2021年02月15日号

(2021年02月08日~2021年02月12日)

先週の為替相場

ドル売りの動きやや優勢に

 2月8日からの週は、ドル売りの動きがやや優勢となった。ドル円は5日の米雇用統計の発表前に105円77銭まで上昇。注目された雇用統計の結果が弱めに出たことで105円台前半に値を落として週の取引を終え、8日の週明けは同水準でのスタートとなった。

 8日のロンドン市場で105円60銭台まで上昇する場面が見られたが、同水準が先週の高値となった。その後同日NY市場で105円台前半に値を落とすと、その後もドル売り基調が継続。9日には節目の105円ちょうどを割り込み、104円50銭台まで値を落とす展開に。

 その後は104円台半ばがサポートに。10日のロンドン市場で104円台半ば割れを試し、104円41銭を付ける動きとなったが、通信社が「日銀が今後マイナス金利を深堀りする余地があることを明確化することで調整」との観測記事を報じたことから円が売られ、104円80銭台まで上昇。その後は104円台半ばが再びサポートとなって104円台後半でのレンジ取引が続いたが、12日のロンドン市場で米株先物の下落を受けたリスク警戒のドル買いなどをきっかけに105円台を回復。米債利回りの上昇などもドル買いを支えた。もっとも週末を前に12日のNY市場では大台を維持しきれずに104円台後半で週の取引を終えるなど、上値の重さを意識させる展開となった。

 ドルは基本的に全面安の展開で、ユーロドルやポンドドルなども週初の水準から上昇。5日に1.1952を付けたユーロドルは、雇用統計発表後のドル売りに1.20台半ば前後まで上昇。週明けも同水準でスタートし、いったん1.2020前後へ値を落としたところが先週の安値に。その後はユーロ買いドル売りの動きが強まり、10日に1.2140台まで上値を伸ばした。1.2150前後が重石となっており、その後は1.21台でのもみ合いが続いたが、週末前にドル売りの調整が入ると1.20台後半まで。

 ポンドドルは4日の英中銀金融政策会合(MPC)後のポンド買いの流れが、ドル全面安基調を受けて加速する格好となった。MPC前に1.3560台まで値を落としていたポンドドルは、MPC後のポンド買いもあり1.37台前半で先週の取引をスタート。いったん1.3680前後まで値を落とす場面が見られたが、その後はポンド買いドル売りが広がった。

 10日に2018年以来の高値である1.3860台まで上昇したポンドドルは、その後調整の動きもあって1.3770台まで値を落とす場面が見られたが、12日に発表された英第4四半期GDPが予想を上回り、さらにGDPの結果を受けてスナク財務相(用語説明1)が今後の楽観論を示したことでポンド高が再び強まる展開に。

今週の見通し

 米長期債利回りの上昇によるドル高と、リスク選好でのドル安が交錯する展開に。リスク選好での円売りもあって、ドル円はしっかりの展開が期待されるところ。

 ドル円は先週いったん104円台半ば割れまで値を落としたことで、ドル買いが入りやすい面も。

 一方でユーロドルやポンドドルなどは上値期待が強い。対円でも上昇基調が継続しており、欧州通貨高ドル安円安の流れか。

 特に英ポンドは4日の英中銀金融政策会合でのマイナス金利に対するかなり消極的な姿勢と、12日の英第4四半期GDPが事前予想+0.5%に対して+1.0%の伸びを示したことを好感するムードなどがポンドを支えている面も。

 直近3カ月連続で前月比マイナスとなっている米小売売上高(用語説明2)が、今週発表される1月の統計で前月比プラス圏への改善が見込まれるなど米景気回復に対する期待感に加え、バイデン政権が追加経済対策の姿勢を緩めることはないとの思惑も、リスク選好の流れに寄与している。

 ドル円は5日の米雇用統計前に付けた105円77銭が目先のターゲットとなる。同水準を超えると昨年8月の107円05銭が視野に入ってくる。押し目の目途は104円台半ばで、割り込むと流れが変わる可能性も。

 ユーロドルは5日に一時1.1950台まで値を落としたことで下げに一服感が出ている。ただ米長期債利回りの上昇傾向が継続する中で、ここからのユーロ買いドル売りにはやや慎重姿勢も。

 ユーロ円は円売りが優勢なため、ユーロドルよりは上がりやすくなっている。ただ1月8日に上値を抑えた127円台半ばを超えてくる動きとなっており、ここからの買いには慎重姿勢も。対ドル、対円ともに上値意識は継続も、やや警戒が必要な状況。上昇傾向が続いた場合、目先のターゲットはユーロドルが1.2230、ユーロ円が128円台後半。

用語の解説

スナク財務相 リシ・スナク(Rishi Sunak)、英国の財務相。ジョンソン首相と対立して辞任したジャビド財務相の後任として2020年2月に就任。英オックスフォード大学を出た後、米スタンフォード大学でMBAを取得。米金融機関やヘッジファンドでの勤務を経て、2015年に下院議員に当選。メイ政権での地方自治担当政務次官を経て、第1次及び第2次ジョンソン政権では財務相就任まで財務省首席担当官を務めていた。両親ともにインド系で、義父はインドに本社のある世界的なIT企業インフォシスの共同設立者で初代CEOのナラヤナ・ムルティ氏。
米小売売上高 米国内で販売されている小売業、サービス業の売上高を米商務省が集計した経済統計。米国内の個人消費の動向を表す。米国はGDPに占める個人消費の割合が70%弱と、日本の約55%やEUの約53%などと比べてかなり高く、米経済全体をとらえる際の重要な指標となっている。なお、売上高全体に占める割合が最も大きい自動車及び同部品は、販売店のセールスなどの影響を強く受け、月ごとのブレが大きいことから、自動車を除いたコア部分も注目される。

今週の注目指標

米小売売上高(1月)
2月17日22:30
☆☆☆
 米国の個人消費動向を示す小売売上高は、直近3カ月連続で前月比マイナスとなっている。特に前回は前月比変わらずの予想に対して-0.7%と厳しい数字を示した。内訳を見ると、自動車及び同部品やガソリンスタンド売り上げが伸びる一方で、飲食店の売り上げが低下するなど、新型コロナウイルスの影響を強く意識させるところが見られた。昨年末に強まった州ごとの感染防止のための行動規制強化は、ワクチン接種が始まったこともあって緩和傾向にあり、今回の小売売上高は回復が見込まれている。ただ、レッドブックリサーチによる1月の第1週から第4週までの既存店売上高が前月比でマイナスとなるなど厳しいデータもあり、弱めに出ることも予想される。弱い数字が示された場合、瞬間的にはドル売りも、その後追加経済対策の強化期待などでドル買いが広がる可能性も。ドル円は104円台半ばが維持されるようだと、その後105円台半ばトライに。
米FOMC議事録
2月18日04:00
☆☆☆
 1月26、27日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC) 議事要旨が公表される。先月のFOMCでは事前見通し通り政策金利・量的緩和の現状維持を決定。声明では経済と雇用についての現状認識を下方修正するなどの変化が見られたが、総じて想定内の内容となり、影響は限定的だった。FOMC後の会見でパウエル議長はテーパリングについて時期尚早との姿勢を繰り返した。ただ、タカ派の地区連銀総裁らがインタビューでテーパリングに言及する中、何らかの話が会議で交わされた可能性があり、議事要旨の内容が注目される。慎重姿勢を維持する議長らはともかく、メンバーの中で議論開始を意識する発言が目立つようだとドル買いが強まる可能性も。ドル円は106円台を意識する展開もありそう。
豪雇用統計(1月)
2月18日09:30
☆☆☆
 1月の豪雇用統計が18日に発表される。12月の統計では雇用者数が5万人増と予想とほぼ一致する増加を示した。失業率は6.6%と予想の6.7%及び11月の6.8%よりも強めの数字となった。増加した雇用者数の内訳を見ると、フルタイム労働者が3.57万人増となっており好印象に。豪中銀の刺激策などを受けて景気回復が順調に進んでいることが印象付けられた。今回の予想は3.0万人増と増加傾向を維持する見込み。失業率は6.5%と0.1ポイントの低下が見込まれている。人口を考えると順調な雇用の回復が続いており、予想前後の数字が出てくると豪ドル買いの動きも。2018年以来の高値圏推移となる豪ドル円の上昇がもう一段強まる可能性。ターゲットは83円台か。

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