2021年02月01日号

(2021年01月25日~2021年01月29日)

先週の為替相場

ドル高円安の流れに、ユーロドルは下値しっかり

 1月25日からの週は、後半にドル高円安の流れが強まる展開となった。ドル円は週前半の103円台後半でのレンジ取引から、週末に104円94銭まで上値を伸ばした。

 ユーロ高への警戒感と米株安の流れがドル買いを誘った。27日にクノット・オランダ中銀総裁(用語説明1)が「必要であればECBはユーロ高に対処する手段を有する」と発言。ドイツやフランスの消費者信頼感の弱さなども合わせユーロ売りの動きに。

 また、米国市場で株安の動きが広がり、リスク警戒でのドル買いも強まった。27日のNY市場ではボーイングの弱い決算をきっかけにダウ平均が一時700ドルを超える下げに。終値でも633ドル安となった。27日NY市場引け後に控えるIT・ハイテク関連企業の決算発表を前にした警戒感も見られた。

 27日NY市場午後のFOMCは事前見通し通り政策金利、量的緩和の現状維持を決定。FRBのパウエル議長は会見で一部のメンバーが昨年末あたりから口にしている量的緩和の縮小(テーパリング)の議論について時期尚早と発言。こちらも想定通りということで市場の反応は限定的に。

 注目されたアップルなどの決算は予想を上回るEPSや売上高を示すなど好結果も先行き見通しがさえず、株安の流れは止まらず。

 28日のNY市場で米株は急反発も、翌29日は大幅安となるなど、不安定な動きが続いた。議会でも問題となったゲームストップ(用語説明2)株の乱高下もあり、市場はリスク警戒の動きを強め、ドル買いが優勢な展開に。

 ドル円は週末にかけて104円台後半でのしっかりとした動きを見せた。

 ユーロドルは27日のドル高局面で1.2050台まで下落。その後は1.21を挟んでの振幅となったが、週末にかけては1.2150台を回復する場面が見られるなど、ユーロ買いの動きが強まった。ドイツやフランスなどの第4四半期GDP速報値が予想ほど悪化せず、ユーロ買いにつながった面も。

 ドル円が上昇する中でユーロがしっかりとなったことで、ユーロ円は上昇。週半ばの125円60銭前後から週末には127円30銭台まで上値を伸ばす場面が見られた。

 週半ばからの米株の不安定な動きによるリスク警戒のムードは、新興国・資源国通貨の売りを誘い、豪ドルは対ドルで0.7760台から0.7590台まで一時大きく下落。米国株が反発した28日のNY市場で豪ドル買いが一気に入る場面が見られたが、0.7700前後が重くなっており、週末にかけて再び値を落としている。

今週の見通し

 ドル円は上値トライの期待が強まる展開となっている。先週末に104円90銭台まで一時上昇。ユーロドルなどでのドル買いが一服する中でドル円はしっかりとした動きを続けており、堅調地合いが印象的に。

 105円ちょうど前後での売り意欲は残っているものの、104円台での取引が続くようだと、下値しっかり感もあって、上値を試す可能性が十分にありそう。

 前回12月は2018年以来の高水準となった米ISM製造業景気指数はさすがに弱めに出る可能性が高いが、5日の米雇用統計は前回が弱かった分、プラス圏を回復する動きが見込まれており、ドル円の支えとなりそう。

 前回12月の雇用統計は、下落分はほとんどがレジャー&ホスピタリティ部門と政府部門によるものだった。レジャー&ホスピタリティ部門は12月に入ってロックダウンを強化したミシガン州やカリフォルニア州など新型コロナウイルス対応が厳しかった州での雇用の減少が見られた。

 一方でテキサス州やジョージア州など行動制限がそれほど厳しくない州では雇用は順調に伸びている。

 前回の雇用の弱さの要因がはっきりとしているだけに、今回さらに予想を超えた悪化を示す可能性はそこまで高くはない。また、行動制限が厳しくない州での雇用の増加は、米雇用市場の本質的な強さを印象付けている。事前予想値である前月比5万人増程度の数字は十分に期待できるところ。この場合、米経済回復への期待感もあってドル売り円売りの動きに。ドル円は読みにくいところだが、いったんは円売りが勝る局面が予想される。105円台後半がターゲットか。

 なお、新型コロナウイルス関連での米雇用統計の予想は、専門家であってもぶれやすい面があるだけに、ある程度の予想からの乖離は十分にありそう。予想を下回り2カ月連続で前月比マイナスを記録するようだと、市場の警戒感が一気に強まる可能性も。この場合はドル買い円買いの動きに。株式市場動向にもよるが、ドル円はクロス円での円買いに押されて103円台トライの局面もありそう。

用語の解説

クノット・オランダ中銀総裁 クラース・クノット(Klaas Knot)オランダ中銀総裁。同国フローニンゲン大学で経済学を学び、経済学博士号を取得。大学を出た1995年からオランダ中銀に務めるプロパー。金融・経済政策部門のエコノミストを経て2011年総裁に就任。中銀スタッフ時代に、IMFへの出向やオランダ財務省代理会計長なども務めている。
ゲームストップ 米国のゲームソフト小売り大手企業。昨年前半に2.57ドルを付けていた同社株は、米株式市場全体の上昇の影響もあり昨年末時点で18.84ドルまで上昇していた。年明け後も12日時点で19.95ドルと落ち着いた動きを見せていたが、13日以降大幅に値上がり。特に21日以降は驚異的な暴騰となり、28日には一時483ドルまで上昇。その後112ドル台を付けるなどの乱高下を経て、29日に340ドルを超えるなど、上昇傾向が継続している。ソーシャルメディア上のフォーラムを通じて個人投資家が声を掛け合って株やオプションを購入。同社株を空売りしていた機関投資家が耐え切れないところまで買いを浴びせることで、これらの機関投資家によるストップロスの買いを誘い、株価の上昇につながったとされる。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(1月)
2月2日0:00
☆☆☆
 前回12月のISM製造業景気指数は、11月の57.5から56.8に低下するとの事前予想を大きく上回る60.7を記録した。2018年以来の高水準。新規受注が67.9と2004年1月以来の好結果を記録。生産も2011年11月以来の高水準となる64.8となった。雇用は51.5に上昇し、好悪判断の境となる50を超える結果となった。今回はさすがに少し調整の見込みも60.0と高水準を維持するとみられている。予想前後の強めの数字が出るとリスク選好からのドル売りが入る可能性。ユーロドルは1.2150超えをしっかり付ける可能性も。
英中銀金融政策会合
2月4日21:00
☆☆☆
 英中銀は4日に金融政策会合(MPC)の結果を発表する。同時に議事要旨の公表、四半期インフレ報告の発表及び会合後の総裁会見を行うスーパーサーズデーとなっている。金融政策の変更が生じやすいスーパーサーズデーであるが、今回は現状維持見込みが大勢。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻なこともあり、一部で追加緩和期待が見られるだけに要注意。現状維持となった場合も、参加メンバーの中で利下げや量的緩和の拡大を主張するメンバーが出てくると警戒感からのポンド売りも。ポンドドルは1.3600がターゲットとなりそう。
米雇用統計(1月)
2月5日22:30
☆☆☆
 前回12月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が予想の5万人増に対して、14万人減と予想を超える悪化を示した。11月の数字が速報値時点の24.5万人増から33.6万人増に上方修正された影響もあるが、8カ月ぶりのマイナス圏はインパクトのある結果に。新型コロナウイルスの感染が拡大し、ロックダウンの強化などが進んだ影響がまともに出た形で、州ごとの雇用者数を見ると、ミシガン州、カリフォルニア州、ミネソタ州、ペンシルベニア州、NY州など行動制限を強化した州が軒並み大幅減となっている。項目別に見ると、レジャー&ホスピタリティ部門が49.8万人減と大きな雇用減に。レストランの店内飲食営業禁止(カリフォルニア州では店外での飲食も禁止)などの制限が雇用の減少につながったとみられる。これらの制限は先月後半からやや緩和傾向が見られるが、今回の雇用統計の計測対象である12日の基準日を含んだ週の時点では厳しい制限が継続しており、今回の雇用統計もやや厳しいものとなりそう。ただ、前回の雇用統計で小売業の雇用が11月のマイナスから、12.05万人の増加と回復していることもあり、予想を超える回復を示す可能性も。しっかりとした雇用の回復が見られると、リスク警戒感が後退しドル売りの動きに。ユーロドルは1.22を目指す可能性も。

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