2021年01月18日号

(2021年01月11日~2021年01月15日)

先週の為替相場

ドル円104円台がやや重い、ユーロは対ドル、対円で売りが優勢に

 1月11日からの週は方向感の捉えにくい展開となった。

 先週前半は、先々週後半から続くドル買いの流れが強まる展開に。米長期債利回りの上昇がドル買いを誘い、ドル円は104円40銭前後まで上値を伸ばした。バイデン新政権下で予想される大規模な追加経済対策の結果、インフレ期待が強まり長期債利回りの上昇につながるとの思惑が広がった。

 年明け6日に1.2350手前を付けるなど上昇が目立っていたユーロドルも先々週後半からのユーロ売りドル買いの動きが継続する形で1.2130台までユーロ安ドル高が進行した。ポンドドルが1.34台半ば前後まで値を落とすなど、ドルは全面高基調を継続。

 その後12日のNY市場で米10年債入札が好調な結果となったことをきっかけに、米債利回りの上昇が一服。ドル買いの動きに調整が入る展開に。ドル円は104円をしっかり割り込むと13日には103円50銭台までドル安円高が進行した。ユーロドルが1.2220台を回復するなど、ドルは全面安に。

 ポンドは米10年債入札前から買い戻しが優勢に。ベイリー英中銀総裁がマイナス金利の導入について消極的な発言を行い、ポンドの買いを誘った。140円台前半を付けていたポンド円が142円台を付けるなど、ポンドは全面高に。

 その後ドル円は103円台半ば手前の買いに下値を支えられると、もみ合いを経て104円台を回復するなど、ドル買い円売りの動きが優勢に。バイデン次期大統領が14日に発表する追加経済対策について、2兆ドル規模になるとの報道が13日時点で一部メディアで見られ、ドルの買い戻しを誘った。

 ユーロドルはイタリアの政局不安などユーロ自体の売り材料もあり、直近の安値を割り込むところまでユーロ売りドル買いが入る展開に。ユーロポンドでもユーロ売りポンド買いが出たこともあり、ポンドは堅調地合いを維持した。

 その後NYタイムズなどがバイデン次期大統領の追加経済対策について2000ドルの直接給付などを含む1.9兆ドル規模と報じ、ユーロドルなどでドル買いがやや優勢に。もっともドル円は104円台での買いに慎重姿勢が見られたこともあり、103円台後半を中心とした推移となった。

 14日(日本時間15日朝)に発表されたバイデン次期大統領の追加経済対策は、事前報道通り1.9兆ドル規模に。内訳についてもサプライズはなく、市場は売り材料とはしなかったものの、さらなるドル買いを進める材料とは捉えず、その後イベントクリアでの調整意欲もあってドル買いの動きに。

 18日の米国市場がマーティン・ルーサー・キング牧師の日で休場となることもあり、株式市場でポジション調整売りが入ったことも、リスク警戒感からのドル買いにつながった。ユーロドルは12月10日以来の1.20台へ。ドル円も下値しっかり感が広がったが、104円台の買いに慎重で103円台後半推移に。1.37台を付けていたポンドドルが1.35台まで値を落とすなど、ドルは全般に買い戻しが優勢に。

 リスク警戒の動きはドル買いとともに円買いにつながっており、ユーロ円やポンド円は週末に向けて売りが目立つ展開。対ドル主導で値動きは限定的ながら頭の重い推移となっていたユーロ円は、126円台半ば前後から売りが強まり、週末には125円台半ば割れまで。ポンド単体の買い意欲に142円台前半を付けていたポンド円は、141円割れを付ける動きに。

今週の見通し

 次の方向性を探る展開となっている。

 米長期債利回りの上昇傾向は一服し、一時1.18%前後まで上昇していた米10年債利回りは1.08%台での推移となっている。もっとも節目の1%を超えた水準であり、今後の米新政権下での追加経済対策方針を考えたとき、長期債利回りは当面上昇傾向が見込まれる。

 一方で調整がある程度入っているとはいえ米株高の動きが続いており、リスク選好のドル売りと、米債利回り上昇を受けたドル買いが交錯する展開に。

 目先はドル買いの勢いが勝るとみられるが、ドル円に関してはユーロ円などの売りが重石となっている面があり、一方向の動きにはつながりにくい。

 ユーロドルが節目の1.2000を割り込むようだともう一段のユーロ売りドル買いがありそうで、この場合はドル円でもドル買いの勢いが勝りそう。

 目先のターゲットは104円台半ば。104円台半ばから105円にかけての売りを崩せるかがポイントに。

 下値のサポートは103円台半ば。同水準を割り込むと6日に付けた102円50銭台まで目立ったサポートポイントがないだけに、大きな動きとなる可能性も。

 ユーロは対ドル、対円で頭の重い展開。今週のECB理事会は前回12月の会合でPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)の拡大・延長などの追加緩和措置を実施したこともあり、現状維持が見込まれている。ただ、新型コロナウイルスの感染第3波の勢いが欧州でも広がっていることもあり、その後の会見でラガルド総裁はより一層の警戒感を示してくる可能性も。この場合はユーロの売り材料となる。

 15、16日のドイツ最大与党キリスト教民主同盟(CDU)の党首選は、親メルケル派でノルトライン・ウェストファーレン州首相のラシェット氏(用語説明1)が勝利し、新党首となった。同氏が今年9月のドイツ総選挙後の新首相になる可能性が高まり、メルケル路線の継承期待広がったことはユーロの買い材料。一方でイタリアではレンツィ元首相と同氏が党首を務める「イタリア・ビバ」(用語説明2)出身の閣僚が辞任するなど、政局懸念が広がっており、こちらはユーロ売り材料に。

 ユーロドルはポイントとなる1.20を割り込む可能性が十分にある。この場合対円でもユーロ売り円買いが進むと見込まれる。ユーロ円は124円50銭前後がポイントとなる。

用語の解説

ラシェット新党首 ドイツで最大の人口を擁するノルトライン・ウェストファーレン州(州都デュッセルドルフ)の州政府首相。同州アーヘン市の出身で、同市での行政経験を経て1994年から1998年までドイツ連邦議員。その後欧州議会議員などを経て、2010年からノルトライン・ウェストファーレン州の州議会議員。2017年より州政府首相を務める。2021年1月の党首選で、保守色の強いメルツ氏に第1回投票で敗れたものの、決選投票で逆転勝ちして新党首となった。中道・穏健派として知られ、メルケル首相と政治的姿勢は近いといわれている。今年9月の総選挙に出馬せずに政界からの引退を表明しているメルケル首相の後任の最有力候補となったが、一般人気がそれほど高くないことから、すんなりとは決まらない可能性も指摘されている。
イタリア・ビバ レンツィ元首相が率いる中道左派政党。2019年にコンテ内閣が当時連立を組んでいた五つ星運動と同盟の対立で瓦解した後、五つ星運動と左派政党であるイタリア民主党が連立を組んで2019年8月に第2次コンテ内閣が誕生した。しかし左派ポピュリズム政党である五つ星運動と連立を組んだことに反発した民主党内の中道派勢力がレンツィ元首相の下に集まり同年9月に民主党を離党。イタリア・ビバを結党した。民主党離脱後もコンテ政権内にはとどまっていたが、新型コロナウイルス対策での救済基金の利用についてコンテ首相と対立し、連立与党を離脱した。

今週の注目指標

バイデン氏、米大統領就任式
1月20日
☆☆☆
 民主党のバイデン前副大統領が20日の就任式で正式に第46代米大統領に就任し、新政権がスタートする。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、先週1.9兆ドル規模の追加経済対策を打ち出しており、相場的には就任式前後で大きく動くかは微妙であるが、移民問題、外交問題などで就任直後に新機軸を示してくる可能性があり要注意。財務長官に指名されたイエレン前FRB議長は、19日に指名承認公聴会が開かれる。特に問題なく指名手続きが進むとみられているが、このあたりの流れがスムーズに進むかどうかも注目されている。米国の分断への警戒感が強まるようだと、リスク警戒からの株安ドル高円高の動きも。ドル円はやや下方向の意識が強まるとみられ103円台前半トライも。
日本銀行金融政策決定会合
1月20日・21日
☆☆☆
 日本銀行は20、21日に金融政策決定会合を開催する。金融政策は現状維持が見込まれているが、ここにきて新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化していることもあり、金融政策運営の見直し検討が一部でうわさされている。長短金利操作付き質的量的緩和政策のうち、長期金利操作の許容変動幅を現行のプラスマイナス0.2%から拡大し、状況の変化に柔軟に対応することを検討するというもの。今回は現状を維持してくるとみられるが、変動幅拡大に向けた議論を今回の会合で進め、早ければ3月の会合で実施する可能性も。声明や会合後の黒田総裁会見で期待が広がると円売りの動きが見込まれる。ドル円は104円台半ばを意識する展開に。
南ア中銀金融政策理事会
1月21日
☆☆☆
 2019年7月からの利下げサイクルが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて加速し、昨年7月の会合まで5会合連続で政策金利を引き下げた南ア中銀。9月の会合で今年初となる金利据え置きを決定。その際の声明でハニャホ中銀総裁は、経済成長と物価上昇のリスクが均衡しているとして、当面の利下げ見送りを宣言。また、2021年終盤を目途に次の行動は利上げとなる可能性が高いという姿勢を示した。そのため、今週の会合でも政策金利の据え置きが見込まれている。ただ、ここにきて同国では英国以上に感染力が高いといわれる新型コロナウイルスの南ア型変異種による感染拡大が深刻化。南ア政府は先月から夜間の外出禁止令などを含む厳しい行動制限を再開しており、南ア中銀としても再び利下げ路線に戻さざるを得ないという見方もある。現行では据え置き見通しが大勢も、利下げを実施した場合ランド円は6円50銭の節目を割り込む動きもありそう。なお、発表は会合終了後となり、日銀同様に決まった時間は指定されていないが、22時過ぎになる場合がほとんど。

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