2021年04月05日号

(2021年03月29日~2021年04月02日)

先週の為替相場

ドル高の流れ強まる

 29日からの週、ドル高の流れが優勢な展開となった。

 ドル円は年度末を前にしたドル買いのフローがうわさされたことに加え、ユーロ圏と米国とのワクチン接種状態の違いからのユーロ売りドル買いの流れなどがドル全面高を誘った。

 米10年債利回りが一時1.75%を超えたこともドル全面高につながり、ドル円は週初の109円台前半から、週半ばには110円97銭と111円に迫る動きを見せた。

 先々週後半のドル高局面では上値を抑えた110円手前の売りも、それほどの抵抗につながらず、30日の市場で上に抜けると逆に勢いがつく格好に。

 イースターシーズンで2日は欧州、英国、オセアニアなどほとんどの国が休場。米国も株式や商品市場が休場で、債券市場も短縮取引となるなど、ほぼ休場ムードに。5日から北米市場は復活も、欧州市場などは休場が続くこともあり、週の後半にかけては様子見ムードが広がった。

 ドル円は31日の高値トライの後110円台半ば割れまで調整する場面も、下がると買いが入る流れで、ドル高円安基調が継続。110円台後半で週の取引を終えている。

 ユーロドルは3月半ばのユーロ買い局面で1.20ちょうど手前が重くなったこともあり、ユーロ売りドル買いが入りやすい地合いに。先週初めに1.1800が重くなると、31日には1.1700台まで値を落とす場面が見られた。

 イースター前には少し調整も1.17台後半まで。

 ユーロは対円ではしっかり。ワクチン接種の遅れを警戒した動きに、3月半ばに130円台後半から128円台前半まで下落したものの、先週に入って調整が強まる格好に。先週初めに129円割れを付ける場面も、その後130円30銭台まで上値を伸ばす展開が見られた。米景気回復期待からのリスク選好の流れなどが円売りにつながった面も。

 注目された2日の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が予想の66万人増を大きく超える91.6万人増を記録。もっともグッドフライデーで取引参加者が少なく、市場の反応は限定的に。ドル円は110円50銭台から110円75銭までの上昇にとどまった。

今週の見通し

 イースター明けのドル高基調再開を意識する展開。米雇用統計の数字は、市場参加者が少なかったことで発表直後の反応こそ小さいものとなったが、中期的に与えるインパクトはそれなりに大きいとみられる。

 内訳を見ると、レジャー&ホスピタリティ部門が2カ月続けて大きく増加するなど、行動制限緩和の影響がしっかりと出た形。その後も制限緩和が続いているため、今後のさらなる雇用増が期待される。

 物価の上昇圧力も強まっており、米長期金利はさらなる上昇か、少なくとも高止まりが予想される展開となっている。

 こうした状況はドル全面高の流れにつながりそう。米10年債利回りが、心理的にも、資金の流れ的にも大きな節目となりうる2%を目指す展開になると、ドル円はさらなる上昇がありそう。

 ただ、高値警戒感が出てきていることも事実で、大きめの調整が入る可能性には要注意。

 こうした中、今週はIMF/世界銀行グループによる春季会合(用語説明1)が実施される。その目玉として行われるパネルディスカッションではパウエル米FRB議長とユーロ圏からドナフー・ユーログループ議長(用語説明2)が参加する。

 米国では新型コロナワクチンを少なくとも1回は接種した人が1億人を超えるなど、順調にワクチン接種が進んでいるが、ユーロ圏はアストラゼネカ製ワクチンを一時止めたことなどもあって、接種に遅れが目立っている。新型コロナウイルスの感染拡大第4波も深刻で、フランスなどが厳しい行動制限に踏み切る中、米国と欧州の状況の違いがこのパネルディスカッションで強調される可能性も。

 また、世界的な長期金利の上昇について、米FRBが静観姿勢を示す一方、ECBは上昇を抑える姿勢を理事会で示した。ユーロ圏における政府側の当局トップであるユーログループ議長もECB同様の考えを示すと、欧州と米国の金利差拡大の期待からユーロ売りドル買いがさらに強まり、ドル全面高につながる可能性も。ユーロドルは昨年秋に下値を支えた1.1600手前が強く意識される展開に。

用語の解説

IMF春季会合 IMF(国際通貨基金)と世界銀行グループは、毎年秋に年次総会を、春には合同で春季会合を開催し、両機関における業務の進捗状況を議論する。年次総会は3年のうち2年を本部のある米ワシントンD.C.で、残りの1年は米国以外の加盟国で行われるが、春季会合は基本的にすべてワシントンD.C.での開催となる。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、昨年の春季会合、年次総会、今年の春季会合まではバーチャルで実施される。今年の年次総会以降の開催方式は未定。
パスカル・ドナフー パスカル・ドナフー(Paschal Donohoe)アイルランド財務相兼ユーログループ議長。ダブリン大学を出た後、P&Gなどでの勤務を経て、2011年にアイルランド議会議員に当選。欧州問題担当相、観光・スポーツ相、公共投資・構造改革相などを経て2017年から同国の財務相に就任。前任のセンテノ議長(ポルトガル財務相)の任期満了を受けた選挙で、スペインのカルビニョ副首相兼経済相、ルクセンブルグのグラメーニャ財務相との争いを制し、2020年7月よりユーロ圏財務相会合(ユーログループ)議長に就任。任期は2022年末まで。

今週の注目指標

米ISM非製造業景気指数(3月)
4月5日23:00
☆☆☆
 1日に発表されたISM製造業景気指数は、2月の60.8、予想値の61.5を大きく上回り、37年ぶりの高水準となる64.7となった。新規受注が大きく伸びるなど、内容的にも今後の経済成長が期待されるものに。雇用部門も59.6と約3年ぶりの高水準を記録した。新型コロナの影響で飲食部門が深刻な影響を受けるなど製造業以上に厳しい状況となった非製造業で、景況感の改善がどこまで見られるかが注目される。事前予想値は59.0と、2月の55.3から大きく改善見込み。製造業の水準には届かないが、予想通りもしくはそれ以上の数字が出ると、2018年11月以来の高水準ということもあり、ドル円は111円台に乗せる可能性が高そう。
FOMC議事録
4月8日3:00
☆☆☆ 
 3月16、17日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC) の議事要旨が7日(日本時間8日)に発表される。このFOMCでは政策金利・量的緩和の現状維持を決定。FOMC参加メンバーによる
経済見通し(SEP:Summary of Economic Projections)では、2021年の経済成長見通しを前回12月発表時の4.2%から6.5%へと大幅に上方修正。物価上昇率の見通しについても前回の1.8%から2.4%に大きく引き上げた。一方で政策金利については2023年末まで現行水準を維持する見通しを示した。各メンバーの政策金利見通しをドットで示したドットプロットでは、前回17人中5人のメンバーが2023年までの利上げ見通しを示していたのに対して、今回は18人中7人(12月18日にウォラー理事が就任したので1人多い)が利上げ見通しを示した。3月のFOMCでの物価上昇見通しの引き上げは、長期金利の上昇や市場の経済成長期待を支える形でドル買いにつながった。この時の議論がどのような形で行われたかが注目される。現状の物価上昇に対する楽観見通しが議事録でより強調されると、米長期金利のもう一段の上昇につながりドル買いに。ドル円は112円台を意識も。
パウエル議長ディスカッション参加
4月9日01:00
☆☆☆
 5日から11日までの日程で実施されているIMF/世界銀行による春季会合。その目玉となるパネルディスカッションが8日(日本時間9日)に行われる。パウエル米FRB議長、ドナフー・ユーログループ議長(アイルランド財務相)、オコンジョ=イウェエラWTO(世界貿易機関)事務局長、ゲオルギエヴァIMF専務理事がパネラーとして参加する。米国の景気は順調に回復する一方、新型コロナウイルスの感染拡大第4波の影響もあり、ここにきて厳しさを増すユーロ圏。対照的な両者の感染状況の違いが強調されると、ユーロ売りドル買いの動きが強まる可能性。ユーロドルは1.16台への下落も。

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