2020年10月26日号
先週の為替相場
米追加経済対策に関する協議をにらむ
10月19日からの週は、ドル安の流れがやや優勢となった。
週の前半は米追加経済対策の早期合意期待からのドル安が目立つ展開に。リスク選好の流れがドル安円安につながり、ドル円は20日の海外市場で105円70銭台を付けるなど、円売りの動きが勝る場面も見られたが、その後ドル売りの動きが強まった。
米民主党のペロシ下院議長がホワイトハウスとの追加経済対策の協議について、大統領選前の合意の可能性を示したことなどが市場の期待感につながった。
ユーロドルが週初の1.1700台から一本調子で上昇を見せるなど、リスク選好がドル売りにつながる展開の下で、ドル円も売りに転じると、21日の海外市場で節目の105円ちょうどをしっかり割り込んでドル売り基調が加速。一時104円34銭を付ける動きが見られた。
安値からは値を戻したものの、戻りは鈍く、週後半は104円台後半でのレンジ取引となった。
注目された22日(日本時間23日午前10時から)の米大統領候補者討論会は、両者ともに決め手に欠いた印象で、バイデン候補が優勢という討論会前の状況に目立った変化はなく、相場への影響は限定的に。
ユーロドルはドル全面安基調の中で1.1880前後まで上昇。20日にはEUが初めて発行したソーシャルボンド(用語説明1)に需要が集まり、他のEU共同債の発行に対する安心感が広がる中で、EUの景気回復に追い風との期待が広がる形でユーロ買いが入る場面も見られた。
その後はいったん調整が入り、ユーロドルも1.1780台を付ける動きが見られたが、週末にかけて再びドル安基調が優勢となる中で、1.1860前後を付けるなど基調はしっかり。
ユーロ円は週前半のユーロ買いと円売りの動きにいったん大きく上昇。週初の123円台前半から125円ちょうど前後を付ける動きを見せた。その後ドル円で円買いが進む中で高値から調整が入り、さらに週の後半にユーロの調整が入る局面で123円40銭台まで一時値を落とした。週末にかけては買い戻しされ124円台を回復。
22日のトルコ中銀金融政策理事会は、予想外の金利据え置きを決定した。9月の会合で利上げに踏み切ったものの、依然として直近のトルコ消費者物価指数(前年比)11.75%よりも政策金利10.25%の方が低く、実質金利(用語説明2)がマイナス状態になっていたこともあり、今回の会合で利上げに踏み切るという見通しが圧倒的であった。予想外の据え置きを受けてリラ安が進み、対ドルでトルコリラの史上最安値を更新する動きとなった。対円でも13円40銭前後から13円10銭台に急落した。
今週の見通し
米追加経済対策に対する市場の注目が依然として大きい。
民主党のペロシ下院議長とホワイトハウスのメドウズ首席補佐官は、週末に米CNNの連続インタビューに答え、互いの姿勢を批判して、合意が厳しい状況を示した。もっとも両陣営とも早期の合意の可能性を捨てておらず、今週中の合意の可能性を市場も意識する展開に。
大統領選前に合意が実現すると、リスク選好の動きが強まるとみられる。ドル安円安の動きが見込まれ、ドル円での動きは限定的なものにとどまるとみられるが、株高からの円安がやや勝り105円台を回復する場面が期待されるところ。
ユーロドルやポンドドル、さらに豪ドルドルなどはドル安からの上昇期待が強まる。豪ドルに関しては、新型コロナウイルスからの経済回復の足を引っ張っているビクトリア州での感染第二波の動きが収まりつつあり、4カ月ぶりに直近24時間での新規感染者数がゼロになり、買いが入りやすい地合いとなっている面も。
もっとも、合意が難しいという見方も根強い。民主党案に比べてはるかに小さい額での対策を主張する共和党陣営を考慮して、米政府が大統領選前の合意をあきらめる姿勢を示すと、リスク警戒の動きに。ドル円は104円台前半から104円割れに向けた動きも意識される。
欧州通貨などでのドル買いが進む可能性があり、ユーロドルは1.1750を試す動きもありそう。
3日の米大統領選はバイデン候補の優勢が続く。直近世論調査でも平均8%ポイントほどのリードを保っており、トランプ大統領の巻き返しが目立たない状況。市場はバイデン氏の勝利を織り込む動きとなっており、世論調査動向や選挙関連報道でよほど大きな変化がなければ今週中の相場への影響は限定的か。
用語の解説
ソーシャルボンド | 社会的課題の解決を目的としたプロジェクト(ソーシャルプロジェクト)のための資金調達を目的とした債券のこと。国際資本市場協会(ICMA:International Capital Market Association)が定めたソーシャルボンド原則に則って発行され、第三者機関から原則の要素に適合していることが確認される必要がある。 |
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実質金利 | 政策金利や市中金利などの見掛け上の金利(名目金利)から、物価変動の影響を差し引いたものを実質金利という。本来の定義では名目金利から予想物価上昇率を差し引くが、予想物価上昇率の正確な測定が難しいこともあり、一国の実質金利を計算する場合は、政策金利から消費者物価指数前年比を差し引いて算出することが一般的。 |
今週の注目指標
日銀金融政策決定会合 10月29日 ☆☆ | 日銀金融政策決定会合は金融政策の現状維持見通しでほぼ一致している。変化の可能性があるとすると、新型コロナウイルス対応での企業向けの資金繰り支援である「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ」の期限延長。3月に決定した同オペについては、当初9月末が期限として定められ、5月の理事会で来年3月末までに延長された。まだ期限に余裕があることもあり、今回の会合では据え置きが見込まれているが、早めに延長を決めた場合、日銀の対応への姿勢が意識されてやや円安となる可能性も。ドル円が105円台にしっかりと乗せる材料となる可能性も。 |
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米第3四半期GDP速報値 10月29日21:30 ☆☆☆ | 新型コロナウイルス感染拡大の影響で米国の第2四半期GDPは前期比年率31.4%減と史上最大の落ち込みを記録した。その後ロックダウンの緩和などにより経済活動の再開が進む中で、第3四半期GDPは前期比年率32%増と過去最大の伸びが期待される状況となっている。前回は個人消費と民間投資がともに大きく落ち込んだ。33.2%減と大幅なマイナスとなり、寄与度でも24.01ポイントと各項目の中で最大となった個人消費については、小売売上高が新型コロナウイルスの感染拡大前の水準を超えるなど、回復が顕著となっており、今回はV字回復を支えると期待されている。こうした個人消費の回復が前回落ち込んだ設備投資の回復などを誘うとみられ、生産の回復から在庫投資のプラスも想定されることから、予想前後の数字が十分に期待できそう。予想通りもしくはそれ以上の数字が出てくると、米景気回復への安心感につながり、ドル円を支える材料に。ドル円は105円台後半に向けた動きが期待される。 |
ECB理事会 10月29日21:45 ☆☆☆ | 日銀と同日に結果発表があるECB理事会も金融政策の現状維持が見込まれている。ただ、英国との自由貿易協定についての協議の先行きが不透明となっていることに加え、ここにきて新型コロナウイルス感染第二波の動きが広がっており、大都市圏を中心に行動制限が実施される状況にあるだけに、早い段階でのパンデミック資産購入プログラム(PEPP)の規模拡大と、来年6月末までという期限を来年末までなどに延長する見通しが広がっている。英国との協議が続いている状況での延長決定は時期尚早ということで、今回の実施の可能性はかなり低いが、12月の実施に向けてラガルド総裁の会見などで示唆が見られると、ユーロ売りの動きが広がり、ユーロドルは1.17割れを試す可能性も。 |
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