2021年03月15日号

(2021年03月08日~2021年03月12日)

先週の為替相場

ドル高圏での推移

 8日からの週、ドル円はドル高円安圏での推移となった。

 2月23日に105円割れを付けた後、反転する形で続くドル高円安の流れが継続、9日に直近高値となる109円20銭台まで上値を伸ばした。

 5日の米雇用統計が強めに出たことで米景気回復期待が強まり、インフレが進むとの見方から米債利回りが上昇。1.9兆ドル規模の追加経済対策について、一部で反対の出ていた上院が現金給付対象者の所得制限を厳しくするなどの修正を加えて6日に可決したことも(その後、下院を経て11日に正式に成立)、ドル買い円売りの流れに寄与した。

 米10年債利回りが先週初めから1.6%を超え、ドル買いの勢いが強まる中で、8日の海外市場で上値をいったん抑えた109円ちょうど前後の売りをこなしてドル買いに弾みがつき、9日の東京午前に109円20銭台まで上値を伸ばした。

 その後はいったん米債利回りの上昇が一服し、1.52%台を付ける中でドル高の調整が入り、ドル円は108円台前半まで。とはいえ下がると買いが入る流れが続いており、10日の東京市場で108円90銭台を付け、同日海外市場で108円30銭台まで調整が入るなど、108円台での振幅が目立つ展開となった。

 週末にかけては再びドル高が優勢に。先週行われた米3年債、10年債、30年債の入札が堅調なものとなり、一時債券価格の上昇と利回りの低下を誘っていた。しかし、その後米長期債利回りは再び上昇に転じ、週末に10年債利回りが一時1.64%近くまで急上昇する中で、ドル買いの動きが強まった。

 ドル円は109円10銭台まで上昇。9日の高値には届かずとなったが、週末NY市場終値が109円台となるなど、ドル高基調が継続した状況で週の取引を終えた。

 ユーロドルもドル全面高基調に押され、9日に1.1830台までユーロ売りドル買いが進んだ。

 その後は米債利回りの上昇一服を受けてユーロ買いドル売りが入り、1.19台を回復。11日のECB理事会を前にしたポジション調整のユーロ買いドル売りもあり、1.19台後半まで値を戻して理事会を迎えた。

 ECB理事会では事前見通し通り政策金利の現状維持を発表。PEPP(パンデミック緊急購入プログラム:用語説明1)について、総額は現状維持も、債券購入ペースについて4月からの増額を発表し、米国ほどではないが上昇傾向にあったユーロ圏の国債利回りに対応する姿勢を示した。

 理事会後にユーロ売りの動きも、ユーロドルは1.1920台までと下げは限定的なものにとどまった。その後ユーロ買いの動きが強まり、週末前に1.1990前後と節目の1.20台回復を意識させる展開となった。

今週の見通し

 米債利回りの動向にかなり神経質な展開となっている。米景気回復によるインフレ期待からドルの先高感が相当に強まっている。ドル円は心理的な節目でもある110円を強く意識する展開。

 そうした中、今週は米FOMCが予定されている。米長期金利の上昇について、パウエルFRB議長は具体的な対処法などには言及しておらず、静観する姿勢を続けている。また、イエレン財務長官は景気回復における良い金利上昇と発言しており、米当局は問題視する姿勢をこれまで示してこなかった。ただ、住宅投資や設備投資などへの影響が懸念される水準まで上がってきており、FRBによる緩和政策の効果を弱める可能性があるだけに、今回のFOMCで何らかの言及がある可能性が十分にある。

 また、今回のFOMCは参加メンバーによる予想(プロジェクションマテリアル:用語説明2)が示される回に当たっている。政策金利見通しについて、今年の年末までは現水準を維持するという見通しが広がっているが、来年以降に関しては利上げの期待も出てくる時期であり、変化に注目。

 インフレ期待が高まる中、物価見通しについての変化なども注目される。物価見通しが大きく引き上げられているようだと、FOMCの今後の対応への期待もあり、米債利回りの動きなどにも変化が生じるとみられる。

 楽観的な見方が強まるとドル買い、警戒感を強めるとドル売りの流れが見込まれ、ドル円は上下ともに動きが期待される状況。パウエル議長がこれまで同様に長期金利の上昇について静観する姿勢を示してくると110円超えの可能性がかなり強まる。

 なお、今週はトルコ中銀やブラジル中銀が利上げに踏み切ると見込まれている。新興国の金利上昇傾向が強まると、金利差からの円売りが強まる可能性があり、その点でもドル円はしっかりの動きか。

用語の解説

PEPP PEPP: Pandemic Emergency Purchase Programme、パンデミック緊急購入プログラム。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ECBが2020年3月18日に緊急会合を行い、従来の量的緩和策に加える形で新たに導入した資産購入プログラム。当初は7500億ユーロの規模で2020年末までとしていたが、2020年6月のECB理事会で6000億ユーロの拡大と2021年6月末までの延長を決定。さらに2020年12月のECB理事会で、5000億ユーロの再拡大と2022年3月末までの買入期間延長を決めた。2021年3月のECB理事会では、4月以降3カ月間これまでよりもかなり速い購入ペースで実施すると表明した。
プロジェクションマテリアル 年8回開催される米FOMCのうち、3月、6月、9月、12月の会合で示されるFOMC参加メンバーによる経済見通しのこと。経済成長(GDP成長率)、失業率、物価(インフレターゲットの対象であるPCEデフレータ及び同コアデフレーター前年比)、政策金利について、今年、来年、再来年の年末時点及び長期の見通しが示される。中でも政策金利見通しについて、各メンバーの予想をドットの形で示したドットプロットの注目度が高い。

今週の注目指標

米小売売上高(2月)
3月16日21:30
☆☆☆
 16日に2月の米小売売上高が発表される。前回1月の小売売上高は予想を大きく上回る前月比+5.3%と7カ月ぶりの大幅増となった。全米各地でロックダウンの緩和が進み、買い物や外食ができるようになったことや、12月末に成立した1人600ドルの現金給付が実施され、家計の支出を支えたことが好結果につながった。強い数字となった前回の反動もあり、今回は-0.5%と前月比減少が見込まれている。変動の激しい自動車を除いたコアは+0.1%と前回の+5.9%から大きく伸びが鈍化する見込み。2月はテキサス州などを中心に大寒波が米国を襲ったことも売り上げ減少要因となる。1月の反動と悪天候という要因がはっきりしているだけに、予想程度の悪化であれば市場の反応は限定的なものにとどまると見込まれるが、予想を超えて弱い数字が出ると警戒感からのドル売りも。ドル円は109円台からの調整を誘う可能性。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
3月18日03:00
☆☆☆
 16、17日と米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。政策金利や量的緩和は現状維持の見込み。市場はここにきて上昇傾向が強まる米長期債利回りについて、声明やFOMC後のパウエル議長の会見で言及されるかどうかを注目している。4日に行われたパウエル議長の講演では、長期金利について留意しているとしながらも具体的な対処法には触れず、静観する姿勢を示した。ただ、その後もう一段の米債利回り上昇が見られており、議長の対応が注目される。長期金利の上昇は設備投資や住宅投資に悪影響を及ぼすだけに、今後の対応を示唆する可能性も。この場合長期金利上昇が一服し、一気のドル売りの動きも。ドル円は107円台に向けた展開になる可能性も。
日銀金融政策決定会合
3月19日
☆☆☆
 18、19日に日銀金融政策決定会合が開催される。今回の会合で日銀は金融政策の点検結果を公表する。金融政策の枠組みを微調整してくる可能性が高く、注目を集めている。現状の長短金利操作付き量的・質的緩和政策の下で、日銀は長期金利の変動許容幅を上下0.2%程度としているが、この変動幅を広げるのではとの期待が一部で見られる。先月あたりまで期待がかなり高まる場面があった。もっとも、今月5日に黒田日銀総裁が拡大に消極的な発言を行ったこともあり、期待は後退している。今会合での変動が認められなくても、参加メンバーから変動を許容する意見が複数出てくるようだと、日本の長期金利上昇からの円買いも。ドル円は108円台前半に向けた動きも。

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