2020年11月09日号

(2020年11月02日~2020年11月06日)

先週の為替相場

大統領選など重要イベントをこなす展開に

 注目された米大統領選挙は民主党のバイデン前副大統領が7日に勝利宣言を行った。

 3日に行われた大統領選挙では、注目州での開票当初、共和党のトランプ大統領が優勢な展開が目立ち、かなりの優位とみられたバイデン候補が苦戦する展開となり混戦に。

 開票当日では決着がつかず、市場の警戒感を誘う格好となった。トランプ大統領の優勢が伝えられた4日東京午前にドル円は105円30銭台まで上昇する場面もあったが、すぐに値を落とし、104円台での推移に。

 序盤はトランプ氏がリードも、開票作業後半になってバイデン票が多いとみられる郵便投票による票が開票されるにしたがい多くの州でバイデン氏が逆転し、市場は徐々にバイデン氏の勝利を織り込む動きに。

 追加経済対策期待などもあって米株が大きく上昇する中で、リスク選好のドル売りの動きが優勢となり、ユーロドルなどが上昇。ドル円は節目の104円ちょうどを割り込み売りが加速する形となり、ドル全面安基調が強まった。

 4、5日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、事前見通し通り金融政策の現状維持が決定された。FOMC後の会見でパウエルFRB議長は、新型コロナウイルスの感染拡大などを受けた下向きのリスクに言及。追加緩和が必要になる可能性に触れたことで、ドル売りの流れが強まった。ドル円は103円台半ば割れまで。

 米雇用統計は予想を超える雇用者の伸びと、失業率の低下を示す力強いものとなった。雇用増の内訳を見ると、レジャー&ホスピタリティ部門(用語説明1)が27.1万人増と堅調な数字に。5月以降の米雇用のV字回復を支えている部門であるが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けやすい部門であり、やや警戒感が出ていただけに、米雇用市場の力強さを印象付ける結果となった。

 もっとも、リスク選好の動きがドル売りにつながる流れが継続する中で、雇用統計後のドル高円安は限定的に。103円台前半から103円70銭前後まで値を戻したが、その後上昇分を解消して、103円台前半で週の取引を終えている。

 5日の英中銀金融政策会合(MPC)は、政策金利を据え置き、量的緩和策である債券購入プログラムについては上限枠を1500億ポンド拡大する追加緩和を実施した。英国では新型コロナウイルスの感染拡大がここにきて深刻化しており、イングランド全域でのロックダウン再開が決まった後だけに、景気刺激が必要となったとみられた。

 従来の予想を超える緩和であったが、直前にマイナス金利の導入や2000億ポンド規模での枠拡大のうわさが流れたこともあって、発表後はポンド買いに。リスク選好でのドル売り円売りで、ポンドが買われやすい地合いとなっていたこともあり、ポンド高の動きが広がった。

今週の見通し

 今週は、先週の米大統領選、米連邦公開市場委員会、米雇用統計、英中銀金融政策会合などの重要イベントは予定されておらず、先週までの状況を確認しながら次の流れを探る展開に。

 米株が主導しての世界的な株高の動きが期待され、基本的にはリスク選好の動きか。リスク選好がドル売り円売りにつながる中で、ドル円はやや動きにくさも、リスクはドル安方向か。

 103円ちょうど前後のサポートを割り込むと売りが強まる可能性も。ドル全面安基調だけにドル円の値ごろ感だけでは動きが収まりにくく、もう一段の下げが意識されるところ。

 目先のターゲットは102円台半ば。中期的なターゲットは、新型コロナウイルスの感染が世界的に広がり混乱が生じた中で値を崩した3月の101円台前半。

 逆に104円台をあっさり回復するようだとドル売り円買いの流れが一服か。

 ユーロは1.20の大台を意識する展開に。ただ、EUと英国との自由貿易協定に関する協議がそろそろ大詰めを迎える。交渉が決裂すると、対ポンドではユーロ買い材料となるが、対ドル、対円ではユーロ売り材料となるだけに、積極的なユーロ買いを手控える動きも。

 1.20台にしっかり乗せると1.2200前後までの上昇がありそう。

 ポンドも同様に、対ドル、対円でしっかりとなっているが、積極的な買いには慎重姿勢も。

 トルコのエルドアン大統領が7日にトルコ中銀のウイサル総裁(用語説明2)を解任。さらに8日にはアルバイラク財務相が辞任するなど、トルコの通貨当局者が相次いで交代する事態となった。

 対ドルでの史上最安値を連日のように更新する展開に変化が生じるのではとの期待もあり、週明けはトルコリラの買い戻しが優勢に。ただ、混乱が長引くようだと再びのリラ売りも。リラ円は12円割れを意識。

 その他新興国通貨は全般に買いが期待されている。米大統領選でのバイデン氏の勝利を受けて、米中関係の改善期待を背景に資源国通貨買いの動きが広がっている。

用語の解説

レジャー&ホスピタリティ 米非農業部門雇用者数は全体の数字に加え、各業種別の雇用者数の増減が示されている。米労働省はいくつかの業種を合わせてグループ化した一覧も作っており、レジャー&ホスピタリティはその中のひとつ。小売業などと並んで雇用者数全体に占める割合が大きなグループで、レストラン・バーなどの飲食部門、ホテルなどの宿泊部門、美術館・映画館・ゲームセンターなどのアミューズメント部門などで構成される。新型コロナウイルス感染拡大の影響を最も大きく受け、感染拡大前の2月の雇用状況から、わずか2カ月で雇用がほぼ半減した。もっとも5月以降にはV字回復を見せ、全体の雇用増を支える部門となっている。
ウイサル総裁 2019年7月にエルドアン大統領が前任のチェティンカヤ氏を解任した後を受けて、副総裁から昇格する形でトルコ中銀の総裁に就任。チェティンカヤ総裁時代に物価上昇を抑制するために24%まで政策金利が引き上げられ、低金利を志向するエルドアン大統領と対立して解任につながったこともあり、総裁就任直後の会合から2020年5月の会合まで9会合連続で利下げを実施。その後3会合連続で金利を据え置いていたが、物価上昇が著しくなったことから9月の会合で予想外に利上げを実施。先月の会合では連続利上げを見越す市場の期待に反し金利を据え置き、エルドアン大統領からの圧力が強いのではとの思惑を誘っていた。

今週の注目指標

ECBフォーラム
11月11日・12日
☆☆☆
 例年6月頃にスペインのシントラでECBや各国中銀の関係者、著名な経済学者らを招いて行われるECBフォーラム。今年は新型コロナウイルスの影響で開催が延期されていたが、11、12日にオンラインで開催されることとなった。特に注目を集めているのが、フォーラムのメインプログラムの最後に予定されているラガルドECB総裁、パウエルFRB議長、ベイリー英中銀総裁が参加するパネルディスカッション。移り行く世界の中での金融政策がテーマとなっており、これからの金融政策の姿勢が示されると期待されている。パウエル議長が先週のFOMC後の会見に続いて、追加緩和姿勢を強く示してくるようだとドル売りの動きも。ドル円は102円台半ばがターゲットに。
英第3四半期GDP速報値
11月12日16:00
☆☆
 新型コロナウイルスの影響で英国の第2四半期GDPは前期比-19.8%と大きな減少を記録した。第1四半期GDPもマイナスとなっており、テクニカルリセッションに陥っている。今回はロックダウンからの再開の影響もあり、一気の回復が見込まれている。予想は+15.8%。もっとも、英国ではここにきて1日当たりの新型コロナウイルスの新規感染が過去最多を記録するなど感染拡大が深刻で、イングランド全域でのロックダウンが11月5日から12月2日までの4週間にわたって実施される事態となっている。3月末から5月初めにかけてのロックダウンに比べ、学校の授業が継続、在宅が難しい業種での営業許可など制限が緩やかとなっているが、経済への悪影響は必至。第3四半期時点での回復が期待ほどではないと、今回のロックダウンでの景気鈍化に対する経済的な余裕に欠けるとの懸念が広がり、ポンド売りが強まる可能性も。ポンド円は135円ちょうどがターゲットに。
米消費者物価指数(10月)
11月12日22:30
☆☆
 雇用と並ぶFRBの二大責務の一つである物価動向を表す中心的な指標だけに注目度が高い。予想は前年比+1.3%と9月の+1.4%から伸びがやや鈍化。食品とエネルギーを除くコアは前年比+1.7%と9月と同水準が見込まれている。予想を超える物価上昇が見られると追加緩和実施に対するハードルとなるだけに、強めの数字が出たときには要注意。ドル買いが広がり、ドル円は104円台に向けた動きが強まる可能性も。

auじぶん銀行外貨預金口座をお持ちのお客さま

ログイン後、外貨預金メニューからお取引いただけます

免責事項

本レポートは株式会社時事通信社が提供しています。また本レポートの内容は、株式会社時事通信社が提供する情報をもとに、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドが執筆しています。本レポートは、情報提供のみを目的にしたもので、売買の勧誘を目的としたものではありません。投資決定に当たっては、投資家ご自身のご判断でなされますようお願いいたします。株式会社時事通信社、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドおよび情報提供元は、本レポートに記載されているいずれの情報についても、その信頼性、正確性または完全性について保証するものではありません。また本レポートに基づいて被った損害・損失についても何ら責任を負いません。本レポートに掲載されている情報の著作権は、株式会社時事通信社および株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドに帰属します。本レポートに掲載されている情報を株式会社時事通信社の許諾なしに転用、複製、複写等することはできません。

Copyright(C) JIJI Press Ltd. All rights reserved.

auじぶん銀行からのご注意

  • 本画面に掲載されている情報は、auじぶん銀行の見解を代弁したものではなく、auじぶん銀行がその正確性、完全性を保証するものではありません。

以上の点をご了承のうえ、ご利用ください。