2020年07月20日号

(2020年07月13日~2020年07月17日)

先週の為替相場

EU首脳会議などにらむ展開に

 13日からの週、ドル円は106円台半ばから107円台半ばにかけてのレンジの中で振幅する展開となった。

 米国での新型コロナウイルス感染第二波への警戒感と、株高が続く流れを受けたリスク選好の動きが交錯し、方向感がはっきりしない展開に。

 ユーロドルは17、18日のEU首脳会議での次世代のEU基金(EU復興基金)の合意期待などがユーロ買いにつながり、堅調な動き。3月に付けた高値1.1490台を意識する展開となり、その手前1.1450近辺が重くなっているが、押し目は1.13台後半までと、堅調地合いを維持している。

 ユーロ円も堅調地合いが続く。先々週末に120円20銭台を付け、120円の大台割れに迫る動きを見せたが、そこからは一転して上昇基調に。先々週何度も頭を抑えた122円手前の売りをこなし、122円台半ばまで。その後の押し目は121円台後半までにとどまっており、週末には122円台半ば超えまで上昇するなどユーロ高円安基調が強まっている。

 先週のドル円はまずドル高円安でスタート。ナスダックが史上最高値を更新するなど株高の動きが円売りを誘った。英政府が2021年からEU輸出に検査実施との報道でポンド売りドル買いが強まったことも、ドル高を誘った。もっともユーロポンドではユーロ買いポンド売りが出たこともあり、ユーロドルでのドル買いは一息。

 その後、新型コロナウイルスのワクチン開発期待がらみでリスク選好のドル売りが優勢に。米バイオ大手モデルナ(用語説明1)が同社が開発するワクチン候補が初期段階の臨床試験で好結果が得られたと発表したことが好感され、リスク選好の動きがドル売りに。ユーロドルは先々週末からの上昇基調が継続する形で1.1450台まで。ドル円は107円台を維持出来ず106円60銭台まで。

 その後はドルの買い戻しに。ユーロドルは1.14台後半の買いに慎重姿勢が見られた。EU首脳会議への期待感も、3月高値1.1490台手前には売り注文があり、高値圏でのユーロ買いに慎重姿勢。ドル円も107円台を回復する流れに。

 16日のECB理事会は現状維持を決定。ポンドが英中関係の緊張やEUとの通商交渉の難航などを理由に対ドルで売られていることもあり、ユーロドルもやや頭の重い展開で1.13台後半に。

 週末かけてドル円は調整が入る展開。17日から開催されているEU首脳会議でのEU復興基金合意期待がユーロドルを押し上げ、ドル全面安からドル円も頭の重い展開に。106円台に値を落として週の取引を終えた。

今週の見通し

 ドル円はレンジ取引が続いている。新型コロナウイルスの感染第二波の動きが継続。世界の新型コロナの新規感染者数は一日当たり約26万人に達し、そのうち米国は約7万人に上るなど、状況が深刻化。死亡者数も累計で60万人を超え、うち米国は14万人を上回った。

 ロックダウン再開に向けた動きが警戒されるが、一方で直近の米経済指標は軒並み好調。先週発表された6月の米小売売上高は、5月の前月比18.2%増に続いて7.5%増と予想を超える高い水準での伸びを記録。雇用の回復傾向と合わせ、景気回復期待が広がっている。

 不安定な状況に相場はやや動きにくい展開。特にドル円に関しては、新型コロナ関連での動きがドル安円安、ドル高円高というようにドルと円とでの同じ方向の圧力を受けるケースが多く、ドル円での動きがはっきりしない面も。

 こうした状況は当面続くとみられ、ドル円は106円台半ばから107円台半ばをコアとしたレンジ取引が続きそう。

 一方ユーロは対ドル、対円で上昇傾向。17、18日に開催されたEU首脳会議では、主題であるEU復興基金(次世代のEU基金)について、全体の合意を形成できず(EU首脳会議での合意は全会一致が原則)、19、20日に延長された。ただ、ミシェルEU大統領(用語説明2)が当初案よりも補助金部分を減らす新提案を行ったことで、反対していた国も態度を軟化させており、早期の合意が期待される状況となっている。

 こうした流れがユーロ買いの動きを誘っており、3月に付けた今年の高値1.1490台を超え、1.15の大台を回復するという期待が広がっている。昨年の高値1.1570近辺も視野に入っており、ユーロ高の流れに。

 ユーロ円はドル円が110円手前まで上昇した6月5日に付けた124円40銭台までまだ少しあるだけに、ユーロドル以上に買いが入りやすい状況。同水準が目先のターゲットとして意識されている。

用語の解説

モデルナ 米国マサチューセッツ州ケンブリッジに本社のあるバイオ医薬品メーカー。伝達RNA(messenger RNA)と呼ばれるたんぱく質合成の遺伝情報を写し取って伝えるRNAを利用した医薬品開発を行っている。新型コロナウイルスのワクチン開発に関しては、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)と共同で開発を進めているmessengerRNA1273 の前期臨床試験において、治験参加者45人全員が抗体を獲得したと発表。今月27日から第3相臨床試験を開始するとしている。
ミシェルEU大統領 シャルル・イヴ・ジャン・ギスレーヌ・ミシェル(Charles Yves Jean Ghislaine Michel)。昨年12月から第3代の欧州理事会常任議長(通称EU大統領)を務めている。2014年10月から2019年10月までベルギーの首相を務めた。就任当時同国戦後最年少の首相(当時38歳)。25歳の時に同国最年少で大臣(ワロン地域担当内務大臣)に就任するなど若い時から頭角を現していた。

今週の注目指標

EU首脳会議
7月20日23:00
☆☆☆
 17、18日の日程で開催されたEU首脳会議は、主題であるEU復興基金の合意が形成できず、19日午後、さらには19日深夜(実質20日早朝)に延期され、さらに20日午後(日本時間20日23時)からの再開ということでいったん休憩に入っている。当初の7500億ユーロ規模の基金のうち5000億ユーロを補助金にという案に反対した5カ国(オランダ、オーストリア、デンマーク、スウェーデン、フィンランド)のうち、デンマーク、スウェーデン、フィンランドがミシェルEU大統領の提案した補助金部分を4000億ユーロとする新案に態度を軟化。さらにオランダとオーストリアも同部分を3900億ユーロまで落とすことで合意するとの報道もあり、20日中の合意が期待される状況となっている。合意が正式に発表されるとユーロ買いに。ユーロドルは1.15台が意識されている。
ユーロ圏PMI(購買担当者景気指数・7月)
7月24日17:00
☆☆☆
 24日に7月のユーロ圏全体及び加盟主要国のPMI(購買担当者景気指数)が発表される。新型コロナウイルスの影響で4月分が軒並み記録的な落ち込みとなった同指数。ロックダウンの緩和を受けて期待された5月分は期待されたほど回復せず、欧州経済の厳しい状況を印象付けた。しかし、前回6月分は一気に強めの数字が示され、市場のユーロ買いを後押しした。今回もしっかりとした数字が期待されている。16時半の独PMIは製造業が48.0、非製造業が50.2と前回を超え、非製造業に関しては好悪判断の境である50も超えるという強気な予想に。17時のユーロ圏PMIも製造業が49.8、非製造業が51.0と前回を超え、非製造業は50を超える数字が見込まれている。製造業も50を上回る可能性が十分にあり、予想を超える景況感の改善が示されると、ユーロ買いの動きを支える材料に。ユーロ円は123円台後半を意識する展開も。
英PMI(購買担当者景気指数・7月)
7月24日
17:30
☆☆☆
 新型コロナウイルスの感染者数が20日時点で30万人に迫る勢いを見せるなど、欧州各国と比べても被害が深刻な英国。ただ一方でロックダウン緩和の動きは進めており、今月4日には英国の象徴でもあるパブやレストラン、映画館などが再開された。こうした状況を受けて前回時点で製造業PMIが50.1と好悪判断の境である50を超えるなど、景況感の回復が顕著となっている。今回は製造業が52.0、非製造業が51.0とともに50超えが見込まれている。予想通りもしくはそれ以上の回復を見せるとポンドの買い戻しに。ポンドドルは1.26台が意識される展開に。

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