2021年01月04日号

(2020年12月28日~2021年01月01日)

先週の為替相場

リスク選好のドル売り広がる

 12月21日から年末年始にかけては、ドル売りが優勢な展開となった。ドル円は30日の海外市場で一時102円台を付ける動きが見られた。ユーロドルが1.23台、ポンドドルが1.36台後半を付けるなど、ドル全面安の展開に。

 世界的に株高の動きが強まっており、リスク選好のドル売りが見られた。米ダウ平均株価が年末に史上最高値を更新するなど、株高の流れは年末まで続いた。米追加経済対策及び歳出法案の成立、新型コロナウイルスワクチンの供給開始などの状況がリスク警戒感を後退させる格好に。

 21日の週は、ポンドドルの下げからいったんはドル買いの動きに。英国で感染力の高い新型コロナウイルス変異種の感染が広がっていることが報じられ、各国が英国からの渡航を禁止するなどの対応に迫られたことが警戒感を誘った。トンネルでつながるフランスに至っては人だけでなく物資の輸送なども48時間の緊急停止を行っており、英経済への悪影響が懸念される展開に。

 その前の週末に1.36台を付けていたポンドドルが1.31台まで急落するなど、一時ポンドが大きく値を崩す展開に。ユーロドルなどもつれ安となる中で、リスク警戒のドル買いが広がり、ドル円は103円80銭台まで。

 ポンドドルが安値から値を戻すとドル円も調整が入ったが、103円台前半がしっかりで、その後はクリスマスを挟んでいったん様子見ムードが広がった。

 クリスマスを前に英国とEUが自由貿易協定で合意。ハードブレグジットが回避されることとなって、ポンドは一転して大きく上昇。1.36台を付ける動きを見せた。

 クリスマス明け、いったんドル買いの動き。年末年始を前にポジション調整の動きが強まった。クリスマス前に大きく買われたポンドドルに対する調整の動きからのポンド売りドル買いが主導した面も。

 もっとも、その後年末にかけて再びドル売りの動きに。トランプ大統領が不満を漏らしていた追加経済対策及び歳出法案について結局署名を決め、予算が成立したことからリスク選好のドル売りに。

 ドル円は直近下値を支えていた103円台前半の買いをこなして、一時102円台を付ける動きとなった。大台はすぐに回復も、その後の戻りは103円30銭台までにとどまっている。

 21日の1.3180台への急落後、クリスマス前に1.3620前後まで上昇し、28日には1.3430前後まで下落と振幅が激しい展開を見せたポンドドルは、年末にかけてポンド高ドル安の流れが強まり、1.3680台までと直近高値を超えて2020年の高値を年末にきて更新。2018年5月以来のポンド高圏での推移となった。

 ユーロドルもポンドドルにつれ高となり年初来高値を更新して1.23台へ。こちらは2018年4月以来の高値圏推移に。

今週の見通し

 リスク選好のドル売りが当面継続すると見込まれている。ドル円はリスク選好がドル売り円売りとなり、ある程度相殺される分、ユーロドルやポンドドルなどに比べてドル安の勢いに欠けるが、戻りの鈍い展開に。

 先月17日に102円80銭台と直近安値を付けた後、戻り高値が103円90銭前後で二度止められており、上値の重さが意識されている。

 直近安値を割り込むと、昨年3月のパンデミックの中で付けた101円台まで大きなポイントがない。じりじりとしたドル安円高基調が続く中で、一気の下げも難しいが、ドル全面安の中、ドル円の下げに大きな過熱感もなく、もう一段の下げがありそう。

 ドル主導でクロス円は不安定な動きに。ユーロドルやポンドドルはもう一段の上昇期待。米株高に関してはさすがに過熱警戒感も、米政府の追加経済対策、米FRBの緩和政策の長期化期待などから、大きな流れは変わらないという見方が強く、中長期の流れは依然ドル売り。押し目では買いが入る展開か。

 こうした流れが大きく変化する可能性があるとすると、5日に行われるジョージア州での上院決選投票(用語説明1 )と8日の米雇用統計(12月)となりそう。

 5日の決選投票では争われる2議席とも民主党が取ると、大統領・上院・下院をすべて民主党が押さえる形となり、追加経済対策などへの期待感が広がりそう。いったんはドル買いの動きが強まる可能性も。ドル円は104円を意識する展開に。

 米雇用統計は厳しい結果が見込まれている。前回11月分の統計は非農業部門雇用者数(NFP)が事前予想の46.0万人増を大きく下回る24.5万人増にとどまった。新型コロナウイルスのパンデミックと、その対応でのロックダウンの影響で、3月、4月に大きく落ち込んだNFPは、5月以降力強い回復に転じた。雇用の伸びとしては6月の478.1万人増をピークに、徐々に落ち着いているが、10月時点では61.0万人増(改定値、速報時点では63.8万人増)と、依然かなりの大幅増となっていた。しかし、これまで雇用の回復を支えてきた小売業が雇用減に転じ、また10月時点で27万人増を記録したレジャー&ホスピタリティ部門も3.1万人増まで伸びが鈍化しており、11月の雇用者の伸びを抑える格好となった。

 12月に入って新型コロナウイルスの感染第3波の勢いが増し、感染者数が多いカリフォルニア州で厳格なロックダウンが再開されるなど、行動制限の動きが広がる中で、12月はさらに厳しい数字が見込まれるところ。

 事前予想は5万人増と、プラス圏を辛くも維持と見込まれているものの、相当厳しい数字。パンデミック前でも弱めの印象を受ける水準だけに、予想前後の数字が出てくると米国の深刻な状況が再認識されそう。

 失業率は6.8%と8カ月ぶりに悪化する見込み。前回は労働参加率が61.7%から61.5%に低下していた。今回、通常失業率を見かけ上は改善させる労働参加率(用語説明2)がさらに低下する中で、失業率が悪化すると、NFPの厳しい数字と合わせ米雇用市場への強い警戒感に。

 ドル円に関してはドル買い円買いの流れになりそうで、方向性が見えにくいが、昨年末に2018年以来の水準まで上昇したユーロドルやポンドドルの大きな調整につながる可能性も。ドル円は円買いの勢いがやや勝るとみており、102円台半ばをトライする流れも。

用語の解説

ジョージア州決選投票 州ごとに選挙の規定に違いがある米国。ジョージア州では上院選挙で過半数の得票数を獲得する候補が出なかった場合、上位2名による決選投票を行うと規定されている。11月の大統領選と同時に行われた上院選では、本選挙で現職の共和党議員が民主党議員に得票数で上回ったものの、過半数には届かず。議員の引退を受けて行われた補欠選挙では、共和党の候補者が複数出たこともあり、民主党候補が得票数1位も、こちらも過半数には届かず、ともに決選投票となっている。現在までに確定している米国の上院議席数は、今回非改選の分も合わせて、共和党が50、民主党が48(民主系無所属含む)。決選投票での2議席とも民主党が獲得した場合は50対50となる。上院では投票が同数となった場合は、上院議長を兼ねる副大統領の採決で決まるため、事実上民主党の勝利となる。
失業率と労働参加率 労働参加率とは生産年齢人口(16歳以上人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数の合計)の比率のこと。失業率とは労働力人口のうちの失業者数の割合。雇用情勢が悪化し、現在職を持たない失業者が求職活動自体をあきらめてしまった場合、労働力人口から除外されるため、労働参加率が低下する一方、失業率は分母・分子が同数減るため見かけ上は改善(低下)する。

今週の注目指標

米ジョージア州上院決選投票
1月5日
☆☆☆
 ジョージア州の上院決選投票は、事前世論調査でほぼ互角となっており、2議席とも民主党が押さえる可能性が十分にある状況。1議席でも共和党が取ると、上院と下院で多数党が違うねじれ状態となる。新型コロナウイルスの感染対応が今後も必要となる可能性が高いが、政府による手厚いサポートとその結果の財政赤字拡大を忌避する共和党と、サポートを実施したい民主党との間で議会調整にもめると、米国の景気回復に懸念が生じる。また、バイデン新大統領による連邦政府高官の指名に対する承認は上院議会にのみ与えられた権限。上院を共和党が押さえることでバイデン政権の指名人事に悪影響が出る可能性がある。このため共和党が決選投票で一つでも議席を確保するとリスク警戒の円買いが強まる可能性。ドル円は102円台半ばを意識へ。
米ISM製造業景気指数(12月)
1月6日00:00
☆☆☆
 前回11月の米ISM製造業景気指数は、2年ぶりの高水準となった10月分の59.3から57.5に低下した。もっとも景気の好悪判断の境となる50を大きく超える水準で、市場の警戒感は限定的に。ただ、その後新型コロナウイルスの感染拡大第3波の勢いが増していることもあり、厳しい数字が示される可能性も。予想は56.5とさらなる低下見込み。前回50を割り込み48.4まで低下した雇用部門の数字と合わせ注目したいところ。予想を超える鈍化を見せた場合、雇用統計への警戒感にもつながり、リスク警戒のドル買いが強まる可能性。ユーロドルは1.22割れを意識も。
米雇用統計(12月)
1月8日22:30
☆☆☆
 新型コロナウイルスの感染状況が深刻な米カリフォルニア州では先月6日から不要不急の外出禁止、美容院などの閉鎖といった厳しいロックダウンが再開している。こうした状況が雇用市場にも強く影響していると考えられる。特にレジャー&ホスピタリティ部門は、感染拡大の影響をまともに受けるところ。昨年3月、4月のパンデミックに際してはほぼ半減する勢いとなった同部門の雇用者数が大きく減少し、予想を超えてマイナス圏まで落ち込むようだとリスク警戒につながりそう。とはいえドルの戻りは鈍く、円買いが主導する形でドル円は102円割れも視野に。

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