2021年04月26日号

(2021年04月19日~2021年04月23日)

先週の為替相場

ドル売りの流れ継続

 19日からの週、ドル円は週末にかけて107円台半ばを割り込むなど、ドル売りの動きが優勢となった。12日の週からの流れを受けて、週初からドル売りが先行。先々週まで力強い動きを見せていた米株式市場が、米第1四半期決算の本格化を前にした様子見ムードの中で調整売りが入ったことも、ドル円の重石に。

 ドル円は週初から売られる展開となった。先々週末終値の108円80銭前後から、週末のビットコイン相場の急落や米株先物時間外取引の下げなどで値を落とした。いったんは108円ちょうど前後がサポートとなったが、108円台半ばからの買いに慎重姿勢が見られると、週半ばには107円80銭台と、108円をしっかり割り込む動きに。その後の戻りでは108円30銭手前が重くなり、108円ちょうどを挟んだ振幅が続き、週末にかけてドル売りが強まる中で一時107円台半ば割れまで。その後108円台をいったん回復する場面が見られたものの、戻りは鈍い。

 ユーロドルは先々週の取引で上値を抑えた1.2000を週初のドル売りの流れの中で上抜けすると、短期筋のストップロス注文を巻き込んで上昇。その後もユーロ高の流れが続いて、20日の海外市場で1.2080前後まで。その後は利益確定の売りなどにいったん値を落とすと、メルケル首相率いるドイツ与党CDU(用語説明1)が秋の総選挙を前に支持率で苦戦との報道が出たことなどを嫌気して1.2000割れまで。

 その後は1.20台前半を中心とした振幅が見られたが、週末にかけてドル売りの動きが強まると、高値を更新して1.2100ちょうど前後を付ける動きとなった。

 ユーロ円は週初の129円70銭前後からユーロ高の動きもあって131円手前まで上昇。その後はユーロ高に対する調整とドル円の下げに、129円60銭台と週初の安値を割り込んだ後は130円台半ば近くまで上昇。ドル円の下げもあって、週末を前に129円59銭までと、先週の安値を更新した後、海外市場でのユーロ買いに130円台半ば超えまで上昇するなど不安定な振幅が続いた。

 豪ドルは20日に公表された4月の豪中銀金融政策理事会議事要旨で、豪州経済の回復が予想以上との見方が示されたことなどを好感して、対ドルで0.7810台まで上昇。その後は利益確定の売りに加え、リスク警戒のドル買いなどに0.7690前後まで値を落とす展開に。豪ドル円も84円70銭台から一時83円00銭台まで。

 21日のカナダ中銀金融政策理事会は、予想を超える強気な姿勢が見られ、カナダ買いを誘った。事前の大方の予想通り、政策金利を据え置くとともに、量的緩和である債券購入プログラムを従来の週40億カナダドルペースから30億カナダドルペースに引き下げた。量的緩和縮小までは織り込み済みも、声明で2022年末までに経済のスラック(用語説明2)が吸収され、インフレが目標に達することを見込むとして、これまで2023年までないとされてきた利上げ時期の前倒しを示唆した。

 中銀の発表まではカナダ売りが目立つ中、ドルカナダは1.2650台を付けていたが、発表後に一気に1.2450台まで。その後の戻りも鈍く、ドル売りカナダ買い基調に。

今週の見通し

 4月に入ってドル高に対する調整の動きが広がっており、下方向のリスクが意識される展開。もっとも全般に値幅は小さく、じりじりとした動きが続いている。

 今月に入って米雇用統計、ISM景況感、小売売上高、消費者物価指数など重要な指標は軒並み強めに出ており、米景気回復の動きは順調。ワクチン接種も積極的に進められており、今後への期待感が広がる。

 1月からの上昇の勢いが強すぎたことで警戒感が出ているほか、ユーロ圏でワクチン接種が進み、これまで先行してきた米国や英国に、他の先進国がキャッチアップしていくことが期待される中で、ドル高の調整が入りやすくなっている面も。

 米国の状況自体はしっかりしているだけに、積極的なドル売りにまでは至っておらず、じりじりとした直近の動きにつながっているとみられる。

 今週もこうした流れが継続するとみられ、振幅を交えながら、下方向のリスクを意識か。ドル円は1月からの上昇局面で上値をいったん抑えるポイントとなった106円ちょうど前後がターゲットとなりそう。

 ただ、今週は米連邦公開市場委員会、米第1四半期GDP速報値など、米経済に関する重要な材料が予定されている。それまでは積極的な取引が手控えられ、108円前後でのレンジ取引に終始する可能性も。

 ユーロドルは1.2000前後がしっかりとなっており、下値しっかり感が強い。2月25日に付けた1.2243をターゲットとして上値に挑戦か。新型コロナの感染が拡大する中で、ユーロ圏の景況感がそれほど悪化せずに維持されており、今後への期待感が強いことを感じさせる状況だけに、ユーロドルはもう一段の上値トライの可能性が高そう。

 ポンドもユーロ同様に基本的にはしっかりとなっているが、今年に入ってから目立っていたユーロ売りポンド買いの動きに対する調整が進んでおり、対ユーロでのポンド売りが対ドル、対円でも頭を抑えてくる可能性。ポンドドルは1.4000台をしっかりと回復できるのかがポイントに。

用語の解説

CDU ドイツキリスト教民主同盟(Christlich-Demokratische Union Deutschlands:ドイツ語)。1945年に結成されたドイツの中道右派政党。ドイツ南部バイエルン州の地域政党CSU(ドイツキリスト教社会同盟)と統一会派を組んでおりCDUはバイエルン州で活動しない一方、CSUはバイエルン州外では基本的に活動しない。ドイツ議会はSPD(ドイツ社会民主党)とCDU/CSUによる事実上の二大政党制の時代が長かったが、他の政党の支持率拡大などもあって、現在のドイツは多党制となっている。2000年に現在の首相であるメルケル氏が党首に就任。2018年のドイツ地方選での敗北の責任を取りメルケル首相は党首を辞任し、クランプカレンバウワー氏が党首に就いていたが、党全体をまとめきれず昨年辞意を表明。今年1月の党首選を経てラシェット氏が党首となっている。
経済のスラック スラックとはたるみや緩みのこと。需要と供給のバランスが取れておらず、供給に余剰が生じている経済状況を指す。労働市場では求職者に対して求人が足りず、失業者が多く生じている状態を、経済全般では需要が不活発で供給能力が過剰となり稼働率が低下している状況のことをいう。

今週の注目指標

日銀金融政策決定会合
4月27日
☆☆☆
 4月26、27日に日銀金融政策決定会合が開催される。前回の会合で日銀はより効果的で持続的な金融緩和を行うための政策点検の結果を発表。長短金利操作の中での長期金利の許容変動幅の明確化や、ETF買い入れ柔軟化などが示された。こうした政策修正の後だけに、今回は現状維持が見込まれている。ポイントは今回の会合で示される展望レポート(経済・物価情勢の展望)。東京や大阪などに3回目の非常事態宣言が発令されたことで、経済成長や物価の見通しにどのような修正が入るかが注目される。今回のレポートから示される2023年度見通しにも要注意。依然として物価目標に遠い状況が示されると、今後の追加緩和への期待感が広がり、ドル円は107円台でしっかりとなる可能性。
米連邦公開市場委員会(FOMC)
4月29日03:00
☆☆☆ 
 27、28日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。金融政策は現状維持の見込み。前回のFOMCで示された参加メンバーによる経済見通し(SEP)では、今年の経済成長率見通しを12月時点の+4.2%から+6.5%に大幅に引き上げ、物価見通しについても12月時の総合・コア共に前年比+1.8%から、総合+2.4%、コア+2.2%と、ともにターゲットの+2.0%を一時的に超えるところまで引き上げた。一方で2023年までの現在の事実上ゼロ金利を続ける見込みを維持しており、直近の順調な景気回復の下でも、緩和的な政策を維持する姿勢を示した。こうした状況から今回は目立った波乱なく従来の姿勢を継続するという見方が大勢。ただ、先週カナダ中銀が量的緩和を他の先進国に先駆けて縮小し、声明でも利上げ時期を前倒しする強気な姿勢を示しており、地理的にも経済的にも結びつきの強い米国がある程度の配慮を見せる可能性には要注意。影響されて少し前向きな姿勢が見られるようだとドル買いに。ドル円は109円台に向けた動きも。
米第1四半期GDP速報値
4月29日21:30
☆☆☆
 米国で新型コロナワクチンの接種が進み、行動制限の緩和が進められる中で、第1四半期GDPは強めの数字が期待されている。第4四半期GDPは前期比年率+4.3%(確報値)と、第3四半期の+33.4%とは比べられないものの、力強い数字に。第1四半期は、前期時点で弱かったレジャー&ホスピタリティ部門の回復などが期待され、前期比年率+6.9%が見込まれている。予想通りもしくはそれ以上の好結果が出れば、6月のFOMCもしくは8月のジャクソンホール・シンポジウムで今後のテーパリングに向けた示唆があるとの市場の期待を押し上げ、ドル買いに。ドル円は110円台回復に向けた動きも。

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