2020年09月28日号

(2020年09月21日~2020年09月25日)

先週の為替相場

ドル買い優勢、リスク警戒続く

 9月21日からの週は、ドル買いの動きが優勢となった。祝日で東京市場が休場となった週の初めはドル高と円高が交錯。英国やユーロ圏での新型コロナウイルスの感染拡大の動きが週末に報じられ、英国で保健相がロックダウン再導入の可能性を示唆したほか、ドイツ南部の中心都市ミュンヘンで集会の制限導入などが発表される中でリスク警戒の動きが広がった。

 ドル円は一時104円ちょうど前後まで値を落とす展開となったが、大台割れでの売りに慎重姿勢が見られると、その後はリスク警戒からのドル買いの動きが優勢となり、ドル円も値を戻す展開に。

 いったんは105円手前が重く、少しもみ合いとなったが、ドル全面高の勢いが強く、22日の海外市場で105円台を回復。その後もしっかりとした展開が続き、週の後半には105円台後半を付ける動きとなった。

 ドル円でのリスク警戒からのドル買いの動きは、同じくリスク警戒で強まった円買いにある程度相殺されたこともあり、値幅自体は限定的なものに。そうした要因のないユーロドルやポンドドルでのドル高はより勢いのある動きを見せた。

 ユーロドルは先週初めの1.1870台から週末には1.1612前後まで値を落とす展開となった。

 フランス、スペイン、ドイツ南部などでの新型コロナウイルスの感染拡大の動きが強まっており、週明けの欧州株の軟調地合いなどもあって、ユーロ売りの動きが広がった。

 24日のECBによるTLTRO3(条件付き長期リファイナンスオペ第3弾)でのユーロの供給が1745億ユーロと事前予想の上限付近となり、ユーロ売りを誘った面も。

 ポンドドルも売りが目立つ展開となった。先週初めは1.29台後半を付ける動きが見られたが、週の半ばに1.2675前後まで値を落とし、その後は1.27台を中心とした推移となった。

 英国でも新型コロナウイルスの感染拡大でロックダウン再開の懸念が広がっていることがポンドの重石に。ベイリー英中銀総裁が22日に行ったWEB上での講演で、マイナス金利について触れたことなどもポンド売りにつながった。

 昨年合意したEU離脱協定の一部修正が必要となる英国の国内市場法案について、21、22日の両院委員会の審議で承認され、下院本会議に送られることになったことなどもポンド売りの動きを誘っている。EU大統領が月内の法案廃案を求めているほか、EU首脳関係者が同法案成立の場合、FTAを批准しないと発言するなど、EU側の反発が強く、年内が期限となる英国とEUとの通商合意に懸念が広がっていることなどが重石に。

 クロス円は週の初めに値を落とした後はもみ合いに。ユーロドルは21日に123円台後半から122円50銭台まで値を落とす動きとなったが、その後はユーロ安とドル円の上昇に挟まれる形で、123円を挟んでのもみ合いが続いた。

今週の見通し

 2日の米雇用統計を意識。

 リスク警戒の動きが広がる中で、市場は2日の米雇用統計(9月)に注目している。

 米国中西部を中心とした新型コロナウイルスの感染拡大の動きや、追加経済対策の遅れなどが警戒感を誘っているものの、経済指標動向を見る限り米経済の再開自体は順調。今後の不透明感が広がる中で、最も注目度が高く、今後の米経済への影響も大きい雇用状況を確認しようという意識が強い。

 前回8月分の雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)がほぼ事前予想通りながら前月比137.1万人の増加と堅調な雇用増加傾向を維持した。また、市場が驚いたのが失業率で、7月分の10.2%から一気に8.4%まで低下した。事前の予想値は9.8%で大きな乖離となっている。

 FRBが重視しているとされるU6失業率(用語説明1)も7月の16.5%から14.2%に大きく低下するなど、米国の雇用状況の強さを感じさせる結果となった。

 今回の雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比86.5万人増と、前回から伸びが鈍化も、堅調な数字が予想されている。失業率は8.2%と前回からさらに改善が見込まれている。

 直近の経済指標の強さから、米経済の再開が順調に進んでいると期待されており、予想前後の数字は十分に期待できるところ。

 予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、リスク警戒の動きがやや後退し、ドル売り円売りの動きが広がる可能性も。ドル円の反応はやや難しいが、基本的にはしっかりの動きが期待され、106円台に向けた動きが強まりそう。

 ただ、今回の雇用統計にはやや不安要素も。前回の雇用統計では5月以降の大幅な雇用増を支えたレストラン・飲食部門の雇用増が13.36万人と、堅調ながら5月以降の146.12万人増、146.79万人増、52.53万人増と比べると増加ペースがかなり落ち着いた。2月には1230万人いた同部門の雇用者は、ロックダウンによる店舗閉鎖などを受けて4月には622.7万人とほぼ半減したが、その後981.5万人まで戻してきており、今回以降も伸びたとしても落ち着いた数字にとどまると見込まれている。その他の部門にしても一時のような大幅増は期待できず、全般に堅調な雇用の回復が期待される中で、どこまで雇用者数の増加が積み上がるかが注目される。

 また、前回は事業所調査(用語説明2)の非農業部門雇用者数がほぼ予想通り、家計調査の失業率が予想よりもはるかに強い数字と、調査方法の違いによって予想からの乖離に差があった。前回強めに出た家計調査の数字に反動が出た場合、予想外に弱めの数字となる可能性も。

 雇用統計が予想よりも弱く出た場合は、リスク警戒の動きが一気に強まる可能性。ドル円はドル買い円買いの動きの中、こちらも反応が難しいが、やや円買いが優勢になり104円台へ再び値を落とし、103円台を意識する展開か。

 雇用統計の先行指標となる30日の米ADP雇用者数、1日の米ISM製造業景気指数なども併せて注目したい。

用語の解説

U6失業率 米国の失業率はU1からU6まで(Uは失業率Unemploymentの頭文字)の6段階に分けて発表される。一般的な失業率はU3となる。U6失業率は通常の失業率に加え、正規雇用を望みながら雇用状況により非正規での雇用に従事している人や、就職する意思はありながら、雇用市場の状況を見て求職活動自体をあきらめてしまっている人を含んだ失業率で、不完全雇用率とも呼ばれる。
事業所調査 米国の雇用統計は事業所調査と家計調査という2つの調査方法からなる包括的な統計となっている。事業所調査は農業部門を除く全米約65万の事業所を対象に、12日を含む週の給与支払い状況を調査したもので、非農業部門雇用者数や平均時給などのデータの元となる。家計調査は全米約6万世帯の生産年齢とされる16歳以上の人を対象に12日を含む週の勤労・求職などの状況を調査したもので、失業率、労働参加率などのデータの元となる。

今週の注目指標

米ADP雇用者数(9月)
9月30日 21:15
☆☆
 前回8月の米ADP雇用者数は前月比100万人増の事前予想に対して42.8万人増にとどまった。7月分は速報時の16.7万人増から21.2万人増に上方修正された。今回の予想は65.0万人増と前回から雇用増が見込まれている。もっとも、前回を含め非農業部門雇用者数(NFP)の結果と乖離しており、注目度がやや低下傾向にある。予想から大きく乖離しない限り相場への影響は限定的か。予想を大きく上回ると雇用統計本番への期待感につながり、ドル円は106円台を試す可能性も。
米ISM製造業景気指数(9月)
10月01日 23:00
☆☆☆
 8月の米ISM製造業景気指数は、予想を超える56.0と2018年11月以来の高水準となった。7月は54.2。内訳の中でも今後の経済への影響力が大きいこともあって注目度が高い新規受注が67.6と2004年1月以来の高水準となった。生産などその他重要指数も強めの数字に。ただ雇用部門は6カ月ぶりの高水準も46.4と好悪判断の境となる50を13カ月連続で下回っている。今回は55.9と前回並みの数字が見込まれている。雇用部門の数字と合わせて注目される。雇用部門が50を超えてくるようだと一気にドル買いが強まる可能性も。106円台に乗せる可能性は十分にありそう。
米雇用統計(9月)
10月02日 21:30
☆☆☆
 非農業部門雇用者数の予想は86.5万人増と前回の137.1万人増から伸びが鈍化するものの、依然として堅調な雇用の回復が見込まれている。サンベルト地帯(米国の北緯37度線以南の地域、従来は農業地帯であったが、現在は情報産業、石油産業などが発達している)を中心に新型コロナウイルスの感染拡大の動きが広がっている。レストランの屋内営業に対する制限が米国の一部地域で継続されるなど、依然として厳しい状況にあることから、予想ほど雇用が回復しない可能性がある。この場合は一気にリスク警戒が強まり104円台を意識する展開も。
 前回1.8%ポイントも急低下した失業率は、さらに低下して8.2%となると見込まれている。ただ、前回強めに出過ぎた分の反動が来ることも十分に予想され、5カ月ぶりに前回から悪化する可能性も。この場合もリスク警戒からの円買いが強まりそう。ドル円は104円台後半に。非農業部門雇用者数と失業率がともに弱く出た場合は、円買いの勢いが加速し、104円台前半が視野に入ってくる。

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