2020年07月13日号

(2020年07月06日~2020年07月10日)

先週の為替相場

週後半にドル安強まる

 6日からの週、後半にかけてドル安の勢いが強まり、ドル円は106円台に値を落として取引を終えた。ユーロドルが1.13台に乗せるなど、ドル全面安の流れとなった。

 週半ばまでドル円は107円台でのレンジ取引。何度か上値を試すものの107円80銭手前の売り注文が上値を抑えた。中国株高などの動きがドル円、クロス円を支える格好となった。

 6日に発表された米ISM非製造業景気指数は、1日発表の同製造業景気指数同様に事前予想を超える好結果となった。2日の米雇用統計の好結果と合わせ、米景気回復への期待感につながったことからリスク選好でのドル売りを誘い、107円台前半まで値を落とす場面も見られたが、週前半はもみ合いが続いた。

 米国での新型コロナウイルス対策室の責任者でもあるペンス副大統領が、「全米の死亡率は低下している。アリゾナ州、フロリダ州、テキサス州での陽性検査の結果は横ばいを示す初期兆候が見られている」などと楽観的姿勢を示したことなども、リスク選好につながった。

 その後は、17日、18日のEU首脳会議をにらみ、EU復興基金の議論が深まるとの期待感からユーロドルがしっかりとした動きを見せたこともあり、ドル安の流れが優勢に。

 9日木曜日の米株の大きな調整売りなどでリスク警戒が広がる局面では、全般的にドル買いが進んだが、ドル円は円買いも入ったためもみ合い。さらに10日のアジア市場でも株安が継続すると、円買いが主導する形でドル円は106円台に値を落とす展開となった。

 10日の海外市場では当初米債利回りの低下が見られ、米5年債利回りが過去最低水準を更新。こうした利回り低下などを受けドル全面安に。ドル円は106円60銭台まで下値を広げ、ユーロドルが1.13台に乗せるなどの動きとなった。

 7日の豪中銀金融政策理事会は、事前見通し通り政策金利を据え置き。声明にも目立った変化は見られなかった。豪ドルは中銀発表への反応は鈍いものとなったが、同日ビクトリア州(用語説明1)が6週間のロックダウン再開を決めたことを嫌気して対ドル、対円で売りが出る場面が見られた。

今週の見通し

 リスク選好でのドル安円安の流れが継続している。米国での新型コロナウイルスの感染第二波は、フロリダ、カリフォルニア、アリゾナ州など、米国の南・西部を中心に深刻な状況となっている。しかし、直近の米指標の好調さや世界各国の中央銀行による積極的な緩和政策の影響による資金余剰などの影響で、米株を中心に株高の流れが続いており、リスク選好の動きにつながっている。

 新型コロナウイルスに関しては新薬への期待感も強く、米株の支えになっている面も。

 ドル円については、ドル安と円安に挟まれる形で方向感が出にくい。先週末にかけて106円台に値を落としたが、下値を積極的に売るような勢いはなく、徐々に頭が重くなった。106円-108円のレンジを超えるだけの勢いが見られない。当面はレンジ取引が続くか。

 107円ちょうどから107円20銭にかけての水準が重くなるようだと、下値トライの期待が強まる可能性も。

 ユーロドルはドル全面安基調の中で上値(ユーロ高ドル安)期待が強い。3月の大きな振幅の中での上値1.1490台が大きなターゲット。目先は先週の高値1.1370がポイントに。同水準を付けると、上値トライの勢いが強まる可能性も。

 ただ、今週末のEU首脳会議(欧州理事会・用語説明2)を前に積極的な取引を手控える動きも。EU復興基金の合意に向けた議論がどこまで進むのかが注目材料に。オランダなどの反対が強いため、今回の会議での合意形成は難しいという見方が強いが、今月末には議論がまとまるとの観測が広がっており、市場のユーロ買いにつながっている。

 今月末に合意に向かうためには、今週の会議である程度前向きな動きが示されることが必要に。ミシェル欧州理事会常任議長が先週、復興基金に反対するオランダやオーストリアなどにやや有利となる修正案を発表しており、これらの国がどこまで態度を軟化させるかに注目。

 ユーロドルの下方向は1.1250近辺が強いサポートとなっている。1.1250-1.1350のレンジを中心に、上方向への動きを期待という流れか。

用語の解説

ビクトリア州 オーストラリア南東部に位置する州。面積は大陸部の州の中で最小だが、人口はNSW(ニューサウスウェールズ)州に次いで豪州第2位。州都は豪州第2の都市メルボルンで、都市部に州の人口の約70%が集中している。北部はマレー川をはさんで豪州最大の州であるNSW州と、西部は南オーストラリア州と接している。南部に海を挟んでタスマニア州がある。豪州では新型コロナウイルスの新規感染が一時抑え込まれつつあったが、ビクトリア州は感染拡大が継続したことで、7月8日夜から6週間の厳格なロックダウン再開を決定した。同州では食品の買い出し、育児・介護、運動、仕事以外の理由での外出が禁止される。決定に先駆けて、7日深夜からNSWとの州境が閉鎖されている。
EU首脳会議 欧州理事会とも呼ばれるEUの主要機関の一つ。EU加盟国の首脳、欧州委員会委員長、常任議長などがメンバーとなるEUの最高政治機関。現在の常任議長は昨年までベルギーの首相を務めていたシャルル・ミシェル氏。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、直近はテレビ会議で実施していたが、今月17日、18日に感染拡大後初めてEU本部のあるブリュッセルに集まって会議を実施する。

今週の注目指標

日銀金融政策決定会合
7月14日・15日
☆☆☆
 14日、15日に日銀金融政策決定会合が開催される。金融政策は現状維持の見込み。今回は「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」が発表される。展望レポートでは今年後半にかけて景気が持ち直していくという基本シナリオの維持が見込まれている。ただ、経済成長率見通しについては下方修正の可能性が高い。この下方修正により今後の追加緩和期待が広がると円売りにつながる可能性も。ドル円は107円台半ばに向けての動きが強まる可能性も。
ECB理事会
7月16日20:45
☆☆☆
 前回6月4日の理事会でPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)を従来の7500億ユーロから1兆3500億ユーロに大きく拡大したECB。ラガルド総裁は前回の対応を評価する姿勢を示しており、現状についてはその効果を確認する時期としていることから、今回の理事会では現状維持が見込まれている。注目は合意が難航するEU復興基金など財政面での景気支援の動き。総裁が基金の合意に楽観的で、財政・金融両面からのEUの景気が支えられるという見通しを示すと、ユーロ買いの動きに。ユーロドルは1.14台への上昇を意識する展開となりそう。
EU首脳会議
7月17日・18日
☆☆☆
 今回の主要議題はEU復興基金と呼ばれる「次世代のEU」と2021年から2027年の次期中期予算計画(多年度財政枠組み:MFF)からなる復興パッケージについて。パッケージに反対するオランダなどの譲歩を引き出すため、ミシェル常任議長はMFFの規模縮小や加盟国拠出分担金の払い戻しなどを含む修正案を先週EU各国に提示している。オランダなどがこうした修正案に前向きな姿勢を示すと、合意(全会一致がEUの原則)に向けた動きが一気に強まり、ユーロ買いの材料となる。ユーロドルは3月の高値1.1490台を意識する動きも。

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