2020年08月24日号

(2020年08月17日~2020年08月21日)

先週の為替相場

ドル安傾向がやや優勢

 17日からの週、ドル円は週の前半にドル安円高が進行し、一時105円10銭前後まで値を落とす動きとなった。105円の大台を維持したこともあり、その後106円台を回復する場面が見られたが、106円台での買いに勢いがなく、総じて頭の重い展開に。

 ユーロドルが一時1.1960台まで上昇(ユーロ高ドル安)するなど、ドルは全般に軟調地合い。米長期金利の低下、米国サンベルト地帯(米国内の北緯37度線以南の地域)を中心に広がる新型コロナウイルス感染第二波の動き、米中関係の緊張などがドル売りを誘った。

 世界的にも新型コロナウイルスの感染拡大が依然深刻だが、一方で経済再開の動きも広がっており、新興国からのドルへの資金移動が収まっていることなどもドル売りにつながった。

 ドル円は105円の大台を維持したことで少し買い戻しが入った後、FOMC議事録(7月28・29日開催分)を受けてもう一段のドル買いが入った。

 議事録ではイールドカーブコントロール(YCC:日銀の長短金利操作や豪中銀の3年物国債利回り目標のように短期だけでなく中長期の金利を抑制することを目標とする緩和政策)に改めて否定的な姿勢が示され、追加緩和期待が後退。次回9月のFOMCでのフォワードガイダンス変更に向けた具体的な示唆も見られなかった。

 また米議会での追加経済対策を巡る共和党と民主党の対立が膠着状態となっており、出口が見えないこともドル売りに。

 ドル円は106円20銭台まで上昇した後、いったん105円台前半に値を落としたが、週の後半にかけてポジション調整などから再び106円台を付ける動きに。もっとも大台を維持出来ずに105円台後半で週の取引を終えている。

 ユーロドルは12日に1.1710台を付けてからの上昇基調が先週半ばまで継続。一時1.1960台まで上値を伸ばした。もっとも1.20の心理的節目を前に高値追いには慎重姿勢が見られた。FOMC議事録を受けたドルの買い戻しにより1.18台前半まで下落。その後1.1880近辺まで上昇も、21日に発表されたユーロ圏PMI(購買担当者景気指数・用語説明1)や、独・仏のPMIがサービス業を中心に軒並みさえない結果となり、ユーロ売りが強まる展開に。一時1.1750台まで値を落としている。

今週の見通し

 基本的にはジャクソンホール会議(用語説明2)待ち。歴代の米FRB議長が今後の方針変更など重要な節目の説明機会として利用してきた同会議。パウエル議長は昨年から進めてきた金融政策の枠組みの見直しについて言及する見通し。

 新型コロナウイルスの感染拡大とその対応を受けて、超緩和的な政策の長期間維持など景気刺激に軸足を置かざるを得ず、枠組み見直しの議論が一時棚上げとなっていた。しかし、経済の再開とともに事態が落ち着いてきたこともあり、次回9月のFOMCで新しい方針が出される可能性が高いとみられている。

 パウエル議長はこれまでの発言の中で「すでに行っている政策手法を実際に明文化する」ことが枠組み見直しの基本という姿勢を示している。市場とFRBとの間で金融政策姿勢、特に物価目標の部分に関する認識の齟齬(そご)が指摘されており、市場の一部で2%という目標が上限のように取り扱われ、結果的に市場のインフレ期待が2%を下回っているような状況が見られる。これを改善するため、物価目標を一時的に超えることもあり得ることを明文化するなどの方法を示すのではと考えられている。

 今回のジャクソンホール会議での演説で具体案にまで言及すると、単に9月のFOMCを先取りする形となるため、どこまで踏み込んでくるのかが注目されるところ。

 枠組みの見直しを通じて、結果的に緩和策の長期的な継続期待が広がるとドル売りの材料となり得る。ドル円は105円割れを強く意識する動きが予想される。

 それ以外には目立った指標発表がなく、ジャクソンホール待ちの展開となりそう。

 リスクは米中関係の緊張か。トランプ大統領によるTikTok排除について、同アプリを運営する中国の字節跳動(バイトダンス)は、米政府を提訴する意向を示した。同アプリを巡って米中関係の緊張がさらに強まる可能性が高く、今後の不確定要因に。

 一般的な貿易関係にまで問題が広がると、リスク警戒から円買いの動きなどが強まる可能性も。

 ユーロドル、ユーロ円はしっかりの展開が継続も、ユーロ高の材料の一つとなっていた欧州の景況感改善について、先週金曜日のユーロ圏及び独仏PMIのさえない数字で水を差された格好。1.19台の重さも意識されており、大きなトレンドの転換が生じる可能性も。基本は1.1800前後を中心とした振幅となりそうだが、今月下値を何度か支えた1.1700前後のサポートを割り込むようなことがあると、一気にユーロ売りに傾く可能性があり要注意。

用語の解説

PMI PMI(Purchasing Manager’s Index:購買担当者景気指数)。企業の購買担当者に対するアンケート調査をもとに景況感を指数化した経済指標。生産、新規受注、雇用、受注残、価格など各項目に分かれて調査される。50が景況感の分岐点となっており、50を上回れば景況感が良い、下回れば悪いとなる。米ISM(供給管理協会)によるISM製造業・非製造業景気指数などもPMI調査の一つだが、PMIとだけ表記された場合、IHSMarkit社(及びその協賛企業)が各国・地域で調査・公表している指標を指す場合が多い。
ジャクソンホール会議 カンザスシティ連銀が毎年8月後半にワイオミング州の避暑地ジャクソンホールで開催する経済シンポジウムのこと。歴代のFRB議長をはじめ各国の中央銀行総裁、著名な学者などを招いて実施されることから、世界的な注目イベントとなっている。今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響でオンライン開催の形で27、28日に行われる。パウエル議長は初日午前に基調講演を行う。その他、カナダ中銀のマックレム総裁、英中銀のベイリー総裁が講演を予定している。

今週の注目指標

米共和党全国大会
8月24日
☆☆
 24日から27日にかけて米共和党の全国党大会が開催される。先週行われた民主党の全国大会でバイデン前副大統領が11月の大統領選における民主党候補として正式に指名された。今週の共和党全国大会では最終日27日にトランプ大統領が指名受託演説を行い、共和党候補として正式に指名される。今後両者による選挙戦が本格的にスタートする。現在の世論調査ではバイデン前副大統領がリードしているが、トランプ大統領側の巻き返しも十分に可能な状況。法人減税の撤廃などを公約としているバイデン前副大統領が大統領選に勝利した場合、株安からのドル安などを招く可能性があるだけに、11月の本番までは世論調査動向などを見ながら一喜一憂する展開となりうる。トランプ大統領が劣勢を跳ね返すようだとドル高に。ドル円は107円台に向けた動きもありそう。
米第2四半期GDP改定値
8月27日21:30
☆☆
 先月30日に発表された米第2四半期GDP速報値は、前期比年率-32.9%と過去最大の減少幅を記録した。ロックダウンの影響で個人消費が前期比年率-34.6%と大きな落ち込み。特にサービス業への支出が-43.5%と大幅に減少した。今回の改定値の予想は-32.5%と小幅な改善に。予想以上に6月時点での悪化が目立つようだと、ドル売りにつながる可能性も。ドル円は105円台前半でのドル買い注文を試す展開に。
パウエル議長講演
8月27日22:10
☆☆☆
 8月27、28日の日程でオンライン開催されるジャクソンホール会議。パウエル議長は27日現地時間午前の基調講演を担当している。今年の会議のテーマは「今後10年の進路:金融政策にとっての意義」となっており、議長の基調講演もそのテーマに沿った話となる。市場が期待しているほど今後の緩和見通しの長期化につながる話がなかった場合、ドル買いの反応も。ドル円は105円台がしっかりする展開となりそう。

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