2021年05月24日号

(2021年05月17日~2021年05月21日)

先週の為替相場

振幅目立つ展開、若干頭が重いが方向性が見えず

 5月17日からの週、ドル円は13日に付けた109円79銭からの調整局面が続き、やや頭の重い展開。109円割れから109円30銭超えまで調整が入った後、108円50銭台まで急落し、その後下げ分をほぼすべて戻すなど不安定な振幅となる場面も見られた。

 週初めに株高などを受けて109円台半ばを付けたドル円は、その後ユーロドル主導でドル売りが強まる中で頭の重い展開に。ユーロ圏のワクチン接種の加速や、欧州債利回りの上昇傾向などがユーロ買いドル売りを誘った形。

 NY原油の上昇などもありリスク選好での欧州通貨・オセアニア通貨高、ドル安の流れも見られた。

 その後米債利回りの上昇などもあってユーロ買いドル売りに対する調整が広がり、ドル円も108円台後半からいったん109円30銭台に上昇した。

 しかし、19日の暗号資産市場の急落を受けて市場にリスク警戒の動きが一気に広がり、ドル円が108円50銭台を付けるなどの動きに。2月にテスラ(用語説明1)がビットコインに15億ドルを投じ、製品の代金としてビットコインを受け入れると発表したことから始まった暗号資産の上昇であったが、13日に同社が代金としての受け入れの一時停止を発表。ビットコイン売りが優勢となっていたところに、中国が暗号資産のマイニングや取引に対する規制強化を発表したことで、売りが一気に加速して暴落を招く展開となった。

 もっとも同日NY市場午後に入って、テスラのイーロン・マスクCEOがビットコイン市場に対する支持を表明。同日発表されたFOMC議事録で一部メンバーからのテーパリングの議論開始予想が出ていたことが示されたこともあり、ドル円はいったん買い戻しが広がり、下げ分をほぼ解消する不安定な動きに。

 ただ、その後はリスク警戒の動きもあって、ドル円がじりじりと値を落とし、108円台後半を付ける動きに。英製造業PMIの好結果を受けたポンド高ドル安もドル売りを誘った。

 週末にかけて米製造業・非製造業PMIが予想に反して前回を超える好結果となったことや、カプラン・ダラス連銀総裁(用語説明2)やハーカー・フィラデルフィア連銀総裁などからテーパリングの議論開始に前向きな姿勢が示されたことを受けてドル買いが優勢になったものの、ドル円は109円ちょうど前後が上値を抑えており、値幅は限定的に。

今週の見通し

 早期テーパリング期待がドルを押し上げる可能性がある。地区連銀総裁から早期のテーパリング開始に向けてはっきりとした姿勢が示されており、ドルを支える格好に。

 4月の雇用統計、小売売上高、ISM製造業・非製造景況感指数など米経済統計が軒並み弱い結果となり、市場の早期テーパリング期待がやや後退する流れが見られたが、物価の上昇が目立っていることに加えて、FOMC議事録で複数のメンバーからテーパリング議論の開始についての言及があったことから市場の期待が再び強まってきている。中立派という認識のあるカプラン・ダラス連銀総裁らがテーパリングの議論開始に前向きな姿勢を示したことで、地区連銀総裁を中心に金融政策の正常化への意欲が強いという見方が広がっている。

 また、米雇用統計などを受けて、市場はいったん早期テーパリング期待を大きく後退させた後だけに、期待の根強さがドル買いにつながりやすい地合いに。

 もっとも米長期債利回りがややさえない推移となっており、ドルの上値を抑える格好に。今月前半のように1.5%台前半へ低下する展開が見られると、ドル売りの勢いが勝る可能性も。

 ドル円は基本的には108円台後半を中心としたレンジ取引か。109円台に乗せる場面もありそうだが、109円台半ばからの売りを崩す勢いが見られるかどうか。108円台前半では買いが入るとみられ、上下ともに動きにくい展開も。

 ユーロドルは1.21台後半でのもみ合い。ユーロ圏内でのワクチン接種の進展は買い材料となっているが、先週発表されたドイツやユーロ圏の製造業PMIがさえず、強めに出た英国や米国の状況との対比で、慎重な見方も。1.2150/60のサポートを割り込むと売りが加速する可能性もありそう。

用語の解説

テスラ 米カリフォルニア州に本社を置く電気自動車及びクリーンエネルギー関連会社。設立は2003年。創業時に資本の大半を提供したイーロン・マスク氏が2008年よりCEOとなっている。2021年2月にビットコイン市場に15億ドルを投資し、自動車購入に際してビットコインを受け入れると報じられ、同年4月の同社株主総会で正式に発表された。5月12日にマスクCEOはツイッター上でビットコイン決済によるテスラ車購入の停止を発表し、ビットコイン安を招いた。その後、同氏は保有しているビットコインを売却していないと発言し、今後もビットコイン市場を支持する姿勢を表明した。
カプラン・ダラス連銀総裁 ロバート・カプラン(Robert Kaplan)ダラス連銀総裁。ハーバード大学でMBAを取得後、23年間米金融大手ゴールドマン・サックスに勤め、副会長まで昇進した。その後ハーバード大学ビジネススクールの経営学教授を経て、2015年から現職。金融政策に対する姿勢は比較的中立とみられている。タカ派として知られるハーカー・フィラデルフィア連銀総裁やボスティック・アトランタ連銀総裁だけでなく、同氏がテーパリング議論に前向きとなったことが市場にインパクトを与えた。もっとも今年のFOMCでの投票権は有していない。

今週の注目指標

独Ifo景況感指数(5月)
5月25日17:00
☆☆☆
 ドイツのIfo経済研究所による景況感調査。前回4月分は期待指数が3月から悪化し、全体の数字も予想を下回る96.8にとどまった。コロナの新規感染者数の高止まりなどが警戒されたとみられた。その後同国でのワクチン接種が急速に進む中、新規感染者数は大きく減少しており、今回は98.1が見込まれている。先週のドイツ製造業PMIが予想を下回り、警戒感を誘ったこともあり、今回期待通り強めの数字が出てくると安心感からのユーロ買いが強まる可能性。ユーロドルは1.22台半ばがターゲットに。
NZ中銀政策金利
5月26日11:00
☆☆☆ 
 NZ中銀の金融政策理事会の結果が26日に発表される。政策金利は現行の0.25%、量的緩和である資産購入プログラム(LSOP)も現行の1千億NZドルで維持される見込み。前回は声明において、中期的に物価が政策目標を下回る見込みを示し、必要であれば利下げを行う用意があると表明。ただ、その後発表された第1四半期消費者物価指数が昨年第4四半期から上昇。今月発表されたNZ中銀四半期予測において、1年物、2年物ともに物価見通しが引き上げられており、声明での警戒感が後退する可能性がある。この場合NZドル買いにつながると期待される。NZドル円は78円台半ばをしっかり超えるかどうかがポイントに。
クオールズFRB副議長議会証言
5月25日23:00
☆☆☆
 クオールズFRB副議長が上院銀行委員会で議会証言を行う。銀行監督担当理事として、金融規制などについての発言がメインとなるが、同氏はこれまでも規制がテーマの講演の中で、物価見通しや金融政策について発言する例があり、注目されるところ。FRB理事の中で比較的中立とみられる同氏が早期のテーパリングに前向きな姿勢を示すようだと、一気のドル買いも。ドル円は109円台後半を試す可能性。

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