2021年06月28日号

(2021年06月21日~2021年06月25日)

先週の為替相場

ドル買い円売りが強まる展開

 6月21日からの週、ドル円は一時、昨年3月以来の111円台となり、ドル高円安の動きが強まった。

 2023年末までに2回利上げが行われるというFOMCメンバーの予想による影響が続いた。

 一時は緩和政策からの転換見通しのショックで米株安が進み、リスク警戒の動きが広がっていた。パウエル議長が予防的な利上げ実施を否定。動きが落ち着くと、米株は上昇基調に復し、ドル円の支えに。

 リスク選好の動きが広がる中、新興国通貨高円安の方向なども見られ、クロス円での円売りがドル円を支える展開も。

 ドル円は23日の市場で111円台に乗せると、24日の東京午前に直近の最高値となる111円12銭まで上値を伸ばした。その後は調整の動きが広がり、110円台後半を中心とした推移で週末を迎える展開に。

 25日の米PCEデフレータ(5月)は、今後の米金融政策動向への影響から注目され、市場の予想通りの結果だった。しかし、6月に入ってCPIが予想を大きく上回るなど、物価関連では上昇期待がかなり強かった分、PCEも上方向への乖離が期待されていた面があり、発表後は調整が進む場面も見られた。

 その他通貨ではポンドの動きが目立った。24日の英中銀金融政策会合(MPC)を前に、FOMCのような前向き姿勢を示すという楽観論と、緩和姿勢維持という慎重論が交錯。振幅を交えながらポンド高が進む展開で、対ドルで先週初めの1.3780台から1.4000超えまで一時上値を伸ばす場面が見られた。

 注目されたMPCでは、事前の予想通り、政策金利及び量的緩和である債券購入プログラムの最大枠の現状維持が決定。同プログラムについては、ホールデン理事(英中銀チーフエコノミスト)が5月のMPCに続いて最大枠の縮小を主張し、8対1での現状維持となった。市場では5月のMPC後の英物価の上昇などから、ホールデン理事に同調してくるメンバーが出てくるのではとの期待があった分、発表後はポンド売りの動きが広がった。ポンドドルは1.3890前後まで下落。その後いったんは値を戻す場面が見られたが、週末にかけて再び1.38台に値を落とすなど、ややポンド売りの流れに。

 ドル円の上昇にポンドの上昇傾向が加わって先週初めの151円台前半から155円台まで上値を伸ばしていたポンド円はMPC後に153円台後半に値を落とし、その後154円台半ば前後まで回復も、週末にかけて153円台を再び付けるなど、対円でもポンド売りが優勢に。

今週の見通し

 ドル円は111円台での買いには慎重も、下がると買いが出る流れ。市場はFRBのタカ派シフトを警戒し、ドル円の買い材料に。FOMC後、ハト派のブラード・セントルイス連銀総裁が2022年の利上げ開始見通しに言及。タカ派のローゼングレン・ボストン連銀総裁(用語説明1)なども2022年中の利上げ見通しを示した。一方で、パウエル議長をはじめFRBの中心メンバーが慎重姿勢を崩していないことから、上値追いには慎重姿勢。

 そうした中、今週末に発表される米雇用統計(6月)に注目が集まっている。

 今月のFOMCで示されたドットプロットでは18名中7名が2022年中の利上げ開始予想を示した。見通しの中央値は2023年末まで二回であるが、1回目と2回目の利上げにはある程度期間が必要なことを考えると、2023年下半期が始まった頃に利上げが見込まれている。利上げ開始前には量的緩和策が十分に縮小されていることが必要である。前回、リーマンショック後に長く続いたゼロ金利政策からの正常化では、利上げ開始の2015年12月の約2年前である2014年1月にテーパリングが開始された。つまり、前回と同タイミングであれば、現時点でテーパリングが開始されていてもおかしくない。遅くとも今年第4四半期あたりでテーパリングの開始が見込まれる。

 こうした状況から、市場では8月のジャクソンホール会議でテーパリング開始を示唆、9月のFOMCで正式に発表し、11月から開始というスケジュールを期待する動きが広がっている。そのためには今回発表される6月分及び8月初めに発表される7月分の米雇用統計が力強いものになることが必要。

 米雇用統計のうち非農業部門雇用者数は、4月分が予想をはるかに下回り市場を驚かせた。前回5月分も予想を下回る冴えない結果だった。

 新型コロナワクチン接種の進展や、感染者数減少に伴う行動制限の緩和などを受けて雇用の回復が期待されるレジャー&ホスピタリティ部門(用語説明2)は、前回29.2万人増とまずまずの伸びを示した。ただ、同部門の雇用者数はパンデミック前から依然として250万人以上低い水準にとどまっており、期待ほど雇用が増えていない面も。

 また、緩和を受けて雇用増が期待された小売部門に関しては、0.58万人減と2か月連続での雇用減となった。

 レジャー&ホスピタリティ部門や小売部門は接客による感染リスクの高い職種である。求人数自体は回復しているが、人が集まりにくいとの報道も見られる。

 今回はこうした部門の数字が力強いものとなるのかが焦点に。行動制限の緩和とワクチン接種がさらに進んで、人の流れが回復してきていることは雇用の押し上げ要因に。また、新型コロナ対策での失業給付の拡充措置などが順次終了すると言っており、低賃金労働に人が戻りつつあることも考えられる。

 現在の予想は非農業部門雇用者数が70万人増と、前回の55.9万人増から伸びが強まると見込まれている。失業率は0.1%ポイント低下して5.7%が見込まれている。

 事前予想通りもしくはそれ以上に強めの数字が出てくると、FRBの早期テーパリング期待を押し上げる形でドル買いが見込まれるところ。

用語の解説

ローゼングレン総裁 エリック・ローゼングレン(Eric Rosengren)ボストン連銀総裁。メーン州にあるコルビー大学を卒業後、ウィスコンシン大学マディソン校で経済学の修士・博士号を取得。卒業後調査部門アナリストとしてボストン連銀に入行。2007年7月に同連銀総裁に就任。カンザスシティ連銀のジョージ総裁やクリーブランド連銀のメスター総裁などと並んで、FOMCの中でも超タカ派(物価上昇を警戒して金融引き締めに積極的な姿勢)のメンバーとして知られている。
レジャー&ホスピタリティ部門 雇用統計における部門ごとの集計において、劇場・球場など観戦施設、美術館・史跡などの観光施設・ゲームセンター・カジノなどの娯楽施設からなるレジャー部門、ホテル・モーテルなど宿泊施設からなるアコモデーション部門、レストラン・バーなどの飲食部門からなる3部門を合わせた部門。接客対応が多いため、新型コロナの影響を受けやすい。パンデミック前の就労者数は約1700万人で米国の民間雇用の約13%を占めていた。製造業全体の約1.3倍、小売業の約1.1倍の人が働いており、教育及びヘルスケア部門に次ぐ大きな部門となっている。

今週の注目指標

OPECプラス
7月1日
☆☆☆
 OPECとロシアなど非OPEC主要産油国によるOPECプラスが1日に会合を開く。8月以降の協調減産体制が注目ポイントに。原油価格の上昇と需要拡大見通しなどを受けて、小幅な供給拡大が決められるとの思惑が広がっている。予想程度の拡大にとどまると、2018年10月以来の高値圏を付けるNY原油先物の上昇傾向が継続し、産油国であるカナダドルや、資源国通貨である豪ドルの買いにつながる可能性が高い。豪ドル円は85円前後のポイントを目指す可能性。
米ISM製造業景気指数(6月)
7月1日23:00
☆☆☆ 
 前回5月のISM製造業は61.2とほぼ予想通りながら好結果に。新規受注が67とかなり強い結果となり、全体を支える形となった。また、入荷遅延が78.8と1974年以来の高水準となり、原材料不足や労働力確保に企業が直面している状況も示された。一方で雇用指数は50.9とかなり低い水準となった。今回は61.0と前回並みの水準が見込まれている。予想通りもしくはそれ以上の好結果が出てくると、米景気回復への信頼感につながりそう。ただ、前回かなり弱く出た雇用指数が、今回も弱めに出て、前回を下回り好悪判断の境となる50を下回るようだと、全体としては好結果となっても、警戒感が昼狩りドル売りとなる可能性も。ドル円は110円台前半へ値を落とす可能性。
米雇用統計(6月)
7月2日21:30
☆☆☆
 米雇用統計、非農業部門雇用者数(NFP)は2か月連続で予想を下回る弱めの数字となった。もっとも、サプライズな弱さとなった前々回とは違い、前回は予想値からのブレの範疇という見方も。新型コロナワクチン接種の進展もあり、全米で行動制限の緩和が進む中、今回は前月比70万人増と前回以上の雇用増が見込まれている。予想もしくはそれ以上の雇用の伸びが示されると、8月のジャクソンホール会議でのテーパリング開始示唆という市場の期待が強まり、ドル買いにつながる可能性が高い。ただ、パンデミックからの回復期は雇用の伸びが読みにくいところも。予想ほど伸びない可能性にも注意しておきたい。期待感がかなり強い分、予想を下回るとドル売りが一気に進む可能性も。テーパリング示唆が9月以降となり、実際の開始が来年以降になるという見方が広がるようだと、ドル売りが一気に進む可能性も。ドル円は109円台へ値を落とす動きも。

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