2021年04月19日号

(2021年04月12日~2021年04月16日)

先週の為替相場

米債利回りの低下がドル売り誘う

 12日からの週、米債利回りの低下やユーロドルでのユーロ買いの動きなどを受けて、ドル安の流れが優勢となった。

 これまでのドル高を支えていた米長期債利回りの上昇が一服。先月末に1.75%を付けた米10年債利回りは、先週初めも1.70%前後で推移していたが、その後利回りの低下が目立つ展開となり、一時1.53%前後を付けた。

 今月に入って米経済指標は堅調で、ISM製造業・非製造業景気指数や雇用統計などの重要指標が軒並み強い結果に。12日からの週も13日の米消費者物価指数が予想を超える上昇を示し、15日の米小売売上高も予想をはるかに超える強い数字となったが、ドル買いの反応は限定的に。指標発表直後はドル買いが入るも、値幅は小さくすぐに戻すなど、ドルの地合いが相当に重くなっており、頭の重い展開となった。

 ドル円は先週初めの109円台後半から、半ばには108円台後半に。週の後半は109円ちょうど手前が重くなるなどドル安基調が続いた。

 欧州通貨買いドル売りの動きも目立ち、ユーロ円は13日の米消費者物価指数の発表直後のドル買いが限定的なものにとどまったことで、ドル買い一服後の反動売りから一気にユーロ高ドル安が進む展開に。1.1870台を付けた後、1.19台半ば近くまで急騰すると、その後1.1990台と節目の1.20手前までユーロ高が進んだ。

 ポンドドルも1.36台後半から1.38台を付ける動きに。先々週初めからのユーロ買いポンド売りの動きもあり、頭を抑えられる場面も、押し目では買いが入る展開となった。

 来月予定されているスコットランドの議会選挙次第では、スコットランドの独立をめぐる2回目の住民投票実施の可能性が出てきており、ポンドに対する警戒感に。スコットランド民族党(SNP:用語説明1)が過半数を押さえる勢いとなっているが、同党のスタージョン党首(用語説明2)は、2023年までの住民投票実施を主張している。

 ドル主導の展開ということもあり、クロス円はしっかりとした方向性が見えず。ユーロ円は130円を挟んでの推移が続き、130円台半ば超えでは売りが出る一方、129円台後半では買いが入る流れとなった。

今週の見通し

 ドル売りの流れが強まる展開に。米債利回りの上昇が落ち着いたことで、ドル買いに対する調整が入りやすい地合い。対ポンドなどでも売りが出ていたユーロに対する買い戻しの動きも、ユーロドルでのユーロ買いドル売りからドル全面安を誘った。

 当面はこの流れが続く可能性が高い。米経済指標が軒並み好結果となっており、その中でドル高が進まなかったことで、短期筋の調整が入りやすくなっている。

 今週はそれほど目立った指標やイベントの予定がなく、流れが変わりにくい面も。

 ドル円は最初111円が重くなり、その後110円が重くなった後、109円をしっかり割り込んだ後に、109円が重くなるなど、売り遅れを印象付ける展開が続いている。今年に入り102円台から大きく上昇し、特に2月後半の105円近辺からの上昇局面以降、目立った押し目がなかっただけに、買いポジションがかなりたまっていた可能性も。

 106円から107円にかけての水準が重要なサポートとなりそう。108円台でのレンジ取引を中心に、下方向のリスクを意識か。

 ただ、本格化している米第1四半期企業決算が軒並み好調となっており、リスク選好の意識も継続。中長期的にはまだドル買い円売りの流れが続いている可能性。調整一服後に買い戻しが強まる展開も意識しておきたい。

 ユーロドルは先月末の1.1700台で売りが一服。米国や英国と比べてワクチン接種が進まず売られやすい地合いは継続も、今後接種が進展するとの期待が強まるともう一段の上昇も。1.22に向けた動きが広がるかどうか。

 ポンドはここにきて対ユーロで売られている分、上値進行が限定的に。来月のスコットランド議会選挙次第では、スコットランドの独立機運が高まる可能性があり、その場合ポンドは大きく減価する恐れがあるだけに、中長期的に買いにくい面も。地合いは上方向も、やや神経質な展開となりそう。目先のターゲットは上方向の1.4000近辺とみているが、下方向のリスクもしっかりと意識しておきたい。

用語の解説

スコットランド民族党 Scottish National Party(SNP)は英スコットランドの地域政党。1934年にスコットランド国民党とスコットランド党の合流によって誕生。1707年にイングランドとの合併により消滅していたスコットランド議会が、スコットランドの自治権を拡大する1998年のスコットランド法の下で1999年に再開されたことで、党勢を拡大。2007年の総選挙でスコットランド議会の第1党に、2011年の選挙では単独過半数に迫るところまで議席を伸ばした。イギリス議会選挙でも、スコットランド地区の59議席中56議席を獲得し、英国全体の第3党となっている。
スタージョン党首 ニコラ・ファーガソン・スタージョン(Nicola Ferguson Sturgeon)。グラスゴー大学を卒業後、弁護士としての勤務を経て、1999年にスコットランド議会議員に。スコットランド自治政府副首相、スコットランド民族党副党首を経て、2014年に行われたスコットランド独立をめぐる住民投票で敗れた責任を取って辞任した前任のアレックス・サモンド氏の後を受けて、同党党首兼自治政府首相に就任。一貫してスコットランドの独立を訴えており、ブレグジットが決まった後は、独立の是非を問う2014年以来2回目の住民投票を2023年までに実施すると発言している。

今週の注目指標

英消費者物価指数(CPI:3月)
4月21日15:00
☆☆☆
 英国の物価統計、消費者物価指数(CPI)、小売物価指数(RPI)、生産者物価指数(PPI)が21日に発表される。インフレターゲットの対象として最も注目を集めるCPI前年比は+0.8%と前回の+0.4%から大きく上昇も、ターゲットである+2.0%、許容下限である+1.0%にまだ届いておらず、厳しい状況が続く見込み。ワクチン接種の進展で英経済は正常化に向けた動きが広がっており、物価も着実に上昇している。予想通りもしくはそれ以上の上昇が見られると、今後への期待感もありポンド買いの動きも。ポンド円は先週の高値153円40銭台を意識する展開も。
ECB理事会
4月22日20:45
☆☆☆ 
 22日にECB理事会の結果が発表される。金融政策は現状維持の見込み。前回の理事会では現行のPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)について、第2四半期の買い入れ拡大方針が示された。実際4月5日からの週は前週よりも買い入れが拡大している。ただ、ECB加盟国の中には、第3四半期以降の買い入れペース低下を求める動きが見られる。今回の理事会で今後の方針がどのように示されるかが注目される。来年3月までとなっているPEPPの期限が守られるという印象が広がるとユーロ買いの動きに。ユーロドルは1.22を目指す動きも。
ユーロ圏製造業PMI(4月)
4月23日17:00
☆☆☆
 4月のユーロ圏及びユーロ圏主要国の製造業・非製造業PMI(購買担当者景気指数)が23日に発表される。前回62.5と強い結果を示したユーロ圏製造業PMIは62.0とほぼ同水準の好結果が見込まれている。ドイツやフランスも製造業PMIは前回の強めの水準と変わらない数字が予想されており、欧州の製造業の景況感改善を印象付ける状況となっている。予想及び前回の水準を超える結果が見られると、ユーロ買いの動きが広がりそう。今月に入って2018年以来の高値圏にあるユーロ円はもう一段の上昇も。ターゲットは132円台前半か。

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