2021年07月05日号

(2021年06月28日~2021年07月02日)

先週の為替相場

ドル高進行も、米雇用統計後に調整入る

 6月28日からの週、ドル円は注目の6月の米雇用統計を前に一時111円台後半を付ける動きとなった。ユーロドルが1.18台前半、ポンドドルが1.37台半ばを付けるなど、ドルの全面高の動きが広がった。

 2日の米雇用統計発表を前に、期待感がドルを押し上げる形になった。月替わりを迎えて実需のドル買いが入ったことも、週央のドル高を誘う形となった。

 ドル円は110円台後半でスタートした後、ポンド買いドル売りなどをきっかけに一時110円台半ばを付けた。不倫報道で辞任したハンコック保健相(用語説明1)の後任となったジャビド新保健相(前財務相)が行動制限の早期解除に前向きな姿勢を示し、ポンド買いドル売りにつながった。

 ドルは110円台半ば割れを何度か試したあと、下値の堅さもあって買いが強まる展開となった。月末に絡んだ実需の買いもあって111円台を回復し、米中古住宅販売成約指数(用語説明2)が強めに出たこともドル買いを誘う格好となった。

 その後も米雇用統計を前にドル高の流れが続き、ドル円は111円台後半を付けた。新規就業者数の事前予想値がじりじりと上方修正されるなど、市場の期待感が感じられる展開となった。もっとも111円70銭手前の売りが上値を抑え、若干の調整が入って111円40銭前後で米雇用統計の発表を迎えた。

 米雇用統計は非農業部門雇用者数が85万人増と、事前予想の前月比72万人増を大きく上回った。前回発表値の上方修正もあり、かなり強い数字という印象だった。ドル円は瞬間的に111円台半ばを超える動きを見せた。しかし、失業率が予想外に悪化したことや、パウエル議長をはじめとするFRB内の慎重派に早期テーパリングへ舵を切らせるほど強い内容ではないとの思惑から上昇一服後、ドル売りに転じた。

 週明け5日の市場が米独立記念日の振替休日でNY市場が休場ということもあり、NY市場午後にかけてポジション調整のドル売りが広がり、一時111円割れとなった。

 ドル高の流れの中で雇用統計前に1.18台前半へ値を落としていたユーロドルは発表直後のドル買いに1.1800台まで値を落とす場面が見られた。しかし、ドル円と同様にドル買い一服後は調整が入り、1.1870台を回復する動きを見せている。

今週の見通し

 注目された米雇用統計は非農業部門雇用者数が強めに出たがドル買いは盛り上がらず、逆にドル売りを誘う格好となった。

 市場は8月のジャクソンホール会議でのテーパリング開始示唆、9月のFOMCでの開始正式決定という見通しを崩していないが、ペースが少し早すぎるのではとの見通しも広がりつつある。

 地区連銀総裁を中心にテーパリングの早期開始や利上げの前倒し見通しなど、金融引き締めに前向きな姿勢を示している。しかし、パウエル議長が慎重姿勢を崩していないことから、市場はやや警戒感を抱いている。FOMCは合議制での決定が建前であるが、議長提案が否決されたことはFOMCの歴史上一度もない。それほどの影響力を持つパウエル議長の慎重姿勢がFRBのタカ派シフトを期待した市場の動きに冷や水を浴びせた。

 もっとも中長期的な流れはドル買いという見通しは続いており、雇用統計後のドル売りはあくまで調整という意識が強い。目先111円70銭手前が重くなり、いったん値を落とした形であるが、再び上値をトライするのではとの見方が根強い。

 110円台半ばから111円台半ばにかけてのレンジ取引を中心に、下値の堅さを確認した後は、再び上を試す可能性がある。

 ユーロドルやポンドドルの頭が重く、欧州通貨売りドル買いの流れが継続していることも、対円でドルを支える材料となっている。

 目先のターゲットは昨年新型コロナの混乱による大きな振幅の中で付けた112円20銭台。この水準を明確に抜けると、2018年のドル高進行で上値を抑えた114円台後半がターゲットになる。

用語の解説

ハンコック保健相辞任 英国で新型コロナ対応の責任者であったマット・ハンコック保健相が、保健省の自身のオフィス内で、非常勤理事の女性とキスをしている写真が6月25日付の英大衆紙サンに掲載された。保健省内に設置された監視カメラの映像とみられる。ともに既婚者であり、与野党から辞任を求める声が上がる中、26日に同氏は他人との社会的な距離(ソーシャルディスタンス)を求める政府のガイドラインに違反したとして辞任した。
中古住宅販売成約指数 中古住宅販売成約指数(The Pending Home Sales Index : PHS)は、全米不動産協会が発表する米国の住宅指標の一つ。中古住宅仮契約指数や中古住宅販売保留指数とも呼ばれる。中古住宅の販売で売買契約は済んでいるが、最終引き渡しが終わっていない物件を集計したもの。米国の中古住宅販売では売買契約から引き渡しまでに1-2か月のタイムラグがあることが一般的。中古住宅販売件数は最終引き渡しが完了した時点で集計されるため、同指標の先行指標となる。

今週の注目指標

豪中銀政策金利
7月6日13:30
☆☆☆
 政策金利の現状維持が見込まれる6日の豪中銀金融政策理事会では、9月に期限を迎える現行の債券購入プログラムについて最終決定が下される予定。今回は豪中銀理事会としては異例となる理事会後の総裁会見が予定されている。前回会見が実施されたのは昨年11月の理事会で、この時は政策金利を現行の0.10%へ引き下げ、債券購入プログラムの拡大が発表された。今年2月の理事会で債券購入プログラムを当初の4月から9月まで延期することを決定した際、会見などは行われなかった。カナダなどがテーパリングを開始する中で、同じ資源国である豪中銀にも早期テーパリングへの期待が強まっている。ただ、ここにきて変異株の感染拡大などで不透明感を増していることもあり、地元金融機関でも見方が分かれている。明確な債券購入の減額を示すと豪ドル買いが、慎重姿勢が印象付けられると豪ドル売りがそれぞれ予想される。買いが強まった場合、対ドルで0.7650がターゲット。
米ISM非製造業景気指数(6月)
7月6日23:00
☆☆☆ 
 1日に発表された米ISM製造業景気指数は、前回からやや減速したが60を超える堅調な数字となった。仕入れ価格指数が92.1と約42年ぶりの高水準となり、全体を支えた。一方で雇用指数が49.9と好悪判断の境となる50を割り込み、雇用市場の厳しさを印象付けた。求人自体はある程度増えているとみられるが、熟練労働者の確保の難しさが指摘されている。非製造業の予想は63.5と前回の64.0からこちらも若干の鈍化見込みとなっているが、水準はかなり高め。製造業同様に雇用が厳しい数字を示すと、統計全体が強めでもドル売りが入る可能性がある。ドル円は110円台半ばを試す可能性もある。
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
7月8日03:00
☆☆☆
 6月15、16日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表される。この回のFOMCでは政策金利・量的緩和の現状維持が示され、声明の変更も小規模だった。ただ、3か月に一度FOMCの結果とともに発表されるFOMCメンバーによる経済見通し(SEP)では、今年の経済成長見通しと物価見通しが上方修正された。参加メンバーによる政策金利見通しで2023年末までに2回の利上げが中央値となるなど、FRBメンバーのタカ派シフトが目立った。市場の早期テーパリング期待を支えたこうした見通しの変化が議論の中でどのように示されていたのかがポイントとなる。議事要旨でもタカ派シフトが印象付けられるとドル買いが強まり、ドル円は112円台に向けた動きも予想される。

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