2021年05月17日号

(2021年05月10日~2021年05月14日)

先週の為替相場

米物価の強さがドル買い誘う

 5月10日からの週、ドル円は週半ばまで7日の米雇用統計の弱さを受けたドル売りの影響が残る形で頭の重い展開に。雇用統計発表後に付けた安値からは値を戻したものの、109円台での買いに慎重姿勢が見られ、11日の海外市場では108円30銭台を付ける場面が見られた。

 12日に発表された4月の米消費者物価指数(CPI・用語説明1)が予想を大きく上回る強い結果となったことで流れが一変。3月のCPIが前月比が+0.6%と2012年以来の伸びを示したこともあり、4月は+0.2%程度にとどまるとの予想に対し、結果は2009年以来の+0.8%。内訳を見ると、3月はエネルギー価格の上昇が全体を押し上げたが、4月にかけてはエネルギー価格の上昇が落ち着き、前月比でマイナスとなった。しかし、食品とエネルギーを除いたコア部分の伸びが+0.9%と1982年以来の強い伸びを示し、市場の物価への警戒感が一気に強まった。前年比も2008年以来となる4.2%の大きな伸びとなった。この結果、雇用統計の弱い結果をきっかけに後退していたFRBの早期テーパリング実施期待が復活。6月のFOMCでのテーパリング示唆はさすがに難しいとみられるものの、8月のジャクソンホール会議での示唆は可能性が十分にあるのではとの思惑もあって一気にドル買いが広がった。ドル円は108円70銭前後から109円台後半に。ユーロドルは1.2120前後から振幅を経て1.2060台に。

 翌日の米生産者物価指数(PPI・4月)も強めに出ており、物価上昇に対する期待感がドルの支えとなってドル高傾向が継続。ドル円は109円台後半での推移が続いた。

 低下傾向が見られた米長期債利回りがこうした物価の上昇傾向を受けて持ち直し、ベンチマークとなる米10年債利回りは1.70%台を一時回復する展開に。

 もっとも週末にかけては調整の動きが広がった。米債利回りがじりじりと低下する中で、ドル円は頭の重い展開に。14日の米小売売上高が予想を下回る弱い数字となったこともドル売り円買いを誘い、一時109円20銭割れまで。ユーロドルが1.2150前後を付けるなどの動きに。

 今月に入っての米雇用統計、ISM景況感に続いて小売売上高まで弱く出るなど、米景気回復に向けた動きの勢いがやや減速気味となっている。その結果、米政府の追加対策への期待感や緩和政策の長期化観測が米株高を誘う格好でドル円の支えとなっており、ドル高進行一服も、109円台維持と下値はしっかり。

今週の見通し

 方向性を探る展開に。米株の上昇などが円売りを誘い、ドル円はしっかりとなっているが、米長期債利回りのさえない動きから上値も重い。

 3月末から4月初めにかけて付けた110円台が近くて遠い状況。110円手前の売りを崩すだけの勢いに欠ける。

 米消費者物価指数の強めの結果を受けて、インフレ警戒感を背景とした量的緩和の縮小に向けた市場の思惑が広がっている。ただ、今月に入って物価以外の指標が軒並み弱めの結果を示す中で、パウエルFBR議長やイエレン財務長官といった元々景気支援意識の強い当局者が緩和策を後退させる可能性はそれほど高くない。

 ドルは売り買い交錯の中でレンジ取引が続く可能性。

 次の方向性を探る中で注目したいのは米国の景況感の変化。先週末に発表された5月のミシガン大学消費者信頼感指数は4月比で上昇するとの期待に反して、大きく悪化した。今週は17日にNY連銀製造業景気指数、20日にフィラデルフィア連銀景況指数、21日にマークイット製造業・非製造業PMI(購買担当者景気指数・用語説明2)など、アンケート調査を基にした景況感関連の指標発表が相次ぐ。これらの指標が軒並み鈍化を示すようだと、ワクチン接種の進展で前向きな姿勢が強まる米景気に対する警戒感に。

 米国や英国などに比べて遅れていたユーロ圏での接種が進む中で、ユーロドルでのユーロ買いドル売りなどを中心にドル売りが進む可能性も。

 ただ、米雇用統計を受けていったんは後退した市場のテーパリング早期開始期待はかなり根強い。下がると買いが入る流れが継続する可能性も高い。

 ドル円は下方向のリスクを意識も、基本はレンジ取引か。対円、対ポンドでも買いがやや優勢なユーロの対ドルでの動きなどがカギを握る可能性も。

用語の解説

米消費者物価指数 米消費者物価指数(CPI : Consumer Price Index)は、労働省労働統計局(BLS)が米国都市部の消費者が購入する商品やサービスの価格を調査して指数化したもの。景気動向以外の要因での変動が激しい食品とエネルギーを除いたコア部分の数字なども同時に発表される。CPIは多くの国でインフレターゲットの対象とされているが、米国の場合はPCEデフレーターであってCPIではない。ただPCEデフレーターより2週間程度発表が早く速報性に優れることから、市場ではCPIをより重視する傾向がある。
マークイット製造業・非製造業PMI 英ロンドンに本社を置く世界的な金融情報サービス会社IHSマークイットが米国の製造業・非製造業の購買担当役員に宛ててアンケート調査を行い、その結果を元にして指数化した経済指標。ISM製造業・非製造業景気指数と同系統の指標。速報値ベースでは製造業と非製造業が同時に発表される。改定値は基本的にISMと同日に発表され、ISM同様に製造業が先に発表される。

今週の注目指標

米FOMC議事録
5月20日03:00
☆☆☆
 4月27、28日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事要旨が19日(日本時間20日午前3時)に公表される。事前見通し通り政策金利・量的緩和策の現状維持を決めた4月のFOMC。3月の声明では「パンデミックが重大なリスクをもたらす」と表現された景気認識について、4月は「経済見通しへのリスクが残る」と、新型コロナワクチン接種拡大などを受けて穏当な表現に上方修正されている。こうした変更が生じた委員会内での議論から今後の見通しについてのヒントが得られると、ドル相場に影響が出そう。前向き姿勢が目立つようだと、ドル円は110円台にしっかりと乗せる可能性。
豪雇用統計(4月)
5月20日10:30
☆☆☆ 
 前回3月の豪雇用統計は雇用者数が前月比7.07万人増と、2月に続いて予想を大きく超える好結果となった。もっとも正規雇用が2月の8.91万人増に対して2.08万人減と雇用の減少を示し、その分非正規雇用が2月の0.05万人減に対して9.15万人増と伸びている。この結果、全体の伸びは力強かったが相場への影響は限定的なものにとどまっていた。今回は2.0万人増と落ち着いた伸びが見込まれている。正規雇用を中心に予想前後の強めの数字が出てくると、豪ドルは買いが強まる可能性。豪ドル円は10日に付けた85円80銭前後がターゲットに。
米マークイットPMI(5月・速報値)
5月21日22:45
☆☆☆
 4月のISM製造業・非製造業景気指数がともに予想を下回る弱めの数字となったが、4月のマークイットPMI速報値は製造業が60.5、非製造業が64.7と、ともに統計開始以来最高水準を記録した。今回も製造業が60.2、非製造業が64.5と若干の鈍化もほぼ同水準が見込まれている。雇用統計などの弱さを受けて企業の景況感悪化からの設備投資減少が警戒されており、予想通り強めの数字が示されるとドル買いに安心感も。ドル円は110円台半ば超えがターゲットに。

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