2020年09月07日号

(2020年08月31日~2020年09月04日)

先週の為替相場

ドル買いがやや優勢

 8月31日からの週、ドル円はややドル買いが優勢となった。

 27日に行われたジャクソンホールでのパウエル議長講演において、低金利政策の長期維持につながるインフレ率がターゲットである2%を超える状況の容認などが示されたことや、28日の安倍首相の辞任表明などを受けてドル円は105円台前半まで下落。その流れを受け、週明けはドル安円高圏で始まったが月曜日の海外市場で106円台を一時回復するなど、すぐに堅調な動きに。

 105円の大台を維持して買い戻しが入ったことで下値しっかり感が見られた。ユーロドルが1日の海外市場で心理的に重要な節目として意識されていた1.2000を一時超えるなど、週の前半はドル全面安基調が目立った。しかし、ユーロドルは大台超えをいったん果たしたことで達成感が広がり、その後はユーロ売りドル買いが優勢に。

 1日の米ISM製造業景気指数の好結果などもドル買いをサポート。ドル円は106円前後でのもみ合いを経て、木曜日に106円55銭を付けるところまで上値を伸ばした。

 もっとも高値を付けた後はいったん調整の動きに。市場は4日の米雇用統計を意識し、積極的な売り買いが手控えられた。直近のドル買い分の調整が入り、106円20銭前後で雇用統計の発表を迎える格好となった。

 米雇用統計は非農業部門雇用者数(NFP)が前月比137万人増と、ほぼ事前予想(135万人増)通りの結果となったが、失業率が前月の10.2%から8.4%に急低下した。予想の9.8%と比べても相当低い水準(低い方が良い数字)となっている。

 この結果を受けて一時ドル買いが強まったが、ドル円の高値は106円51銭までと、木曜日の高値106円55銭に届かず、限定的なものにとどまった。

 多くの業種で雇用の回復が見られたが、これまで大幅な雇用回復を支えてきたレジャー及びホスピタリティ部門(用語説明1)の雇用増が17.4万人と、前月の62.1万人、前々月の197.7万人から大きく鈍化。今後の雇用回復ペースに懸念が生じたことなどがドルの上値を抑えた。

 事業所調査ベース(用語説明2)の非農業部門雇用者数と家計調査ベースの失業率で雇用増の認識が238万人もずれており、統計の混乱が意識されたことも、ドル買いに慎重な姿勢を誘った。

 また、7日月曜日の米国およびカナダ市場がレーバーデーで休場となることも、積極的なドル買いを控える要因となった。

 ユーロドルは雇用統計発表後に木曜日の安値1.1789を割り込む1.1781までユーロ売りドル買いが進んだ。しかしその後はドル円同様に積極的なドル買いには慎重な姿勢が見られ、同統計発表前の1.1850前後までいったん値を戻し、1.18台前半で週の取引を終えた。

 ユーロドルが先週前半に1.20台を付ける中で、一時127円台まで上値を伸ばしたユーロ円は125円台後半での推移。ユーロドルの調整局面で125円台前半まで値を落とす場面も、下がったところでは買いが入る展開に。

今週の見通し

 ドル安の流れが大きく変わるか。それほど大きな米国の材料はないものの、雇用統計、ISM景況感指数などの重要イベントをこなしたことで、次の流れが意識される週となっている。

 ドル円は安倍首相の辞任表明後のドル売り円買い局面で105円台を維持したこため、下値しっかり感が出ている。ユーロドルが1.20をいったん示現したことで一服感が広がり、ドル全面安ムードが落ち着くようだと、もう一段のドル高円安トライも予想されるところ。

 106円台半ばから107円にかけてはドル売り円買い注文が残っているようだが、下値しっかり感が続くようであれば上値トライの期待が強まる。

 ユーロはECB理事会を前に突っ込んだユーロ買いには慎重姿勢も。先週節目となる1.20を付けた後、レーンECB専務理事兼チーフエコノミストがユーロ高をけん制する発言を行い、口先介入かと注目された。

 今週の理事会後の会見でラガルドECB総裁が同様にユーロ高への懸念を示すようだと、いったんユーロ売りの動きが強まる可能性も。もっとも先週末の下げ局面で1.17台での売りには慎重だったように、積極的なユーロ売りも見られず。地合い的には下方向のリスクが高いと予想され、1.1750割れを意識。ただ、中長期的なトレンドはまだユーロ高ドル安という印象で、流れが変わるかどうか、もみ合いの中で次の方向性を探る展開か。

用語の解説

レジャー及びホスピタリティ部門 米国の雇用統計は全体の数字だけでなく、失業率であれば人種、性別、年齢、地域など雇用者の状況別に細かく調査されている。非農業部門雇用者数であれば、製造業・非製造業、民間・政府部門といった大きなくくりに加えて、製造業であれば、耐久財・非耐久財、さらには自動車、機械などといった具合に細分化したデータも示される。この中で、レジャー及びホスピタリティ部門は、スポーツ・演劇、美術館、カジノなどのレジャー部門と、ホテルなどの宿泊業、レストラン・バーなどの飲食店業といったホスピタリティ部門を含めた接客業というくくり。中でもレストラン・バーなどの業種は雇用全体の中に占める割合がかなり大きい業種として知られており、新型コロナウイルスの感染拡大前となる2月時点で1200万人を超える雇用者が属する業種となっていた。
事業所調査・家計調査 米雇用統計は労働省労働統計局が事業所調査と家計調査という2つの調査を基に算出している労働統計。事業所調査は農業を除く約65万の事業所を対象に毎月12日を含む週の給与支払い動向を調査する。この調査により非農業部門雇用者数、平均時給などが示される。家計調査は約6万世帯を対象に毎月12日を含む週の労働状況を調査する。こちらを基に失業率、労働参加率などが示される。

今週の注目指標

カナダ中銀政策金利
9月9日 23:00
☆☆
 カナダ中銀金融政策理事会が行われ、9日23時に結果が発表される。政策金利は現行の0.25%で維持される見込み。先月カナダ中銀はインフレターゲットについて初めて国民の意見を募集すると発表した。募集の期限は10月1日のため、この件についてコメントしにくいという状況もあり、波乱要素の少ない展開が見込まれる。需要減懸念などからNY原油の売りがここにきて目立っており、先行きに対する警戒感を強調してくるようだとカナダ売りも。カナダ円は目先80円台半ばがターゲット。その下は8月19日に付けた79円89銭がポイントに。
ECB理事会政策金利発表
9月10日 20:45
☆☆☆
 主要金利をはじめとする3つの政策金利は現状維持の見込み。新型コロナウイルス対策での量的緩和策であるPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)についても6月の理事会で拡大が示されたことから、今回は現状維持見込み。注目はユーロ高の進行を受けたラガルド総裁の会見となりそう。政策面での影響力が大きいレーン専務理事兼チーフエコノミストがユーロ高をけん制しており、ラガルド総裁もそれに乗る可能性は高い。この場合ユーロドルは1.1700を試す場面が見られるか。
米消費者物価指数(8月)
9月11日 21:30
☆☆☆
 米物価関連で最も注目される同指数。とはいえ、新型コロナウイルスの影響で景気刺激に政策の軸足が置かれているため、注目度は若干低い。事前予想は前年比+1.2%と若干上昇。食品とエネルギーを除くコアの前年比は+1.6%とまずまずの数字に。インフレターゲットの対象であるPCEデフレータよりも少し高く出ることが多く、予想前後の数字であれば問題なさそう。予想を超えて物価上昇が鈍化するようだと、ドル売りの動きも。ドル円は105円80銭前後が目先のサポートか。

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