2020年08月17日号

(2020年08月10日~2020年08月14日)

先週の為替相場

米中関係の悪化懸念も、株高が円安を誘う

 10日からの週、ドル円は一時107円台を付けるなど、ドル高円安の動きが優勢となった。香港やウイグル自治区の問題、TikTok(用語説明1)やウィーチャットを巡る問題などを受けて、米中関係が悪化。15日に行われる予定となっていた米中閣僚級通商協議の延期が14日に報じられたが、円安の流れを大きく変えるには至らなかった。

 週半ばまではユーロドルでのドル買いもドル円を支えた。ユーロドルは先月末に1.19台を付けた後、いったん1.16台までの調整を経て、8月6日に再び1.19台を回復し、直近高値を超えて1.1916まで上昇。その後は調整の動きが広がり、1.17台に値を落として先週を迎えた。週初は1.18ちょうど前後を付けたが、ユーロ売りドル買いの動きが広がり、1.1711まで値を落とす展開に。

 ユーロは対ポンドなどでも週前半は売りが目立っており、全般に頭の重い展開。ポンドドルは、対ユーロでのポンド買いもあって振幅が目立ったが、週半ばには1.3000台までポンド売りドル買いとドル全面高の流れに沿った動きに。

 米株の上昇がドル高につながったとみられる。トランプ大統領がキャピタルゲイン減税と中間所得者層への減税に言及したことも株高からのドル高円安に寄与したようだ。

 ドル高、円安両面から上昇したドル円は週初の105円台後半から107円台を付ける動き。107円超えでの買いには慎重な姿勢が見られ、その後調整が入るも106円台半ばを維持。木曜日の海外市場で再び107円台を付け、直近高値も更新して107円05銭まで。

 週末を前にその後は調整が入り、106円台半ばへ値を落とした。ユーロドルが1.1711から1.1864まで上昇するなど、週後半はドル安円安の動きが優勢に。ドル円以外ではドル売りが目立った分、ドル円の107円台を買い上げる勢いが見られず。

 週末に米中閣僚級通商協議の延期が報じられたことも、ドル円の重石に。米中関係の緊張もあって事前に噂が出ていたこともあり、発表時の短期的な反応は限定的ながらドル円の頭を抑える材料となった。

今週の見通し

 ドル円は上下ともにやや動きにくい状況。基調はまだ上方向とみられるが、107円台からのドル買い円売りに慎重な姿勢が見られ、積極的な取引を手控える展開に。

 8月は世界的に夏休みシーズンで、取引が低調になりがちなことも、レンジを超える積極的な動きが出にくい要因に。

 ユーロドルは基本しっかり。ここにきてオーストリアで感染者数が増加し、欧州各国の第2四半期GDPもさえずと、ユーロに対するネガティブな材料も出ているが、下がると買いが入る展開。

 先週のユーロ売りドル買い局面で1.17台を維持したことも、短期的に買いが入りやすくなっている。

 14日に米商品先物取引委員会(CFTC・用語説明2)が発表した11日付のIMM通貨先物取引のユーロ買いポジションは19万9751枚と20万枚に迫る大きさで、さすがに買われ過ぎ感もある。ただ、地合いはまだ上方向となっており、神経質な動きとなりそう。

 ユーロドルでのユーロ買いドル売りの流れが継続する中で、ドル円は上値追いにやや慎重姿勢。米議会が新型コロナウイルス対策について合意できないまま夏季休暇に入ったことも重石に。ただ下値しっかり感は強く、レンジ取引が中心か。期待は上方向で107円台半ばから108円にかけての上値抵抗水準をトライする流れだとみている。

用語の解説

TikTok 中国企業の字節跳動(バイトダンス)が開発運営するスマートフォン向けの短編動画プラットホーム。豊富な動画編集機能が若者のニーズにマッチし、世界的にユーザー数を増やしている。日本国内でのアクティブユーザー数は昨年末時点で950万人。世界での利用者数は2020年1月時点で8億人。個人情報などについて国家安全保障上のリスクがあるとして、トランプ大統領は今月14日、バイトダンスに対して90日以内に同事業を売却もしくはスピンオフすることを命じる大統領令に署名している。
米商品先物取引委員会(CFTC) 米商品先物取引委員会(Commodity Futures Trading Commission:CFTC)は、米商品先物取引委員会法に基づいて1975年4月に設立された先物取引・オプション取引全般の規制・監督・保護を行う政府機関。本部はワシントンDC。米国に拠点を持つ先物取引会社はCFTCへの登録が義務付けられている。CFTCは各取引所にそれぞれの商品先物の建玉の公表を義務付けている。各取引所は毎週火曜日の取引終了後の建玉を報告し、CFTCは当該週の金曜日東部時間午後3時半に公表する。

今週の注目指標

米民主党全国大会
8月17日
☆☆
 17日から20日にかけて米民主党の全国党大会が開催される。新型コロナウイルス感染拡大の影響で大規模イベントなどは自粛される。同大会で11月の大統領選に向けた民主党候補が正式に決定する。大統領候補としてバイデン前副大統領、副大統領候補としてハリス上院議員の選出が確実となっている。21日から24日にかけては共和党の党大会が開催され、共和党側の候補として現職のトランプ大統領、ペンス副大統領の選出が正式に決定する。この党大会を経て、大統領選が本格スタートする。話題の多いトランプ大統領であるが、株高が進むなど市場からの信頼は厚く、現在の世論調査通りバイデン氏が優勢に選挙戦を進めるとドル売り材料となる可能性があるため要注意。長期的にドル円が100円割れを試す材料となる可能性も。
米連邦公開市場委員会議事録(7月28-29日開催分)
8月20日03:00
☆☆
 7月28、29日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表される。先月のFOMCでは事前見通し通り金融政策を現状維持とした。声明や会見もこれまでの慎重姿勢を維持するものとなり、市場の反応は限定的だった。ただ、ここにきての米経済指標の力強い結果を受けて、市場では次回9月のFOMCでのフォワードガイダンスに変化が生じるのではとの思惑が広がっている。前回のFOMCの議論の中でそうした変化につながる姿勢が見られるようだと、ドル買いの動きも。ドル円は107円台回復に向けた動きも。
トルコ中銀政策金利
8月20日20:00
☆☆☆
 昨年7月から今年5月にかけて9会合連続、合計15.75%ポイントの利下げを実施したトルコ中銀。ここ2会合連続で金利据え置きを決め、今回も据え置きが濃厚。エルドアン大統領はこれまでの利下げ路線を強く支持しており、今月10日の演説で「これまでの政策金利引き下げを神は祝福。それら(金利)はさらに下がるだろう」と、さらなる利下げを望む発言を行っている。しかし、市場では逆に近いうちに利上げに踏み切る可能性が意識されている。先月後半からリラ安が加速し、対ドルでの史上最安値を大きく更新している。当局は国営銀行を通じた介入や、流動性制限の緩和などでリラ安の回避を狙っているが、市場では利上げが必要になるとの見方が広がりつつある。一部では今回の会合での利上げを見込む動きまである。利上げを実施した場合、いったんは大きくリラ買いも。リラ円は14円80銭をターゲットとした上昇が期待される。

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