2020年07月27日号

(2020年07月20日~2020年07月24日)

先週の為替相場

週末にかけてドル安円高

 20日からの週、リスク選好と警戒の動きが交錯する中、ドル円は107円を挟んでの振幅から、週末にかけてドル安円高が優勢な動きを見せた。

 先週前半はリスク選好ムードが広がった。新型コロナウイルスの感染拡大懸念は継続も、ワクチン開発が順調に進んでいるとの期待感から米株が上昇し、世界的にも株高ムードに。また、17日から行われていたEU首脳会合が、当初日程を超えて足かけ5日間のマラソン協議を経てEU復興基金(次世代のEU基金)について合意したことも、リスク選好の流れを誘った。

 ドル円はゴトウビということもあり20日の仲値にかけてドル高円安が進行。107円台半ばを超える場面が見られたが、上値での買いには慎重で、すぐに107円台前半に。

 一時107円ちょうどがしっかりとなる展開も、21日にEU首脳会議でEU復興基金の合意がようやく決まると、ユーロドルでのユーロ買いドル売りの動きが強まり、ドル全面安ムードからドル円も106円台に値を落とした。

 しかし米国が在ヒューストン中国総領事館(用語説明1)の閉鎖を要請と報じられ、中国側からも閉鎖が伝えられたことで、米中関係の悪化懸念が強まった。リスク警戒からのドル買いが入ると、ドル円は107円台を回復。中国が対抗措置として在武漢米国総領事館の閉鎖命令を検討とも報じられ、市場の警戒感につながった。

 その後、米新規失業保険申請件数の予想以上の増加などを受けて、新型コロナウイルスの感染第二波への警戒感が強まる中でドル売り円買いの動き。米雇用情勢の悪化が追加緩和への期待感につながったとみられた。

 さらに週末にかけては円買いの動きが一気に広がった。中国が成都の米総領事館の閉鎖を正式に通告。両国関係の悪化が意識され、中国株安も進む中でリスク警戒の動きに。先月の安値が106円ちょうど前後で止められたこともあり、同水準をしっかり割り込むとストップロス注文を巻き込んで売りが強まり、105円70銭割れまで。安値を付けた後は少し調整が入り106円台を回復して週の取引を終えた。

 ユーロドルは堅調な動きを見せた。当初17、18日の日程で行われたEU首脳会議は、主要議題であるEU復興基金(次世代のEU基金)の合意形成が難航。延長を繰り返し足掛け5日間の協議を経て日本時間21日昼過ぎに合意に達した。もっとも関係者筋情報として、EU大統領による反対派に考慮した新提案を基に合意が近いと報じられていたこともあり、週明けからユーロは対ドル、対円でしっかりとなった。

 ユーロドルは合意発表前に1.1460超えまで。1.1460前後で合意が報じられると、1.1470まで上昇も、事前のユーロ買いポジションの調整もあって、1.14台前半に。もっとも押し目は1.1420台までと限定的なものにとどまり、21日の海外市場で1.15超えへ。

 その後は新型コロナウイルスのワクチン開発への期待感からのドル売りを受けてユーロドルは2018年10月以来の1.16台へ。1.16超えの買いには慎重姿勢が見られ、いったん調整が入るも1.1540前後までと押し目は限定的。

 米新規失業保険申請件数が予想以上に悪化し、雇用情勢の悪化からの追加緩和期待がドル売りを誘うと、1.16台にしっかり乗せる展開となり、さらに週末の米中関係悪化懸念からのドル売りに1.1650超えまで。

 ユーロ円も122円台前半から一時124円台にしっかり乗せる動き。もっとも週末にかけての米中関係悪化懸念でのリスク警戒は円高の勢いが勝っており、123円割れを付けるところまで調整が入った。

今週の見通し

 ドル円は米中関係の緊張が高まったことで一気にドル安円高の流れとなっている。EU復興基金がらみで上昇が続いたユーロドルが、米中関係悪化によるドル売りでさらにもう一段の上昇となっていることもあり、ドル全面安の流れに。

 ドル円だけでは値ごろ感からの買い戻しも意識される水準まで値を落としているが、ドル全面安の流れの下では、ドル円のレベル感だけでは動きが止まりにくいこともあり、心理的な節目である105円ちょうど前後を意識する展開に。

 レンジ取引が長めに続いたことで、実需筋(用語説明2)のドル売りがやや遅れているとも指摘され、戻りではドル売り注文が入る展開が続いており、当面は頭の重い展開か。

 ターゲットは3月の新型コロナウイルスの感染拡大に伴う大きな値動きの中で付けた101円19銭。2月の112円台から3月9日に101円台を付け、3月後半に112円近くまで回復と荒っぽい振幅を経て、3月末からドル円は106円―110円のレンジ内での取引に。特に先月半ばからは106円-108円を基本とするレンジ取引が続いていただけに、ここにきてレンジを下に抜けてきたことで、新しい流れを意識する動きが広がっている。

 ユーロドルは2018年9月以来の高値圏を付ける動き。同月の高値1.1815が目先のターゲット。ここを超えると2018年2月の高値1.2550が中長期のターゲットとして視野に入ってくる。押し目があまりなく、大きめの調整が入る可能性があるものの、地合いはかなり堅調で上値期待が強い。

用語の解説

総領事館 外国に駐在して自国民の保護や自国の通商促進にあたる外交官である領事が職務を行う機関。その国に駐在する外交官のトップである大使の職務機関である大使館が通常その国の首都に置かれるのに対して、首都とは別の主要都市に置かれることが一般的。
実需筋 外国為替市場において、投機的な目的ではなく、輸出入に関わる取引など実需に基づく為替取引を行う取引主体のこと。狭義の意味では輸出入業者となるが、資本取引などを行う機関投資家などを含めるケースが多い。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
7月30日3:00
☆☆☆
 28、29日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。今回は参加メンバーによる経済成長率や物価、政策金利などの見通しが示される回には当たっておらず、注目は声明と会合後のパウエル議長の会見となる。市場では中長期の金利管理(YCT:イールドカーブターゲット)への期待感が強いが、前回のFOMCでの議事録を見る限り、メンバーは否定的であり、今回も積極的な話は出てこないとみられる。今後のYCT導入の可能性が示されるようなことがあると、ドルは一気に売られる可能性。ドル円は104円台トライも。
米第2四半期GDP速報値
7月30日21:30
☆☆☆
 米国の第2四半期GDP速報値が発表される。新型コロナウイルスの感染拡大による景気鈍化が本格化したのが3月以降で、4月がピークになったとみられることから、前期以上の景気鈍化が見込まれている。予想は前期比年率35%減。GDPの約7割を占める個人消費が34.5%減と大きく低下する見込みとなっており、全体を押し下げている。こうした景気鈍化自体は想定済みだが、予想以上に落ち込みが厳しいとドル売り傾向に拍車がかかる可能性も。ドル円は106円台が重くなる展開に。
中国購買担当者景気指数(PMI・7月)
7月31日
10:00
☆☆☆
 7月の中国国家統計局による製造業・非製造業購買担当者景気指数(PMI)が発表される。ともにすでに好悪判断の境である50を回復しており、予想は製造業が50.8(前回値50.9)、非製造業が54.5(前回値54.4)と、6月分とそれほど変わらずの数字が見込まれている。中国景気の堅調さが意識されると対中輸出の大きい資源国通貨などの買い材料に。豪ドル円は76円台に乗せる動きも。

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