2021年03月29日号

(2021年03月22日~2021年03月26日)

先週の為替相場

ドル高基調継続

 22日からの週、半ばまでドル円は調整の動きがやや優勢となったが、後半にかけてドル高円安の流れが強まる展開となった。

 16、17日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)において長期金利の上昇への具体的な対応が示されず、市場では当局が金利上昇を静観するとの思惑が広がる中、先々週後半に109円20銭台までドル高が進行。その後108円台に値を落として迎えた先週の市場で、週初は109円ちょうどがやや重くなる形でもみ合いとなり、やや頭の重い動きに。さらに、米10年債利回りの低下などもあり、23日の海外市場で節目の108円台半ばを割り込む場面が見られた。

 その後、ユーロドルを中心にドル買いが優勢に。EU圏内特にドイツなどでの新型コロナウイルス感染拡大とワクチン接種の遅れなどが警戒感を誘い、リスク回避のドル買いにつながった面も。メルケル独首相がイースター前後の4月1日から5日にかけてほとんどの店舗を閉鎖するなどの厳しいロックダウン方針を表明(食料品店は3日の1日間のみ営業)したことも、ユーロ売りにつながった。

 メルケル首相の方針は33時間後に撤回されるなどドイツ政府の右往左往という対応により、週の終盤までリスク警戒感が残る展開に。もっとも対欧州通貨でのドル買いに加え、株高を受けた円売りが優勢となり、ドル円は109円台を回復した。

 米7年債入札の不調を材料とした債券売り(利回り上昇)により、一時1.6%を割り込んでいた米10年債利回りが大きく上昇する中で、週の後半にかけてはドル買いの動きが強まった。

 バイデン米大統領が就任後初となる記者会見で、新型コロナウイルスのワクチン接種ペースを加速させる方針を示したことなどもリスク選好の円売りを誘い、ドル円は109円台後半へ上昇。一時109円85銭まで上値を伸ばした。

 ユーロドルは週前半のドル売りに1.19台半ば手前まで上昇した後、一転してユーロ売りドル買いの動きに。ドル全面高に加え、新型コロナウイルスの感染拡大への警戒感が重石となり、週後半には1.1760前後まで大きく値を落とす展開となっている。

 ユーロは対円でも130円手前まで上昇した後、いったん128円30銭割れまで下落。ただ、週末にかけては円売りの動きが広がり、129円台前半まで値を戻している。

 その他目立ったのはNZドル売り。NZ政府が住宅価格高騰阻止のための税制優遇措置を発表。この結果、バブル防止を目的とする利上げ圧力が低下するとの思惑が低金利政策の長期化期待につながり、NZドル売りが広がった。

今週の見通し

 米長期債利回りの上昇傾向が継続し、ドルの先高観が強い。一方で米当局による景気支援姿勢がはっきりしていることに加え、米株高からのリスク選好での円売りも広がっており、ドル円はドル高、円安の両面から上方向を意識。

 心理的にも重要な節目となる110円手前にはドル売り注文が控えているが、今週は2日の金曜日に米雇用統計が発表されるため、関連指標を含めて節目を超える大きな動きになる可能性は十分にありそう。

 ただ、今週末から世界的にイースター(用語説明1)シーズンとなり、金曜日はグッドフライデー、月曜日はイースターマンデーで多くの市場が休場となる。

 長期休暇を前に積極的な取引を手控える動きや、ポジション調整の動きが広がる可能性がある点には要注意。

 金曜日は欧州市場が休場、米国市場も株式、債券、商品など多くの市場が休場となる。しかし米連邦政府の法定休日には当たらないことから、雇用統計は発表される。市場参加者が極端に少ない中での大きな材料となるだけに、大荒れの展開となる可能性には注意が必要。

 米国では今年に入ってロックダウンの緩和が進んでいる。前回2月の雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP)の数字が、事前予想の20万人増を大きく超える37.9万人増となった。ロックダウンの影響を強く受けるレジャー&ホスピタリティ部門(映画館・カジノ・劇場などからなるレジャー部門、レストラン・バーなどの飲食部門、ホテルなどの宿泊部門)が前月比35.5万人増となり全体を支えた。

 感染者数が全米で最も多く、行動制限が最も厳しい州の一つであるカリフォルニア州が、今月5日にようやく屋内施設の営業規制を緩和するなど、前回の雇用統計計測後も米国での規制緩和が進んでおり、こうした動きが3月の雇用統計に大きな影響を与えるとみられている。

 事前予想は59万人増と前回の数字をさらに大きく上回るものとなっている。25日に発表された新規失業保険申請件数(3月14日から3月20日分、用語説明2)が、パンデミック後最小となる68.4万件にとどまるなど、ここにきて米雇用市場は顕著に回復しているため、59万人増という予想値は十分にありそう。

 ただ、ロックダウン緩和の雇用への影響を数字的にしっかりと予想することは難しい。専門家による事前予想値もかなりの幅があり、予想からの大きな乖離が見られる可能性も。

 ある程度までの乖離は通常のマーケット環境では問題とならないが、グッドフライデーで市場参加者が少ないだけに、思惑大相場になる可能性も含めて注意したいところ。

 基調としてのドル高円安の流れは変わらず、目先のポイントである110円を超えて、中期的な次の大きな節目である112円に向かう動きを期待しているが、リスクの高さにも警戒が必要。

用語の解説

イースター 復活祭。クリスマスと並ぶキリスト教の重要なイベント。十字架にかけられたキリストが3日目に復活したことを祝う祭り。春分の日の後の最初の満月が来た次の日曜日。十字架にかけられた金曜日をグッドフライデー、イースター翌日の月曜日をイースターマンデーと呼び、多くの国や地域が祝日としている。
新規失業保険申請件数 英語のInitial Jobless Claimsからイニシャルクレームとも呼ばれる。米労働省雇用訓練局が毎週、前週に初めて失業保険給付を申請した人の数を、各州の失業保険給付に関する事務を担当する州事務所からの報告を集計して発表する。週ごとの指標で速報性が高いため、雇用統計の先行指標として注目される。特に米雇用統計の観測期間と重なる12日を含む週の数字は重要視される。

今週の注目指標

中国製造業PMI(3月)
3月31日10:00
☆☆☆
 中国国家統計局による中国国内の製造業の景況感調査による指数。前回2月は50.6と予想の51を下回り、1月の51.3から低下した。新型コロナウイルスの感染拡大防止のための旅行自粛などが響いたとみられ、好悪判断の基準となる50は何とか上回ったものの、9カ月ぶりの低水準となった。同時に発表された非製造業PMIは51.4とこちらも予想の52を下回っている。今回発表される3月分は若干改善見通しとなっており、予想は製造業が51.2、非製造業が52.0。なお4月1日に発表される財新による製造業PMIも51.3と2月の50.9から改善見込みとなっている。事前予想通り強めの数字が出てくると、中国景気への期待感から資源国通貨買いの可能性。対中輸出が大きい豪ドルは対円で84円を目指す動きも。
ISM製造業景気指数(3月)
4月1日23:00
☆☆☆
 前回2月のISM製造業景気指数は事前予想の58.9、1月の58.7を上回る60.8となり、約3年ぶりの高水準となった。内訳の中で重要視される新規受注が64.8と3.7ポイントの上昇、生産が63.2と2.5ポイントの上昇となっており、内容も力強いものとなった。雇用統計との関係で注目される雇用は54.4と2019年3月以来の高水準に。今回は61.0とさらに強めの数字が見込まれている。雇用などの関連指標も含めて注目を集める。予想前後の強めの数字が出てくると、米株高からのリスク選好での円売りも。ドル円は110円台乗せに向けた動きも。
米雇用統計(3月)
4月2日21:30
☆☆☆
 前回2月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比37.9万人増と事前予想の20万人増を大きく超える好結果に。失業率も6.3%と前々回から横ばい予想に対して6.2%と0.1%ポイントの低下を示した。NFPに関しては政府部門が8.6万人減となっており、民間部門だけを見ると46.5万人増に。行動制限の緩和を受けてレジャー&ホスピタリティ部門が35.5万人の大幅増を記録したことに加え、小売業が4.11万人増、1月分において訪問介護部門の雇用減などを受けてマイナスを記録したヘルスケア&ソーシャルアシスタンス部門が4.56万人増と、1月時点で新型コロナの感染拡大と行動制限の影響が強く出た部門が全般に反発した。3月に入って行動制限の緩和が全米でより進んだこともあり、こうした傾向がさらに強まると期待されている。前回大幅増となったレジャー&ホスピタリティ部門にしても、コロナ前に比べると依然として300万人以上雇用者が少ない状態となっており、増加余地はまだまだある。また、2月に米国を襲った大寒波など悪天候の影響で6.1万人減となった建設部門の雇用回復なども期待される。事前予想値はNFPが64.3万人増、失業率が6.0%。予想前後の強めの数字が出てくると、株高からの円売りの動きが期待されるところ。また景気回復期待からのインフレ上昇見込みが米長期金利をもう一段押し上げると、ドル全体の買いも。ドル円は110円台後半も十分に視野に入る状況か。

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