2020年08月03日号

(2020年07月27日~2020年07月31日)

先週の為替相場

ドル円一時104円台前半も、週末一気に調整入る

 27日からの週、後半にかけてドル売りの動きが継続し、ドル円は一時104円19銭まで値を落とした。ユーロドルが2018年9月の高値を超えて1.19台を付けるなど、ドル全面安となった。

 新型コロナウイルスの感染第二波の動きが広がる中、リスク警戒感が継続。ただ、これまでリスク警戒の中で流動性の高いドルを買う動きが広がっていたが、先週は株高もあってドル買いの動きが強まらず。

 現状の超低金利政策が長期間にわたって維持されるとの思惑もドル安を誘った。28、29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、事前見通し通り金融政策の現状維持を決定。パウエルFRB議長は会見の中で景気の低迷が、これまでの生涯で経験したことのない厳しさだと、リーマン・ショックなどのこれまでの不況と比べても厳しい状況であるとの認識を示した。フォワードガイダンスの拡充などの追加措置が見送られたこともあり、発表後は振幅を経てドルの買い戻しが入ったが、中期的な流れは変わらず。市場はFOMCを受けて現状の低金利政策が相当長期間にわたって維持されるとの見通しを強め、ドル売り基調が継続した格好。

 米新規失業保険申請件数や米第2四半期GDP速報値などの厳しい数字もドル売りにつながる形でドルは全面安に。

 少し変わったところでは、トランプ大統領が11月の大統領選挙(用語説明1)について、安全な投票が可能になるまで延期してはどうかとツイートしたことも、ドル売りを誘った。選挙は米国にとって聖域に近い部分があり、各州で行われた大統領選挙の予備選挙(党の指名候補を決める選挙)でも、他州の結果からすでに大勢が判明しているうえに、新型コロナウイルスによるロックダウンが行われている最中という状況で延期を決めた州議会の決定が、裁判所によって覆されるなどの事態も見られた。権限の大きい米大統領であっても選挙日程の変更権限はなく、そうした中でのトランプ大統領のツイートが、劣勢といわれる大統領選に対する自信のなさではと、警戒感を誘った面も。

 もっとも週末にかけてはドルの買い戻しが一気に強まった。ドル売り基調が長く続いたことでやや売られ過ぎ感が出ていたようだ。新型コロナウイルスの感染第二波の動きや、米中関係の緊張などが先行き不透明感を誘い、ポジション調整につながったとみられる。

 ドル円は一時106円台までと、先週の高値を更新する動きに。ユーロドルも1.17台まで売りが出る格好となった。

今週の見通し

 先行き不透明感が継続。ドルは全面安の流れが継続も先週末の一気の調整で不安定な動きに。

 ドル全面安の流れの中で、ドル円が104円台前半、ユーロドルが1.19台まで下落したことで、さすがに一服感も出ている。

 また、今週は米ISM製造業景気指数(用語説明2)、同非製造業景気指数、米雇用統計と相場に影響を与える重要指標が予定されており、積極的な取引を手控える動きも。特に米雇用統計に関しては、ここにきて新規失業保険申請件数の数字などがやや不調で、雇用市場の回復に警戒感が出ているだけに、発表前の動きを手控える動きも。

 もっとも、5月後半からの上昇局面が7月に入って加速した格好のユーロドルを見ると、先週末の大きな調整を含めてもまだまだドル安圏という印象。ドル円に関しては新型コロナウイルスに関連する市場の反応として、これまでドル安と円安、ドル高と円高というように、ドルと円が同じ方向に動いていた時期が長かっただけに、ドル安円高の動きがユーロ高ドル安に比べると素直に進みにくい面があるが、流れは下方向か。

 106円台半ばから107円にかけてのレンジが上値抵抗水準。この下でもみ合いが続くと、再び104円台をトライし、さらにはもう一段下を狙う可能性も。

 ユーロドルは1.20超えでECBなどがどこまで警戒感を示してくるかが注目される。ただ、介入などの直接的な手段はとりにくいため、ユーロ高ドル安基調は当面継続する見込み。

用語の解説

大統領選挙 米国の大統領選挙は4年に一度、11月の第1月曜日の翌日に実施される。今年の大統領選挙は11月3日。共和党は現職のトランプ大統領、民主党はバイデン前副大統領が出馬する。両党の候補以外も立候補は可能で、過去には1992年に実業家のロス・ペロー氏が第3の候補として立候補し、一時世論調査でトップに立つなど、存在感を示したことがある。今回も人気ラッパーのカニエ・ウェスト氏が出馬意向を示している。
米ISM製造業景気指数 米供給管理協会(ISM: Institute for Supply Management)が米国内の製造業約350社の購買担当役員に対するアンケートを行い、その結果を指数化したもの。各国で発表されるPMI(購買担当者景気指数)と同様の指標だが、ISMの方が指標としての歴史が長く、米国内での注目度も高い。製造業景気指数が計測月の翌月第1営業日、同非製造業景気指数が第3営業日の発表となっており、速報性が高いことも注目される理由となっている。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(7月)
8月3日23:00
☆☆☆
 4月分が41.5とリーマン・ショック以来11年ぶりの低水準となった同指数。その後2カ月連続で改善し、前回6月分は52.6と好悪判断の分かれ目である50を超える好結果となった。今回は53.6とさらなる改善が見込まれている。前回は内訳の中でも注目度が高い新規受注、生産などが記録的な回復を示すなど、景気回復に向けた期待が強まる結果だった。今回も同様の傾向が示されると、株高の動きから円売りにつながりドル円は106円台をしっかり回復する流れが期待される。
米ISM非製造業景気指数(7月)
8月5日23:00
☆☆☆
 非製造業景気指数も製造業同様に4月分が大きく落ち込み、41.8を記録。そこから2カ月連続の改善で、前回は予想の50.2を大きく超える57.1の好結果となった。5月の45.4から11.7ポイントの上昇は統計開始以来最大。前回大きく上昇した分、今回は反動もあって55.0と若干の鈍化が見込まれている。ただ、好悪判断の境である50を大きく上回っているだけに影響は限定的に。予想以上に弱めの数字が出ると、少し警戒感も。ドル円は105円割れが意識されるところ。
米雇用統計(7月)
8月7日
21:30
☆☆☆
 非農業部門雇用者数は4月に2078.7万人減を記録。その後2カ月連続で大きく回復も、3月、4月の雇用減の約1/3程度にとどまっている。店舗の再開などを受けて、雇用情勢は改善を続けているが、サンベルト地域を中心に感染第二波が懸念されており、警戒感が継続。予想は非農業部門雇用者数が163.54万人増、失業率が10.5%への改善となっているが、予想ほど改善しなかった場合、リスク警戒のドル売りが強まる可能性も。その場合、ドル円は104円台前半の先週の安値目指す可能性も。

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