2020年11月16日号

(2020年11月09日~2020年11月13日)

先週の為替相場

米ファイザーの発表後に一気に円売り

 9日からの週は週末のバイデン前副大統領による米大統領選の勝利宣言などを受けてリスク選好の動きがドル売りにつながり、ドル円が103円20銭を割り込む動きから始まった。もっとも6日の海外市場での安値を割り込み切れず、少し値を戻してもみ合った後、米ファイザーの発表を受けて一気にドル買い円売りが進んだ。

 9日のNY市場取引開始前に行われた米薬品大手ファイザーが独ビオンテックと共同開発している新型コロナウイルス向けワクチンの臨床試験の中間発表において、90%以上の効果が見られたと報告された。これを受けてダウが寄り付き直後に1600ドル超まで上昇するなど一気にリスク選好の流れに。

 新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する米国に対する明るい材料となり、ドル買い円売りの動きが強まる格好でドル円は105円60銭台まで一気に上昇した。

 久しぶりの105円台ということもあり、翌日の東京市場で実需などの売りに104円台後半に値を落とすも、海外市場で105円台に戻してもみあいに。105円ちょうど前後が短期のサポートとなり、11日の海外市場で105円60銭台を再び付けるなどの動きが見られた。

 週の後半にかけてはドル売りの動きがやや優勢に。ドル円は週末にかけて104円50銭台まで値を落とした。105円台半ばからが重く、短期筋の調整が入りやすくなったこと、米国での新型コロナウイルスの新規感染者数が拡大する中でドル買いに慎重姿勢が見られたことなどが背景に。

 ポンドが対ドルを中心に振幅の動きを見せた。5日から4週間、イングランド全域でのロックダウンを実施している英国にとってファイザーの発表は大きな買い材料となった。英政府は7月に同社と9000万回分のワクチン供給で合意しており、この辺りもポンド買いの材料に。

 週の後半にかけてポンドは一転して軟調。12日に発表された英第3四半期GDPが弱めに出たことや、同日のECBフォーラムでベイリー英中銀総裁が12月の会合での追加緩和の可能性を示唆したことなどがポンド売りを誘った。

 週末にかけては調整の買いが入る展開。大詰めを迎えているEUとの自由貿易協定の協議を受けてやや神経質な動きに。

 その他、動きが目立ったのがトルコリラ。7日にエルドアン大統領がウイサル・トルコ中銀総裁を解任。後任として新総裁に就いた前財務相のナジ・アーバル氏(用語説明1)が新総裁は、物価安定に焦点を当てると発言。19日に行われる理事会で一気に金利が引き上げられるのではとの思惑もあり、リラが急騰する動きとなった。

 リラ円は12円ちょうど近くを付けていた6日の状況から、一気に13円台を付ける動きに。その後少し調整が入り12円台半ば前後まで値を落としたが、週の後半にかけて再びリラ買いが強まり、13円80銭前後まで上値を伸ばした。

今週の見通し

 米ファイザーの発表以降、新型コロナウイルスに対するワクチン開発への期待感が広がり、リスク選好の流れとなっている。一方で、米国、欧州各国で1日当たりの新規感染者数が連日のように最多記録を更新する状況となっており、現状の深刻さと今後への期待の中でやや不安定な動きを見せている。

 ドル円はリスク選好がドル売り円売りにつながる中でやや動きにくい。先週のドル買い円売り局面で105円台後半での買いに慎重姿勢が見られたこともあり、やや調整ムードも。

 日本でも新型コロナウイルスの感染第3波の兆候が見られるが、米国での感染者数は1100万人を超えるなど深刻化しており、比較的状況が落ち着いている円に買いが入りやすい面も。

 ドル円はもみ合いの中で若干頭の重い展開が続きそう。104円割れをトライする動きが見込まれるところ。

 ユーロは対ドルでの買いがやや優勢も、上値も重い。12月のECB理事会で追加緩和が確実視され、積極的なユーロ買いに回りにくい面も。

 ポンドはユーロと同様に対ドルで買いが入る場面が目立つ。EUとの自由貿易協定の協議が大詰めに入っており、やや不透明感も。

 離脱強硬派のカミングス英上級顧問(用語説明2)が解任されたことで、今後の協議が前向きに進みやすくなるとの思惑が広がっているが、漁業権などの問題での妥協点が依然として見えない中で、ハードブレグジットの懸念も根強く残っている。

 16日からも協議が継続され、今週中に合意に至るとポンド買いに。ポンドドルは1.3500の節目を試す動きも期待されるが、逆に決裂が決定的になると1.28割れの可能性があるなど、上下にリスクのある状況。

用語の解説

ナジ・アーバル ナジ・アーバル・トルコ中銀総裁。イスタンブール大学を出た後、トルコ財務省に入省。2009年から2015年まで財務次官を務めた。2015年6月の総選挙に公正発展党(AKP)所属で出馬。当選してトルコ議会議員に。再選された2015年11月の選挙でAKPが与党に復帰すると財務大臣に就任、2018年まで同職を務めた。財務大臣退任後は大統領府の戦略・予算局長を務めており、エルドアン大統領の側近の一人として知られている。
カミングス上級顧問 ドミニク・カミングス。2007年に保守党のマイケル・ゴーブ議員(現ランカスター公領大臣)の特別顧問に就任。2011年に特別顧問を退任した後は政治評論家として活動。強硬なEU離脱派として知られ、2016年の離脱をめぐる国民投票では、離脱派のスローガンとなった「Take Back Control」を考案するなど、中心人物の一人として活動した。2019年7月にジョンソン首相の上級顧問に就任。

今週の注目指標

米小売売上高(10月)
11月17日22:30
☆☆☆
 前回9月分が予想を超える前月比+1.9%、自動車を除くコアが前月比+1.5%という好結果となった米小売売上高。新型コロナウイルスの影響で3月、4月と大きく落ち込んだが、5月、6月とV字回復し、その後伸び自体は落ち着いていた。すでにロックダウン前の2月の水準を超えてきており、落ち込みの反動という側面が一服する中で、前回の強めの結果は米経済再開への信頼感につながった。主要13項目中12項目が前月比でプラス圏と、広範な消費の拡大が見られたことも好印象となった。しかし、ここにきて新型コロナの感染拡大第3波の動きが強まっており、今回は前回ほどの伸びは期待されていない。予想は前月比+0.5%、自動車を除くコアは前月比+0.6%となっている。ただ、新型コロナの影響はやや読みにくい。予想を割り込む弱めの結果が出るようだとリスク警戒感からの円買いが一気に入る可能性も。ドル円は104円台半ば割れも視野。
豪雇用統計(10月)
11月19日9:30
☆☆☆
 前回9月分は雇用者数が前月比-2.95万人と4カ月ぶりに減少し、失業率も悪化した。豪州は雇用の回復がやや遅く、4月、5月と大きく減少した後、6月から9月にかけて大きく回復した。パンデミック後の雇用回復が一服し、その後のビクトリア州での感染拡大などを受けて期待ほど経済の回復が見られず、前回の雇用減につながったとみられる。こうした状況を受けて先月豪中銀は政策金利を0.10%に引き下げ、量的緩和を拡大するなどの追加対策を実施。ただ、その影響が出るのは今後とみられ、今回の事前予想も雇用者数が3万人の減少、失業率が0.2ポイント悪化して7.1%となっている。予想程度の悪化であれば想定内だが、予想を超える悪化を見せると豪ドル売りも。豪ドル円は75円割れの可能性も。
トルコ中銀政策金利
11月19日20:00
☆☆☆
 トルコのエルドアン大統領は7日にウイサル中銀総裁を解任。翌8日に大統領の娘婿であるアルバイラク財務相が辞任した。対ドルでリラの史上最安値を連日のように更新し、物価への影響も深刻な状況となっていることが更迭につながったとみられる。後任の中銀総裁にはアーバル前財務相が就任した。アーバル新総裁は物価安定に焦点を当てると発言しており、今回の理事会で一気に金利を引き上げてくると予想されている。ただ、どの程度引き上げるのかについては見方が分かれている。現行の10.25%から14.25%への引き上げ予想が大勢となっているが、15%を超えるところまで利上げを実施するとの見通しも多く見られる。予想を超える利上げが実施された場合、新総裁就任後に進んでいるリラの買い戻しが強まる可能性も。リラ円は14円台回復の期待も。

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