2020年10月19日号

(2020年10月12日~2020年10月16日)

先週の為替相場

リスク警戒の動きがやや優勢

 10月12日からの週は、米追加経済対策協議の難航などを受けてリスク警戒の動きが広がった。欧州では新型コロナウイルスの感染が再び大幅に拡大し、大都市圏を中心に新たな行動制限をかける動きが強まった。また英国とEUとの自由貿易協定(FTA)交渉について、目途とされた15、16日のEU首脳会議を迎えても交渉がまとまらず、こちらも懸念材料となった。

 ドル円はリスク警戒からの円買いに押されて105円00銭台まで下落したが、大台を維持し、その後少し値を戻す展開に。リスク警戒の動きがドル買い円買いに働き、ドル円を除くとドル買いの動きが目立ったことが、ドル円の下値での売りを抑える格好となった。

 週明けはややドル売り。コロンブスデーの祝日で銀行や政府機関が休業となり、取引参加者が少ない中で、市場が開いている米株式市場が堅調な動きを見せ、リスク選好でのドル売りが広がった。ドル円は105円20銭台に値を落とす場面も、値幅は限定的。ユーロドルは1.18台を付ける動きが見られた。

 その後米ジョンソンエンドジョンソンが新型コロナウイルスのワクチン開発について、第3段階(用語説明1)に入り世界的に実施していた臨床試験の一時中止を発表したことで、ワクチンの早期開発期待が後退。米追加経済対策協議の難航なども懸念材料。リスク警戒がドル買いにつながっており、ドル円が105円台半ばを回復したほか、ユーロドルが1.17台前半に値を落とす展開に。

 ポンドは英国とEUとの自由貿易協定(FTA)に関する協議が難航していることが重石に。15日からのEU首脳会議を前に、14日に会議の総括草案が報じられ、その中で合意なき離脱に備えた準備の強化をEU加盟国に要請との内容があり、一気にポンド売りが強まる場面も見られた。ポンドドルは1.2863前後まで。

 その後、英政府が合意の期限としていた15日を過ぎても交渉を継続するとの観測を関係者が示したことなどをきっかけに、ポンド買いドル売りの動きが広がった。ポンドドルは13日から14日ロンドン午前にかけての下げ分を解消し、1.30台後半まで上昇する展開に。

 対ポンドでは0.9120台から0.9000台までユーロ安ポンド高となったユーロも、対ドルでは買いが入り、ユーロドルは1.1720前後から1.1770台まで買いが入る場面が見られた。もっともその後はユーロ売りの動きが優勢となっており、週後半には1.16台を付ける動きを見せている。

 クロス円の売りもあって、リスク警戒からの円買いにドル円は105円00銭台まで下落したが、105円の大台を維持。その後はポジション調整もあり105円50銭近くを付けるも、上値も重くもみ合いとなった。

今週の見通し

 政治情勢などの動向次第の展開となっている。

 米国の追加経済対策については、下院民主党のトップであるペロシ下院議長が、大統領選及び上下両院選挙のある11月3日以前の合意について、20日いっぱいを期限として米政府と協議する姿勢を週末に発表。

 合意が成立した場合、米株式市場の上昇につながり、リスク選好のドル売り円売りが進む可能性があるだけに、協議をにらんで週の前半は様子見ムードが広がる展開に。

 英国とEUとの自由貿易協定(FTA)に関する協議については、先週末にジョンソン英首相が、EUが根本的に姿勢を変えない限り協議から手を引き、従来目指していたカナダ型ではなく、オーストラリア型の合意(用語説明2)を結ぶ準備をするべきと発言。もっとも、協議自体の継続を示したことで、市場は協議の進展待ちとなっている。

 新型コロナウイルス関連では欧州での感染拡大と行動制限の動向が引き続き注目されるほか、ワクチン開発の進展状況も相場に影響してくる。週末には米製薬大手ファイザーがドイツの企業と共同開発中で、現在第3段階の臨床試験中のワクチンについて、11月後半にも使用許可申請へと報じられた。ジョンソンエンドジョンソンは治験中止となっているが、その他企業でもワクチン開発が進んでおり、好材料が出てくるか注目される。

 今後の大きな流れにつながるこれらの動向の進展待ち。結果次第で上下ともに大きな動きが期待されるだけに、ある程度の進展が出るまでは動きにくい面も。

 米大統領選が佳境に入っていることも、市場の様子見ムードに拍車をかけている。バイデン氏が世論調査で依然として大きくリードする。市場ではバイデン氏の勝利を織り込む動きも見えてきているが、2016年は10月半ば時点で大きくリードしていたクリントン候補が逆転されたこともあり、慎重な姿勢に。もっとも前回と比べてもリードが大きく、じりじりと織り込みが進む流れに。

 米追加経済対策の合意が見られた場合はいったんドル売り円売りに。ドル円では円売りの勢いが勝るとみられ、106円台に向けた動きが期待される。

 英国とEUとの通商協議は、英国が事実上のハードブレグジットを選択した場合はポンド売りの動きに。ユーロも対ポンドでの買いはともかく、対ドル、対円では売りが出そう。

 ポンド円は135円割れが短期のターゲット。ハードブレグジットが確実になるとさらなる売りも。

 ユーロ円は123円割れが意識されるところ。9月の安値122円38銭を割り込むと、大きな売りにつながる可能性も。

用語の解説

第3段階 新薬開発における臨床試験(治験)は、一般的に3段階に分けて実施される。第1段階では少数の健康な成人を対象に、少量から徐々に薬の量を増やして安全性や吸収・排出の具合などを調査する。第2段階ではその薬が対象とする患者の少数に協力を仰ぎ、薬の治療効果と副作用の状況などを調査する。投与量や服薬時期なども調査される。第3段階では多数の患者を対象に最終的な効果と安全性を調査する。
カナダ型・オーストラリア型の合意 英国とEUとの貿易協定について、EUはノルウェー型合意を主張。これはEU市場への完全アクセスを得る代わりに、EUのルールや裁判所に従う方式を示している。一方、英国は双方の市場を開放し、輸出された製品は先方の規制に準拠する必要があるが、いくつかの分野でEUのルールの完全適用を避けるカナダ型の合意を主張してきた。カナダ型で同意できない場合は、限定的なパートナーシップの枠組みで合意しているものの、事実上WTOルールが適用されているオーストラリア型の合意を選択するとしている。これは事実上のハードブレグジットとなる。

今週の注目指標

トルコ中銀政策金利
10月22日 20:00 
☆☆☆
 前回予想外の利上げに踏み切ったトルコ中銀。もっとも依然として物価(消費者物価指数前年比)より低いこともあり、実質金利がマイナスとなっている。そのため今回の理事会でも連続利上げに踏み切る可能性が指摘されている。予想は11.75%と1.50%の利上げ。直近9月の消費者物価指数前年比が11.75%であり、予想通りの引き上げが実施されると、実質金利のマイナスが解消される。これはトルコリラの買い材料となる。アルメニアとアゼルバイジャンの軍事衝突動向次第ではあるが、トルコリラ円買い戻しのきっかけとなる可能性。13円台半ばを超えるかがポイントに。
米大統領選候補者討論会
10月22日 
☆☆☆
 15日に予定されていた第2回大統領候補者討論会が中止となり、本来3回目となるはずであった22日の討論会が2回目で最後となる。世論調査ではバイデン前副大統領がリードしている。バイデン陣営とすると、大きな失点がなければリードを保って選挙本番を迎えられる可能性が高まる。一時はバイデン氏が勝利すると、米国株には悪材料という見方が強かったが、勝利の結果、民主党の大型追加経済対策が実現する可能性が高まるとして、株式市場への影響は限定的とする見方が広がっており、無難に討論会が過ぎてもリスク警戒の動きは限定的か。トランプ氏が勝利した場合は株高という見方は継続しており、討論会でトランプ氏が大きな優位を見せるとリスク選好での円売りも。ドル円は106円台を試す可能性。
ユーロ圏PMI(10月・速報値)
10月23日 17:00 
☆☆☆
 ユーロ圏及び独・仏などユーロ圏主要国の製造業及び非製造業PMI(購買担当者景気指数)が発表される。ここにきて欧州で新型コロナウイルスの感染拡大が広がり、大都市圏を中心に新たな行動制限をかける動きが見られる中、景況感の悪化が懸念される。ユーロ圏及び独仏のPMIは製造業、非製造業ともに前回を下回る見込み。予想を超える悪化が見られると、ユーロ圏の景気先行きへの懸念につながり、ユーロ売りの動きに。ユーロドルは9月の安値1.1612前後がターゲットとなりそう。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。