2020年09月14日号

(2020年09月07日~2020年09月11日)

先週の為替相場

リスク警戒のドル買い円買いがやや優勢

 9月7日からの週は、リスク警戒の動きがやや強まり、ドル高円高の動きが広がった。

 9月3日以降米株式市場が調整色を強める中、リスク警戒の動きが広がった。ドル円は106円30銭台から105円80銭割れまで一時値を落とす展開に。もっともその後106円台を回復するなど一方向の動きにはならず。

 ドル円以外ではドル買いの動きが優勢となっており、ドル円でも突っ込んだ売りには慎重姿勢が見られた。ポンド円を中心にクロス円の売りが目立ち、戻りは鈍い。

 リスク警戒の動きがドル高に働いたことで、ユーロドルが先週半ばに1.1750台まで値を落とす場面が見られた。ECBのチーフエコノミストでもあるレーン専務理事(用語説明1)がユーロ高に強いけん制姿勢を示したこともユーロ売りドル買いの動きを誘った。

 金融政策自体は現状維持見込みも、ラガルド総裁の会見などが注目されたECB理事会。総裁は焦点となっていたユーロの水準について、注視しているとしたものの、政策のターゲットではないと発言。市場ではユーロ高容認とも取れるという見方が広がり、一時1.1910台までユーロ高ドル安が進行した。

 もっともこの動きも続かず1.1800台まで値を落とすなど、振幅が目立つ展開に。

 方向性が出たのはポンド。ポンドドルは9月1日に付けた1.3480台からの下落基調が加速。一時1.2760台までと700ポイント超の下げに。ジョンソン英首相が対EU通商交渉について、デッドラインを10月15日に前倒しをすると発表。また、昨年のEUとの合意の一部修正が必要になる可能性がある国内法の提出方針を示すなど、EUに対する強硬姿勢を表明し、市場の警戒感を誘った。年内が交渉期限となっているEU通商交渉に関しては、従来10月末がデッドラインとされていた。

 EU側も当該国内法について今月中の撤廃を求めるなど、両者の態度が硬化しており、交渉決裂でのハードブレグジットの懸念が広がったとしてポンドの売りが強まった。

 ポンドは対ユーロや対円でも下げが目立つ展開。ポンド円は1日に142円70銭台から135円50銭台まで7円以上の下げとなっている。

今週の見通し

 やや頭の重い展開も、積極的なドル売り円買いには慎重姿勢。

 ドル円は106円ちょうど前後を中心としたレンジ取引が意識されるところ。リスク警戒の動きがドル高・円高に作用しており、ドル円でのドル安を抑える格好に。

 ただ、今週はFOMC(米連邦公開市場委員会)が予定されており、その中で示されるドットプロット(用語説明2)次第では、もう一段のドル売りも。今回のFOMCで2023年までの政策金利見通しが示されるが、ゼロ金利政策の維持見通しが強まると、ドル売りにつながる可能性が高い。

 こうした状況からややドル安方向のリスクを意識してのレンジ取引が見込まれる。

 ユーロはやや不安定な展開か。ECB理事会ではユーロ高に対する強いけん制が見られなかったが、レーンECB専務理事発言などから、ある程度気にしていることは間違いないところ。高値でのユーロ買いには慎重も、基調としてユーロ高が継続。

 ポンドはさらに不安定。EUとの通商交渉の難航が原因だ。英国は、10月15日をデッドラインにすると一方的に前倒しを宣言したが、もともとの年末を期限として事実上10月末がデッドラインという期日でも間に合わないとの見方が強かっただけに、成立しない可能性が高い。これまで何とか避けようとしてきたハードブレグジットが現実味を帯びており、ポンド売りの材料。

 今月に入って相当ポンド安が進んでいるが、ハードブレグジットが確定すると、これまでどころではないポンド売りにつながる可能性がある。

 こうした状況から、ドル円は105円前半を意識する展開か。ポンド円などの動向次第では105円割れも。

用語の解説

レーン専務理事 フィリップ・R・レーン(Philip R. Lane)。アイルランドの経済学者。米コロンビア大学准教授などを経てアイルランドの大学で教鞭をとり、2015年にアイルランド中銀の総裁に就任。IMFやFRBニューヨークなどへの留学経験を持つ国際派。2019年6月から前任のプラート氏の後を受けて、ECB専務理事兼チーフエコノミストに就任した。
ドットプロット 年8回開催される米FOMC(連邦公開市場委員会)のうち、半分の4回、3月・6月・9月・12月の会合では、FRBメンバーによる経済成長率、失業率、物価、政策金利見通しを示すプロジェクション・マテリアルが同時に公表される。その中で、各メンバーによる今後数年及び長期の政策金利の見通しをドットの形でチャート上に示すのがドットプロット。今回からこれまでの2022年末時点での政策金利見通しに加え2023年末時点での予想が加わる。

今週の注目指標

米連邦公開市場委員会(FOMC)
9月17日 03:00
☆☆☆
 15、16日と米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。政策金利(現在は0.0%~0.25%)、量的緩和策(QE)のいずれも現状維持の見込み。注目はパウエルFRB議長の会見とFOMCメンバーによる経済成長・物価・雇用・政策金利などの見通しを示すプロジェクション・マテリアル。今回から2023年の予想が加わる。政策金利動向だけでなく、新型コロナウイルスの影響で大きく乱れる経済成長見通しの動向などにも要注目。しっかりとした成長見通しが示されるようだとドル買いに安心感が広がり、ドル円が107円台を試す材料にも。
日本銀行金融政策決定会合
9月16日・17日 
☆☆
 日本銀行金融政策決定会合が16、17日に開催される、結果発表は17日正午前後。その後17日午後3時半ごろから黒田日銀総裁による記者会見が予定されている。政策金利をはじめ金融政策は現状維持の見込み。ここにきて中国向けの自動車輸出などが好調で、先週は、福岡、大阪、金沢などの各支店は担当地区の景気判断を引き上げた。今回の会合で日本全体の景気判断を引き上げてくると、日本経済再生への期待感が広がり、リスク選好の動きが強まる可能性も。ただ、ドル円は下値しっかり感が強まっており、105円台での売りには慎重姿勢も予想される。
英中銀金融政策会合(MPC)
9月17日 20:00
☆☆☆
 英中銀金融政策会合(MPC)の結果発表が17日に行われる。今回はスーパーサーズデー(MPCの結果、議事要旨、四半期インフレ報告、総裁会見が行われる回、2月、5月、8月、11月の会合が該当する)ではなく、金融政策は現状維持見込み。ただ、ここにきて英経済にさらなる支えが必要という見方が強まっているほか、ハードブレグジットへの警戒感もあり、追加緩和期待が広がっている。声明や議事要旨で今後の追加緩和が示唆される可能性が十分にある。この場合ポンド売りの動きがさらに強まり、ポンドドルは1.1750割れも。

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