2021年06月21日号

(2021年06月14日~2021年06月18日)

先週の為替相場

ドル振幅を見せる展開

 6月14日からの週、ドル円はいったん大きく上がったが、その後上昇分を打ち消す動きとなった。

 109円台後半で先週の相場が始まると、米債利回りが節目の1.50%超えまで上昇したことなどを材料に110円台を回復。もっとも注目された15日・16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に110円台での買いにも慎重姿勢が見られ、110円ちょうどを挟んでの振幅となった。

 注目されたFOMCを受けてドル高が一気に進行した。マーケットの予測どおり政策金利、量的緩和策を据え置いたFOMCは、3か月に一度公表される同メンバーによる経済見通し(SEP)において、今年の経済成長見通し、物価見通しを大きく上方修正。またSEP内で示される年末時点での各メンバーの予想をドットで示したドットプロットについて、前回3月時点では、023年末まで金利据え置き予想が多数派だったが、2023年末時点で2回の利上げという見通しが中央値に変わった。利上げ見通しが強まり、ドル高に繋がった。

 3月のFOMC発表後、物価の上昇が著しく、経済成長の動きも見られたことから2023年末時点で利上げ見通しが大勢になるところまでは織り込みが進んでいた。しかし、2回の利上げはサプライズとなった。利上げと利上げの間にはある程度の期間を置かれることが多いことや、最初の利上げ前に量的緩和が十分縮小(もしくは終了)している必要があることから、量的緩和の縮小(テーパリング)が予想以上に早く始まるとの思惑もドル買いを誘った。

 もっともFRBがタカ派にシフトしたとの思惑が広がって米株が値を落とし、世界的な株安につながる形でリスク警戒の動きが強まる展開に。ドル円はFOMC後に110円80銭台まで上昇も、その後110円を割り込む動きを見せた。

 金曜日にはハト派で知られるセントルイス連銀のブラード総裁(用語説明1)が、2022年中の利上げ見通しに言及。FOMCでのドットプロットでは18名のメンバー中、7名が2022年中の利上げ見通しを示したが、ブラード総裁がそのうちの一人であることを明かした。

 同総裁はハト派の中でも特に緩和に積極的という認識が強かった分、市場のサプライズにつながり、ドル円は110円50銭手前まで再び上昇も、株安の動きが重石となり、週末にかけて再びドル安円高が強まり、上値から値を落とした。

 日銀金融政策決定会合は目立ったサプライズ無く、市場の反応は限定的に。

 その他通貨の中でやや動きが目立ったのがポンド。ポンドドルは1.41台前半でのもみ合いから、ロックダウンの解除延期でいったん1.40台前半となった。新型コロナウイルス変異株での感染拡大で、21日予定の完全解除を最大4週間延長すると14日に発表。売りが出る展開となった。もっとも、その後はいったん買い戻しの動きが見られ、16日の海外市場で先週の高値となる1.4130台を付けた後、FOMC後のドル買いに1.4000割れに。さらに、英国とEUとの北アイルランド問題などでの対立が警戒感を誘う形で、その後も対円、対ドルともにポンド売りが続き、対ドルで1.3800割れを付ける展開に。ポンド円も先週前半の155円台半ば近くの高値から週末には152円割れを付ける動きが見られた。

 トルコ中銀は17日の政策会合で大方の予想通り金利を据え置いた。今月初めにエルドアン大統領が7月か8月には金利は引き下がっている必要と発言して警戒感につながったが、中銀は声明でインフレが鈍化するまでは引き締め策を維持すると表明し、一時リラ買いの動きに。もっとも、世界的な株安からのリスク警戒での新興国通貨売り円買いの勢いが勝り、流れ的にはリラ安円高が続いた。

今週の見通し

 FOMCをきっかけに株安の動きが強まっている。市場では8月のジャクソンホール会議でパウエル議長がテーパリング開始について言及するという見通しを織り込みつつある状況。

 ただ、米株の下げが強い一方で、テーパリング開始で期待されていた米債利回りの上昇やドル高の動きはついてきていない。リスク警戒の流れが優勢となる展開に。

 地区連銀総裁を中心に米FRBの姿勢が明らかにタカ派にシフトしている状況が、これまでの株高を誘っていたゴルディロックス相場(用語説明2)の後退もしくは終了につながるのではとの警戒感につながっている。

 リスク警戒の流れが今後も広がるとドル買い円買いの動きがもう一段強まる可能性も。ドル円以外でドル買いが入る分、ドル円の下げは限定的なものにとどまる可能性が高いが、豪ドルなどの資源国通貨や新興国通貨が対ドル、対円ともに値を落とす可能性がありそうで、ドル円も頭を抑えられる展開か。109円台から110円台半ばにかけてのレンジ取引を中心に、108円台までの調整が入るかどうかを見極める展開に。

 パウエル議長をはじめとするFRB中核メンバーはハト派姿勢を維持しているとの思惑もあり、今週予定されている議長の下院特別小委員会での議会証言などを確認したいとの思惑も。

 ワクチン接種の進展が目立つユーロは単体で買いが入りやすい分、クロス円が下げ基調となる中でも比較的落ち着いた動きとなる可能性が高いが、豪ドル円などは大きく値を落とす可能性も。先週後半に84円台後半から82円台まで値を落としたところであるが、80円を試しに行く可能性もありそう。

用語の解説

ブラード総裁 ジェームズ・ブラード(James Bullard)セントルイス連銀総裁。ミネソタ州フォレストレイク出身。セント・クラウド州立大学を卒業後、インディアナ大学で経済学の博士号を取得。卒業後セントルイス連銀に新卒入行。リサーチ部門エコノミストから、同部門担当副総裁を経て、2008年4月より現職。2019年9月にFOMCが0.25%の利下げを行った際に、二名のメンバーが据え置きを主張するなど、利下げ自体が微妙という情勢において、一気に0.50%の利下げを実施することを主張するなど、超緩和的な姿勢で知られており、現在のFOMCメンバーの中でもトップクラスにハト派という認識を持たれていた。
ゴルディロックス相場 ゴルディロックスとは、有名な英国の童話「三匹のくま」に出てくる主人公の女の子の名前。クマの家で飲んだぬるいスープにちなんで、経済が過熱していない、冷え込んでもいない状況を指している。安定的な状況を受けてマーケットではリスク選好の動きが強まりやすいといわれている。

今週の注目指標

パウエルFRB議長議会証言
6月23日03:00
☆☆☆
 パウエルFRB議長が、下院特別小委員会で新型コロナウイルスの影響と今後について議会証言を行う。ハンフリー・ホーキンズ法に基づき半期に一度実施。新型コロナウイルス対応での特別対応により、証言することとなった。今月のFOMCでややタカ派的な姿勢が目立つ格好となったが、議長自身は慎重姿勢を維持しているとみられている。ただ、物価の著しい上昇は議会にとっても警戒材料であり、このあたりの見通しについて、質疑応答を含めて注目が集まっている。テーパリング開始に向けた前向きな姿勢が見られるようだと、米株安の動きが広がる中で円高の動きも。豪ドル円が81円台をトライするような、クロス円での円高進行も。
ユーロ圏PMI
6月23日17:00
☆☆☆ 
 23日16時15分にフランス、16時30分にドイツ、17時にユーロ圏の6月の製造業及び非製造業PMI速報値が発表される。いずれも製造業は5月からの鈍化、非製造業は5月からの改善が見込まれている。新型コロナワクチン接種が欧州で急速に進んでいる状況が反映されていると見られる。非製造業のPMIが予想通りもしくはそれ以上に改善し、今後への安心感が強まるようだとユーロ買いの動きも。ユーロドルは1.20台回復に向けた動きも。
英中銀金融政策会合(MPC)
6月24日20:00
☆☆
 今回の英中銀金融政策会合(MPC)は、四半期金融報告の発表などを伴わない通常回にあたっている。金融政策は現状維持が濃厚、総裁会見なども行われない見込みとなっており、波乱要素は少ない。ただ、ここにきて英国では変異株による感染拡大もあり景気回復に陰りが見えている状況。一方で物価上昇は顕著になっており、消費者物価指数はインフレターゲットである前年比2.0%を超えてきている。こうした状況に対して声明などでどのような姿勢が示されるかが注目されるところ。慎重姿勢が強調されるようだと、ポンド売りの動きが強まる可能性。ポンドドルは1.37台半ばがターゲットに。

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