2021年03月01日号

(2021年02月22日~2021年02月26日)

先週の為替相場

週の後半にかけてドル高優勢に

 2月22日からの週は、序盤にドル売りの動きも、その後ドル買いが優勢な展開となった。

 先々週に米債利回りの上昇からドル高が進んだ後、少し調整が入ったドル円は、週初の海外市場で105円85銭前後まで一時上昇。米10年物国債利回りが1.39%台を付ける中で、ユーロドルが1.21を割り込むなど、ドルは全面高の動きに。

 しかし、米債利回りの上昇が一服するとドル高も一服。ラガルドECB総裁の長期債動向を注意深く見ているとの発言をきっかけにユーロドルに買い戻しが入ったこともあり、その後はドル売りが優勢となった。

 東京勢が祝日で不在の23日のアジア市場で105円割れを付ける動きも、その後は一転してドル高円安の動きに。

 注目された23、24日のパウエルFRB議長による議会証言では「目標に向け長い道のり、一段の進展には一定の時間」と、従来の認識を改めて示し、当面の緩和姿勢維持を示唆した。これを受けて米債利回りがやや低下。ドル円の頭を抑える格好となったが、下値もしっかりで、堅調地合いは維持された。

 週の後半にかけて米債利回りは再び上昇。25日の7年物国債の入札が不調に終わったことをきっかけに利回り上昇が加速し、10年物国債利回りが一時1.61%台まで上昇する中で、ドル円は106円台にしっかりと乗せる動きに。週末にかけてドル円の上昇はもう一段強まり、106円69銭まで一時上値を伸ばし、106円台半ばを超えて週の取引を終えた。

 ユーロドルは米債利回り上昇局面でもしっかりで、週の後半までは地合いの強さを感じさせる展開。独Ifo景況感指数(用語説明1)の好結果や、ドイツのロックダウン措置緩和報道などに支えられて、週前半から下がると買いが入る流れとなったユーロドルは、2月のユーロ圏景況感の強さもあって、25日に1.2240台まで上値を伸ばした。

 しかし、上値を付けた後は一転してユーロ売りドル買いの動きに。25日の米国市場で株が大幅に下落し、リスク警戒のドル買いが強まる展開に。週末にかけてポジション調整の動きもあり、1.2060台まで大きく値を落として週の取引を終えている。

 ポンドは週の半ばにかけて上昇基調が強まった。特に24日東京午前の市場で1.4150超えから一気に1.4240台まで上値を伸ばすなど、ポンドが急騰する場面が見られた。目立ったニュースなどが入ったわけではなく、ワクチン接種が進んでいるとの報道に買われやすい地合いになっていたところに、大口の買いが入ったことがきっかけになったとみられる。

 その後も1.4150を挟んで高値圏での振幅となったが、週末にかけてのドル買い進行に1.3880台まで大きく値を落とす展開に。

今週の見通し

 ドル円は堅調地合いの維持が見込まれている。米債利回り動向に神経質な反応を見せているが、利回り低下局面でのドル売り円買いの反応は比較的限定的なものにとどまっており、地合いの強さが印象的に。

 ただ、今週は1日のISM製造業景気指数、3日のADP雇用者数、ISM非製造業景気指数、5日の雇用統計など、米国の重要指標発表予定が並んでおり、結果次第では流れが変わる可能性も。

 特に前回いまひとつさえない結果となった雇用統計に関しては、米国各地でロックダウン措置の緩和が進んでいることもあり、状況の改善が期待されている。

 累計死者数が全米で唯一5万人を超えるなど、米国で最も感染被害が深刻なカリフォルニア州で12月から導入されていた厳しい外出制限が1月25日に緩和された。同じく多数の感染被害が出たNY州でも一部の地域を除いて1月27日に制限緩和が発表され、今回の雇用統計でこうした措置の影響が出てくることが期待されている。

 前回1月の非農業部門雇用者数の数字を見ると、12月に13.49万人増と持ち直しを見せた小売部門が3.78万人減とマイナス圏に沈んだほか、コロナ禍でも比較的安定して雇用が増加していたヘルスケア及びソーシャルアシスタンス部門が4.08万人減と全体を押し下げたことが印象的だった。

 ヘルスケア部門に関しては在宅訪問ケア関連の減少が要因とみられており、小売業と合わせて新型コロナウイルスの影響が大きいと考えられることから、ロックダウンの緩和によるプラスの影響が期待される。

 今のところの予想では非農業部門雇用者数は前月比18万人増が見込まれている。前回の4.9万人増からかなりの改善だけに、予想前後の数字が出てくるとドル買いが期待されるところ。結果次第でドル円は107円台に向けた動きも十分ありそうだ。

 なお、前回の雇用統計ではU6失業率(用語説明2)が11.1%と、12月の11.7%から大きく低下した。イエレン財務長官はFRB議長時代にこの数字を重要視していたことで知られているだけに、低下傾向が今回も続くかにも要注目。大きく低下しているようだと、米雇用市場回復への期待感につながり、こちらもドル買い材料に。

用語の解説

Ifo景況感指数 ドイツの5大経済研究所であるIfo研究所が、毎月ドイツ国内の約9000社を対象としたアンケート調査を基に作成する経済統計。景気に対する先行指標として注目され、ユーロ圏の経済指標の中でも相場に対する影響力がかなり高いものの一つとして知られている。
U6失業率 米労働省は失業率をU1からU6まで6段階に分けて計測している。一般的な失業率はU3となる。U6失業率の場合、通常の失業者数に加えて、正規雇用を希望しているが仕方なく非正規で働いている人や、就業の意思があり過去1年間で見ると求職活動を行っているが、雇用市場の厳しさなどから直近での求職活動を見送った人なども失業者として加えているため、U3よりも高い数字となる。不完全雇用率とも呼ばれる。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(2月)
3月2日00:00
☆☆☆
 12月が60.5と事前予想を超えて2018年以来の高水準を記録した同指数。前回1月は事前予想の60.0よりは弱めの58.7に。もっとも水準的には好悪判断の境である50を大きく超える好結果。雇用統計との関連で注目を集める雇用部門の数字が52.6と2019年6月以来の高水準となった。2月は58.6と1月とほぼ同水準が見込まれている。予想通り高水準を維持し、雇用部門の数字を含め内訳もしっかりしたものになると、5日の米雇用統計への期待感にもつながり、ドル買いを誘う可能性。ドル円は107円に向けた動きが期待される。
中国全国人民代表大会
3月5日
☆☆☆
 中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が5日から開かれる。会期は約1週間の見込み。注目は政府による今年の目標と第14次経済発展5カ年計画の発表。新型コロナウイルス感染拡大による先行き不透明感から、昨年の全人代(通常の3月開催を5月に延期して実施された)では年間のGDP成長率目標の発表が見送られた。今回の全人代で目標発表が復活されるかが注目されるが、大方の見方では見送りとみられている。5カ年計画では外国への依存度を減らす経済構想が打ち出される見込み。5年間の平均成長率目標は5%前後と予想されている。また2035年までに1人当たりGDPを対2020年比で倍増する長期目標も正式に決定する見込み。こうした強気の見通しが正式に示されると、資源国通貨などの買いにつながると期待される。豪ドル円は先週上値を抑えた85円手前が意識される展開に。
米雇用統計(2月)
3月5日22:30
☆☆☆
 前回の米雇用統計は、失業率が予想を超えて低下したものの、非農業部門雇用者数(NFP)は前月比10.5万人増の予想に対して4.9万人増にとどまった。また、12月のNFPが速報ベースの14万人減から22.7万人減に大きく下方修正されており、全体として厳しい印象が強い結果となった。12月の雇用統計で53.6万人減となり、全体を押し下げたレジャー&ホスピタリティ部門(映画館・劇場・カジノなどのレジャー部門、ホテルなどの宿泊部門、レストラン・バーなどの飲食サービス部門)が6.1万人減と、減少幅自体は縮小したものの、引き続き厳しい数字になったことに加え、12月はプラス圏となった小売業がマイナス圏に沈んだほか、ヘルスケア及びソーシャルアシスタンス部門の雇用減などが全体を押し下げた。また、11月、12月とプラス圏を回復していた製造業も1万人減となり、雇用市場の厳しい印象につながった。
 ここにきて米国各地でロックダウン措置の緩和が見られており、今回は雇用の回復が期待されている。ただ、基準日である12日(雇用統計は12日を含んだ週をその月の雇用統計の計測対象としている)を含んだ週の新規失業保険申請件数が84.1万件と、1月の87.5万件からそれほど低下しておらず、期待ほど改善していない可能性もある。期待が大きくなっている分、前回並みもしくはそれ以下の数字が出てくると、サプライズ的にドル売りが進む可能性。ドル円は105円台に向けた動きが見込まれるところ。

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