鎖するなど状況が悪化している。こうした事態を受けて豪中銀が今後に向けてどこまで慎重な姿勢を示すのかなどが注目されている。これまで否定してきたマイナス金利導入の可能性を示すような発言が見られると一気の豪ドル売りも。その場合豪ドル円は74円割れを試す可能性も。
ユーロ圏及びEU財務相会合
7月9日・10日
☆☆☆
 9日にユーロ圏財務相会合(ユーログループ)、10日にEU財務相理事会が開催される。焦点となるのは、欧州委員会が提示しているものの、オランダなどの反対で合意ができていないEU復興基金について。独仏などは18日、19日のEU首脳会議での合意に向けた動きを進めたいと考えているが、オランダ、オーストリア、デンマーク、スウェーデンのいわゆるFrugal Four(倹約4カ国)の反対姿勢は強い。4カ国が合意に向けた姿勢を示すようだと一気のユーロ買いも。ユーロドルは1.13台後半に向けた動きもありそう。

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