2021年04月12日号

(2021年04月05日~2021年04月09日)

先週の為替相場

ドル高やポンド高への調整強まる

 5日からの週、これまでのドル高の流れに対する調整が入る展開となった。

 年初1%を割り込んでいた米10年債利回りが先月末に1.75%を超えるなど、今年に入って米長期債利回りの上昇が続いていたが、さすがに過熱感も広がり、いったん調整の動きが優勢に。米債利回りが1.62%台まで低下する中でドル売りが強まり、ドル円は一時109円ちょうど近辺まで。先月末に1.1700台まで下落し、先週初めにも1.1730台を付けていたユーロドルが1.19台に上昇するなど、ドルは全面安の動きとなった。

 2日に発表された米雇用統計が、グッドフライデーで取引参加者が少ない中とはいえ、限定的な反応にとどまり、111円手前の売りが意識されたことが、その後のドル売りにつながった面も。

 イースターマンデーの中で110円を割り込んだドル円は、その後110円台を回復する場面も見られたが、利益確定売りなどに押される形で再び大台を割り込み、その後は110円ちょうど前後が重くなる形となった。

 昨年の大統領選をめぐる米ロの対立なども警戒感につながり、ドル売りに。8日の海外市場で一時109円ちょうど前後まで値を落としたが、108円台での売りには慎重姿勢が見られ、調整が入って109円台後半へ。

 ドル安基調が強まる中、ドル円の109円ちょうどトライに合わせ1.19超えを付けたユーロドル。その後の押し目が1.1860前後までにとどまると、週末にかけて再び1.19超えをトライ。1.1920台を付けるなど、ドル円以上にドル売りが顕著となった。

 ドル同様に売りが目立ったのがポンド。ポンドドルはワクチン接種が順調に進んでいることなどを好感して、先週前半に1.39台まで上値を伸ばしたが、その後は一転して売りに転じた。昨年末から続くユーロ売りポンド買いの流れに対する調整が入ったことなどがポンド売りを誘った。

 英アストラゼネカ製ワクチン(用語説明1)と血栓との関係についての警戒感などもポンドの重石となっている。ポンド円も先週前半に153円40銭台から149円50銭台まで大きく売りが出ていた。

今週の見通し

 年初からドル高、ポンド高、ユーロ安、円安の流れがやや優勢となっていたが、イースター休暇を挟んで、こうした流れに対する調整が目立つ展開となった。

 ドル円は111円手前が重くなって調整売りが出ると、もみ合いを経て直近では110円ちょうど前後が重くなっており、上値での利益確定売りの意欲を感じさせた。

 109円ちょうどを割り込む動きにも慎重姿勢が見られたことで、目先は109円台でのレンジ取引が意識されるところ。

 もっとも、先週末に発表された3月の米生産者物価指数(PPI)が前年比+4.2%と、事前予想の3.8%、前回の2.8%を大きく超える強めの結果となったことで、米物価上昇期待が広がっており、若干ドル買い方向の期待感が強そう。

 13日に発表される米消費者物価指数(CPI)もPPI同様に強く出た場合、米長期債利回りの上昇にもつながる可能性。米長期債利回り(名目長期金利)は、実質金利と期待インフレ率の和(フィッシャー方程式:用語説明2)によって表され、直近の物価動向を直接反映するものではないが、現時点での物価上昇は期待インフレ率の押し上げに寄与することを考慮すると、PPI同様にCPIが高めに出ると、米債利回りが先月末の水準を超えてさらなる上を目指す可能性も。

 ドル円は109円台でのレンジ取引を中心に、110円台回復を意識。

 ユーロドルは1.19台での買いにやや慎重。2月後半から3月前半にかけてのユーロ売りドル買いトライの局面で1.2240台から1.18台まで落とした後、1.20手前が重くなり、その後先月末にかけての1.1700台までの下げとなった。この後もう一段のユーロ買いが入ったとしても、1.20手前が意識される可能性が高い。1.18から1.19台半ばにかけてのレンジを中心に、次の方向性を探る展開か。ドル全面高基調に復するようだと1.18割れも。

用語の解説

アストラゼネカ製ワクチン 英製薬大手アストラゼネカと英オックスフォード大学が共同で開発した新型コロナウイルス向けワクチン。日本でも接種が始まっている米製薬大手ファイザーと独バイオ企業ビオンテックの共同開発によるワクチンや、米バイオ大手モデルナによるワクチンがmRNAワクチンであるのに対して、ウイルスベクターワクチンという種類で、ウイルスがスパイクたんぱく質を作る遺伝子を無害な別のウイルスに組み込み、そのウイルスごと投与する。ファイザー社のワクチンが-75度、モデルナ社のワクチンが-20度での保管が必要なのに対して、アストラゼネカ社のワクチンは2-8度と、通常の冷蔵庫での保管が可能。英国で同ワクチンは2020万回分接種され、その後血小板の減少を伴う血栓が79人で確認され、19名が死亡したと報告されている。
フィッシャー方程式 米国の経済学者アーヴィング・フィッシャーによる名目金利・実質金利・期待インフレ率の間の関係式。米イェール大学の教授であったフィッシャーは、初期の新古典派経済学者の一人として、貨幣数量説などを唱えた。フィッシャー方程式によると、名目金利は実質金利と期待インフレ率の和によって表される。これにより、名目金利を一定に保つ中で、期待インフレ率を押し上げると、実質金利が引き下げられ、景気刺激につながるとされている。

今週の注目指標

米消費者物価指数(CPI:3月)
4月13日21:30
☆☆☆
 9日に発表された米生産者物価指数は前月比・前年比ともに予想をはっきり上回る好結果となった。幅広い価格上昇が見られ、米国での景気回復の本格化に伴う物価上昇が進んでいるという印象を与えた。そうした中、より注目度の高い消費者物価指数が13日に発表される。米国でのインフレターゲットの対象は、多くの国で採用されている消費者物価指数ではなく、PCEデフレータ前年比であるが、変化の動向が似ていることもあり、発表の早い消費者物価指数が注目される傾向がある。予想は前年比+2.5%と前回の+1.7%から一気の上昇見込み。予想を超える物価上昇が見られると、長期金利の上昇にもつながり、ドル買いの動きに。ドル円は110円台後半を意識する展開に。
トルコ中銀政策金利
4月15日20:00
☆☆☆ 
 トルコのエルドアン大統領は自身の低金利志向に反して、利上げを積極的に続けたアーバル・トルコ中銀総裁(当時)を解任し、カブジュオール氏を新総裁に据えた。新総裁の下での初の中銀理事会となる。前総裁解任の経緯もあり、市場では利下げを期待する動きも見られる。エルドアン大統領も政策金利は1桁にすることも可能と発言。中銀への圧力をかけている。もっとも、新総裁は物価上昇への警戒感もあり、利下げに否定的な発言を行っている。市場の見方は揺れており、利下げを実施した場合トルコリラ売りの動きに。リラ円は13円割れが視野に入ってくる。
米小売売上高(3月)
4月15日21:30
☆☆☆
 2月の米小売売上高は同月に米国を襲った厳しい寒波の影響で前月比-3%へ落ち込んだ。ただ、これは天候という特殊要因によるものとの見方が強く、今回はその反動もあって一気の改善が見込まれている。予想は前月比+5.2%、変動の激しい自動車を除いたコアは、前回の-2.7%から+4.7%へと上昇の見込み。予想通りもしくはそれ以上の好結果が見られると、特殊要因絡みとはいえ大きなマイナスで警戒感を誘った米個人消費回復への安心感につながってドル買いが強まる可能性。ドル円は111円のターゲットに向けた動きも。

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