2021年02月22日号
先週の為替相場
週前半はドル高もその後調整入る
2月15日からの週は、半ばにかけてドル高円安の動きが強まったが、その後調整が入る展開となった。
ドル円は2月10日につけた104円台半ば割れ後のドル高円安局面が継続する形で、東京時間の17日朝に106円20銭台まで上昇。同日の海外市場でも106円20銭前後を付けるなど、一時高値圏でもみ合いとなったが、後半は上値から調整が入り、105円台半ばを割り込んで週の取引を終えている。
米国の追加経済対策が予想される中、景気回復期待に加え、インフレ観測が高まっており、米債利回りが上昇。ベンチマークとなる米10年物国債利回りは、15日の米国市場休場(プレジデントデーの祝日)明けとなった16日の市場で2020年2月以来となる1.30%台を突破、その後も上昇が続き、週末には1.36%台を付ける動きとなって、金利面でのドル買いに寄与した。
豪州債などの利回りも上昇しており、世界的な債券売り(利回り上昇)が見られる中で、円売りの動きが広がった面も。
ワクチン接種が進んでいることなどを受けて、米国内での新型コロナウイルスの新規感染が抑えられてきており、今後への期待感が広がったこともドル買い円売りにつながったとみられる。
週末にかけてドイツやユーロ圏、英国のPMIの好結果を受けたユーロドルやポンドドルの上昇(ドル安)や、利益確定のドル売りなどに押されてドル円は高値から調整が入り、105円20銭台まで一時値を落とした。
ユーロドルは16日に発表された独ZEW景況感指数(用語説明1)の好結果や、同日のユーロ圏第4四半期GDP改定値の速報値からの上方修正などが好感され、週前半はユーロ高ドル安の動き。16日のロンドン市場で1.2170手前まで上値を伸ばす場面が見られた。
その後米債利回り上昇などを受けたドル全面高の流れが強まり、ユーロドルは高値から一気に値を落とす形となり、17日のNY市場で1.2020台に下落。ポンドドルが16日の1.39台半ばから17日のNY市場で1.3830前後まで値を落とすなど、欧州通貨安ドル高の流れに。
その後は一転して欧州通貨高ドル安に。きっかけは18日のポンド買いの動き。ワクチン接種が進む英国の今後の景気回復への期待感や、インフレ懸念からの英中銀のマイナス金利導入期待の後退などを受けて、対ドルだけでなく、対ユーロなどでポンドが買われ、16日の高値を超えて1.3980台まで。週末にかけ1.40台に乗せるなど、ポンド高ドル安の流れが続いた。
ユーロも対ポンドでは売りが出たものの、対ドルや対円ではポンド高につれ高になる形で買いが入り、さらに19日の独製造業PMIやユーロ圏製造業PMIの予想外の強さもあって買いが広がる展開に。週末には一時1.2140台まで上値を伸ばした。
ドル主導の展開も、リスク選好の動きが目立つ中でクロス円は基本的にしっかり。ユーロ円は週前半のユーロ高局面で128円40銭台まで上昇。その後ユーロ安が進む局面で127円30銭前後までいったん調整が入ったが、週末にかけて128円台を回復する場面が見られた。
今週の見通し
米長期債利回りの上昇傾向が継続しており、ドルを支えている。米追加経済対策への期待感がインフレ予想につながっており、当面は長期債利回りの上昇傾向が継続する見込み。バイデン政権下で積極的な景気支援が続くとの見方が広がっており、インフレ期待は当面続くとみられる。テーパリングの議論について時期尚早という姿勢を崩さないパウエルFRB議長の方針も、緩和的金融政策の長期維持見通しと今後のインフレ期待につながっている。
一方でリスク選好の動きはドル売り要因にもなっている。景況感の改善が目立つユーロやポンド、長期債利回りの上昇が目立つ豪ドルやNZドルに対する米ドルの売りが優勢に。ドル円は、金利面でのドル買い円売りとリスク選好での円売りを背景とする上昇期待と、リスク選好でのドル売りが交錯。ある程度の振幅を交えながらの展開となりそう。
クロス円も基本的には上方向を意識。リスク選好での円売りに加えて、日本円を除いて世界的に長期金利の上昇が目立っており、金利差を狙った機関投資家などからの買いが入りやすい展開。日本は日銀が長短金利操作付き量的質的金融緩和(用語説明2)を維持しており、長期金利が上がりにくい状況が続いている。
ドル円の目先のターゲットは17日に付けた106円20銭台。この水準を超えると昨年8月に付けた107円05銭前後まで大きなポイントが見えず、上昇基調が強まる可能性も。高値警戒感もあるが、クロス円の買いに支えられ、105円台でのしっかりとした展開が続くようだと上値トライの可能性は十分にありそう。
ユーロ円は目先のポイントを抜けてきており、上のポイントの見極めが難しいところに。高値警戒感からの調整をこなしながら、節目である130円ちょうどに向けた動きが期待される。
用語の解説
ZEW景況感指数 | ドイツの民間調査会社ZEW(欧州経済研究センター)が、今後6カ月のドイツの景気見通しについて、約350人のアナリストや市場関係者にアンケートを行ったデータを基にした景気指数。ドイツ最大の公的シンクタンクであるIfo経済研究所によるIfo景況感指数よりも約1週間早く発表されることから、同指数の先行指標としても注目される。 |
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長短金利操作付き量的・質的金融緩和 | 日本銀行が2016年9月の日銀金融政策決定会合において、それまでのマイナス金利付き量的質的金融緩和を強化する形で新しい金融緩和の枠組みとして導入した金融政策。長期金利については10年物国債金利がゼロ%程度で推移するように、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行うとしている。 |
今週の注目指標
パウエルFRB議長議会証言 2月23日・24日 ☆☆☆ | パウエルFRB議長が23日に上院銀行委員会、24日に下院金融サービス委員会で半期に一度の議会証言を実施する。旧ハンフリー・ホーキンス法(現在は失効)に基づいて、FRBが議会へ報告書を提出し、議会でその報告書に関する証言を行う。FRBの二大責務である雇用の最大化と物価の安定に向けた方針を説明することとなっており、今後の金融政策見通しの重要なヒントとなる。注目はテーパリングに関する証言。インフレ見通しの拡大などを受けて、議員から質問された際に、時期尚早とのこれまでの姿勢を貫くことができるかどうか。報告書は上院・下院に同一のものが提出され、当初の証言内容も同一であるため、先に行われる証言(今回は上院)がより注目される。従来の超緩和的な姿勢を継続するようだと、インフレ懸念の拡大から米長期金利の上昇を誘いドル買いとなる可能性。ドル円は106円台半ばに向けた動きも。 |
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NZ中銀政策金利 2月24日10:00 ☆☆☆ | 24日にNZ中銀の金融政策理事会が開催される。前回11月の会合で事前見通し通り、政策金利を過去最低水準の0.25%に据え置くことを決定。その際に政策金利について少なくとも今年3月末までは維持する姿勢を示した。また、追加の景気刺激策として12月から金融機関に向けた新たな資金供給プログラム(FLP)を導入することを発表した。そうした状況から今回は金融政策の現状維持が確定的。ただ、その次の金融政策理事会は4月になるため、3月末までという従来の期限を超えることとなる。そのため声明や会見などで新たな指針が示されると期待されている。NZでは都市部の住宅価格上昇が問題となっており、今後の金融緩和姿勢の後退を示してくる可能性があるだけに、注目を集めている。マイナス金利についての強い否定や、テーパリングの開始検討などに言及すると、NZドル買いの動きが強まる可能性。NZドル円は78円超えに向けた動きも。 |
米PCEデフレーター(1月) 2月26日22:30 ☆☆☆ | 米国のインフレ期待が強まり、長期債利回りが上昇する中で、米国の物価動向への注目度が高まっている。10日に発表された1月の米消費者物価指数(CPI)は、前年比および食品・エネルギーを除いたコア前年比がともに予想を下回る弱めの数字となった。米国のインフレターゲットの対象であるPCEデフレーターが同様に弱めの数字を示すようだと、今後の緩和姿勢維持期待が強まるとみられる。こうした動きは短期的にはドル売りの材料となるが、将来のインフレ期待を高める形で米長期債利回りの上昇につながるようだと、ドル買いの動きも。ドル円は105円台での振幅から106円台半ばに向けた動きへの変化が期待される。 |
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