2021年05月31日号

(2021年05月24日~2021年05月28日)

先週の為替相場

ドル高基調継続見込みも、雇用統計次第か

 5月24日からの週、ドル円は週末にかけてドル高円安の動きが強まり、一時4月6日以来となる110円台を付ける場面が見られた。

 週の半ばまでは108円台後半を中心としたもみ合いに。オフショア人民元でのドル売り人民元買いなどをきっかけにドル全面安基調が強まり、108円50銭台を付ける場面もあったが、108円台半ばのサポートが下値を支えた。

 米国のテーパリング期待を受けたドル買いもあり、週半ばにかけて109円台にしっかり乗せると、109円20銭前後で一時上値を抑えられたものの、週後半にかけてドル買い円売りの動きが強まる形で109円台後半に。27日に発表された米新規失業保険申請件数の好結果や、米第1四半期GDP改定値での個人消費の上方修正などがリスク選好の円売りを誘った面も。

 週末にかけて米PCEデフレータの好結果もあって110円台に乗せる場面も見られたが、一気の上昇による高値警戒感から利益確定売りも出て、大台を維持できずに週の取引を終えている。

 ユーロドルも先週前半はドル売りの動きにしっかり。独Ifo景況感指数の好結果なども支えとなり、先週初めの1.2180前後から1.2260台まで一時上値を伸ばした。その後週後半にかけてはドル買いに押され、値を落とす動きに。

 ユーロ圏の出口戦略スタートよりも米国のテーパリング開始が早いのではとの思惑などがユーロ売りドル買いを誘い、週前半の上昇分を解消する形となった。

 週末にかけてはドル高の勢いが一時加速。ドル円が110円台を試す局面で1.2130台まで値を落とす場面が見られたが、その後1.22台を付けるなどユーロ売りドル買いの動きは短期間にとどまり、1.21台後半の先週初めとほぼ同水準で週の取引を終えている。

 その他目立った動きを見せたのはNZドル。26日のNZ中銀金融政策理事会では、事前見通し通り政策金利と量的緩和の現状維持を決定。サプライズとなったのは声明内容で、前回2月の会合で示された「必要であれば利下げを実施」との文言が削除された。また、今後の見通しの中で、前回まで空欄だった2021年6月以降の政策金利見通しが公表され、来年9月までの利上げ見通しが示されたことで、NZドルの急騰を誘った。

 対ドルで0.7220台で金融政策の発表を迎えたNZドルは0.7310台まで上昇。その後も高値圏でもみ合ったが、週末にかけてのドル高にいったん上昇分を解消する動きに。

今週の見通し

 4月6日以来の110円台を付けるなどドル高円安基調が優勢なドル円。今週から6月に入って米雇用統計をはじめとする重要指標が相次いで発表される中で、堅調な動きが維持されるかどうかが注目されるところ。

 特に4日に発表される米雇用統計(5月)は、前回がかなり大きなサプライズとなっただけに関心を集めている。

 前回4月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数(NFP)が事前予想の前月比100万人増に対して、わずか26.6万人増にとどまった。3月の数字が速報時点での91.6万人増から77.0万人増まで下方修正された上での弱い数字だけに、インパクトの大きなものとなった。失業率も3月の6.0%から5.8%への改善見込みだったが、6.1%に悪化した。

 今年に入ってワクチンの接種が進み、全米各地で行動制限の緩和が行われる中、順調な回復を見せていた米国の雇用市場に息切れが感じられる結果に、市場は今後への警戒感を一気に強める格好となった。

 もっとも労働参加率が上昇し、U6失業率(用語説明1)と呼ばれる広義の失業率の改善も見られるなど、内訳には強い部分も。また、季節調整前の実際の数字を見ると、3月が117.6万人増、4月が108.9万人増とかなり強めの数字を維持している。パンデミック後、社会状況が大きく変化する中で季節調整がうまくいっていないとも指摘されており、それほど心配する数字ではないとの見方もある。

 こうした状況もあり非農業部門雇用者数の事前予想は65万人増と、しっかりした雇用増が期待されている。失業率も5.9%への低下が見込まれている。

 週間ベースの新規失業保険申請件数を見ると、雇用統計の基準日(用語説明2)である12日を含む週の結果は4月が56.6万件だったのに対して、5月は44.4万件となっており、大きく改善している。最新の申請件数は40.6万件まで低下するなど、かなりの好調さを示しており、米国の雇用情勢の力強さを印象付けている。

 予想もしくはそれ以上の好結果が出る可能性は十分あるとみられ、その場合、米債利回りの上昇などを伴ってドル高円安の動きが広がると予想される。ドル円は111円に向けた動きも期待されるところ。

 1日に発表される米ISM製造業景気指数、3日のADP雇用者数、ISM非製造業景気指数など、雇用関連の指標も合わせて注意したいところ。

用語の解説

U6失業率 米労働省は失業率の測定に当たり、U1からU6までの段階を設けて調査・発表している。一般的な失業率はU3となる。通常の失業者に加え、労働の意欲・能力はあるものの雇用情勢の悪さなどを理由に直近4週間求職を行わなかった人や正社員での雇用を望みながらパートタイムで労働している人など、いわゆる縁辺労働者を加味した失業率がU6失業率。不完全雇用率とも呼ばれ、FRBが金融政策判断において重要視している指標の一つとされている。
雇用統計の基準日 雇用統計は月次のデータだが、このうち事業所調査の対象である非農業部門雇用者数、週平均労働時間、平均時給などの項目は、1カ月間すべてのデータを調査するのではなく、12日を含んだ1週間のデータを基に計算される。この毎月12日を基準日と呼ぶ。

今週の注目指標

米ISM製造業景気指数(5月)
6月1日23:00
☆☆☆
 3月に約37年ぶりの高水準となる64.7を記録した同指数。4月は3月からさらなる上昇が見込まれていたが、結果は60.7と予想及び前回値を大きく下回る弱い結果に。サプライチェーン問題が深刻化する中、受注残が過去最大になるなど厳しい状況が示された。半導体不足による自動車生産の抑制などが懸念されている。今回の予想は60.9と若干上昇も前回とそれほど変わらない水準。雇用情勢の改善などが支えとなりそうだが、半導体不足などは継続しており、全体の頭を抑えるとみられている。予想を超えて、3月のような好結果が示されるとドル高が加速し、110円台後半をトライする動きに。
米雇用統計
6月4日21:30
☆☆☆ 
 非農業部門雇用者数の予想は65万人増と前回の26.6万人増から伸びが強まる見通し。失業率は5.9%への低下が見込まれている。前回の非農業部門雇用者数の内訳を見ると、製造業では自動車が2.7万人減と厳しい数字になった。世界的な懸念材料となっている半導体不足が影響したとみられる。その影響は産業機械などを中心により広範に及ぶことが懸念され、予想を下回る可能性も十分にある。前回並みもしくは小幅な拡大程度の数字にとどまると、いったんドル高の調整も。ドル円は109円台前半トライに。
グリーンスワン・カンファレンス
6月4日20:00
☆☆☆
 6月2日から4日にかけての3日間、BISやフランス中銀などが主催する金融と気候変動に関する会議「グリーンスワン・カンファレンス」が開かれ、日銀の黒田総裁をはじめ多くの国の中銀総裁が参加する。同カンファレンスで最も注目を集めているのが、最終日の最後のパネルディスカッション。FT紙の米国版責任編集者などを務めるジリアン・テッド氏をコーディネーターとして、パウエルFRB議長、ラガルドECB総裁、ゲオルギエバIMF専務理事、カルステンスBIS総支配人、ビルロワドガロー仏中銀総裁、易中国人民銀行総裁が参加する。今後の世界の金融政策見通しを占う重要なイベントとなっている。各参加者から経済回復に前向きな姿勢が示されるようだと、リスク選好の円売りも。ユーロ円は135円に向けた動きが期待される。

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