2020年11月24日号

(2020年11月16日~2020年11月20日)

先週の為替相場

ドル安が優勢な展開に

 16日からの週はドル安円高が優勢な展開となった。

 9日のファイザーに続いて、16日のNY株式市場オープンまでに米バイオ医療大手モデルナ(用語説明1)が新型コロナウイルスワクチンの第3フェーズ(用語説明2)の治験において、治験者の94.5%に有効性が見られたと高い効果を発表。この好材料を受けて、104円30銭台までロンドン市場で値を落としていたドル円が105円10銭台を付ける動きとなった。しかし上値トライはここまで。大台を割り込んで104円台に値を落とすと、その後は頭の重い展開に。

 週の前半は104円台前半での売りに慎重な姿勢が見られた。しかし、ユーロドルやポンドドルでのドル売りが目立ち、ドルが全面安の流れになると、18日に東京での新規感染者数が最多記録を更新するなど、日本での新型コロナウイルス感染第3波の動きが強まったことによるリスク警戒の円買いも加わり104円割れの動きに。

 18日にはファイザーが9日の中間試験での好結果公表に続いて、第3フェーズの臨床試験で95%に有効性が見られたとの発表を受けて104円台を回復する場面が見られたが続かず。すぐに103円台に値を落としたことで、逆に頭の重さが印象的となった。

 19日の東京市場で103円60銭台まで値を落とした後、同日のロンドン市場でのユーロドルなどでのドル買いに104円20銭台までと、18日のファイザー発表後の高値を超えるところまで買い戻しが入る場面も続かず。その後週末にかけて103円台後半での推移が続くなど、頭の重い展開に。19日の安値を割り込まない水準でのもみ合いが続いており、下値進行にも慎重姿勢ながら戻りが鈍いという流れ。

 ユーロドルでもドル売りの動きが見られ、17日の海外市場で1.1893前後を、翌18日にも1.1890台を付けるなど、1.19をトライする流れに。1.19ちょうど手前の売りに頭を押さえられ、19日の海外市場で1.1810台まで値を落としたものの、20日に再び1.1890台を付けるなどしっかりの展開が続いた。

 ポンドもユーロ同様に対ドルで比較的しっかり。英国とEUとの自由貿易協定の協議が大詰めを迎える中、当初非公式で期限とされていた15日を過ぎての協議継続に、先週初めは警戒感も見られたが、協議が順調に進んでいるとの期待感から下がると買いが入る展開。18日の海外市場で1.3310台まで上昇した後、いったんは1.32割れまで調整したが、23日からの週の早い段階で合意するとの英紙観測報道などを受けて週末にかけて再びポンド買いの流れとなった。

今週の見通し

 新型コロナウイルスワクチンの開発が順調に進んでおり、早ければ12月からの供給開始が現実味を帯びてきたことで、リスク警戒の動きが後退している。

 米株の上昇など、リスク選好の動きが市場全体に広がっている。リスク選好がドル安円安につながるケースが多い分、ドル円は頭の重い展開を続けているが、米国での新型コロナウイルス感染第3波の勢いが強まっているだけに、ワクチン開発関連の材料ではドル買いが出やすく、ドル高円安の動きに。米国では20日に1日当たりの感染者数が20万人に迫る(ジョンズホプキンズ大学調査)状況となっており、米CDC(疾病予防管理センター)では感謝祭前後での会食を控えるよう要請するなどの対応に追われている。ただ、この時期親しい人たちと集まってパーティーを行うことは、米国の行動習慣でもありどこまで守られるかは微妙。今後も感染拡大が見込まれる中で、ワクチン開発の進展が市場の期待を誘っている。

 バイデン氏がイエレン前FRB議長を次期財務長官に指名する見通しと報じられたことも、リスク警戒の後退要因に。イエレン氏は雇用問題を専門とする経済学者で、パンデミックからの雇用回復が大きなテーマとなっている米経済の現状に対応するのに適していること、サンフランシスコ連銀総裁やFRB議長時代を通じて、金利面よりも景気対策を重視するハト派的な姿勢を示しており、経済再生に向けた動きを強めると見込まれることなどが市場の期待につながっている。

 もっとも105円台が重くなっている印象があり、ドル円は104円台でのレンジ取引を中心に上値を探る展開か。

 今週は木曜日が感謝祭で米国市場が休場。金曜日は米国株式市場、債券市場などが短縮取引となっており、週の後半にかけて取引参加者が減ることから、積極的な取引を手控える動きも見込まれる。

 ユーロドルは、ドル全面高の動きが強まる前に節目の1.1900を超えており、その後にユーロ売りドル買いが進んだことで、ある程度の達成感が広がっている。上値が重くなりやすい展開が見込まれる。もっとも、ユーロ円などでのユーロ買いの動きが見られるだけに、下がったところでは買いが入る流れに。1.17台への動きが期待されるが、下値は限定的か。ユーロ円は円売りとユーロ売りで相殺されるが、やや円売りが優勢とみられ、124円台トライもありそう。

 ポンドは大詰めを迎える英EU間の自由貿易協定協議の動向が焦点に。合意が近いとの報道がある一方、漁業権などでの意見の対立は解消されていないとみられ、不透明感も残っている。落としどころとして、いったん合意して数年後に見直しを行うレビュー形式での暫定合意が期待されている。正式に暫定合意が発表されると、ハードブレグジットの強行という市場が最も警戒する事態が避けられる。対ドルで1.34台へのポンド買いの動きが期待される。

用語の解説

モデルナ 2010年創業のマサチューセッツ州に本社を置くバイオ系医療企業。メッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれるたんぱく質に翻訳され得る塩基配列情報と構造をもったRNAに基づく医薬品開発・ワクチン開発に特化している。ナスダックに上場。時価総額は約4兆円と、新興バイオ企業の中でも大手。
治験の第3フェーズ 新薬の治験は一般的に3つのステップで行われる。第1フェーズは少数の健康な成人を対象にごく少数の投与から始めるもの、第2フェーズは少数の対象者に新薬の効果、副作用などの安全性、投与期間や量などの調査などを行うもの、第3フェーズは多数の対象者にこれまでの治験の結果で得られたデータを基にして、新薬の効果、安全性、投与期間や量などを確認するもの。完全に新しい薬であればブラセボ(偽薬)と、すでに承認済みの類似の薬があればその薬と並行して比較調査を実施する。一般的には最終確認フェーズとなる。

今週の注目指標

独Ifo景況感指数(11月)
11月24日18:00
☆☆
 ドイツ5大研究所の一つIfo経済研究所による景気調査を基にしたIfo景況感指数は、ドイツを代表する経済指標で、ユーロ相場への影響力もあり注目度が高い。前回10月分の同指数は6カ月ぶりに前月から悪化。事前予想も下回り、新型コロナウイルスの感染第3波などを受けてドイツの景況感が悪化している状況が示された。新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化しており、ドイツ政府は今月2日から約1カ月の部分的ロックダウンを実施。規制期間の延長の可能性も報じられる中、今回のIfo景況感指数はさらなる悪化が見込まれている。事前予想は90.3。予想を超えて悪化するようだと、警戒感からのユーロ売りも。ユーロ円は123円割れを意識。
米FOMC議事録
11月26日04:00
☆☆
 米FRBが11月4、5日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が25日の東部時間午後に発表される。今月のFOMCでは事前見通し通り、政策金利と量的緩和策の現状維持を発表。声明では一部表現に違いはあるものの、基調判断は継続された。大統領および上下両院選挙の開票が進められる中で、FRBとしても新たな方向性を示しにくい面があった。その後のパウエル議長の会見では、12月のFOMCで示される参加メンバーによる経済予測において、予測の不確実性に関する新たなグラフを提示する見込みなどさらなる情報提供の充実姿勢が示された。こうした結論に至った経緯や選挙後の体制、政府との連携についての参加者の議論などが注目される。今後の追加対策についての強い姿勢が示されるようだとドル売りの動きも。ドル円は103円台前半トライも。
ブラックフライデー
11月27日
☆☆
 26日は米国が感謝祭の休日。翌27日は市場自体は開いているものの、株式市場、債券市場が短縮取引。米国の参加者の相当割合が休みをとって連休としている。感謝祭翌日の金曜日は年末商戦のセール初日で、例年であれば全米各地の小売チェーンなどに人が押し寄せる。今年は新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する中、オンラインショッピングに回る人が多いとみられるが、それでもそれなりの人出が期待されている。今年はロックダウンで小売業は厳しい状況だった。ブラックフライデーが盛況な結果となり、米国の個人消費の拡大が印象付けられると、ドルの買いにつながる可能性がある。ドル円は104円台にしっかり乗せる可能性も。

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